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里音の不思議な地下  作者: はる
2/23

地下での出会い

 その日、里音はいつもと同じ生活をしていた。お腹が減れば食事をし、頭が痒ければ風呂に入り、トイレが我慢できなければトイレに行って、基本的に布団でだらけていた。


 そんな里音だから、筋肉は落ちて体も痩せてしまい、肌も髪もくすんでいる。元の素材がそこそこいいだけに、無精している人で済んでいるが、不潔きわまりない。


 ふと寂しさを思い出して、両親の部屋に行く。


 いくら仲が良かったって一緒に末期癌にならなくてもいいじゃないか。


 考えながら、いつも通りにドアを開けると、目の前、いや、部屋全体が黒かった。唯一の光源は目の前の床にある階段だけだろうか。


 何故、両親の部屋が無い?里音は訳がわからなかった。

 一度ドアを閉めて、再度開けてみるも、部屋の中は変わらなかった。里音は苛立ちを感じていた。両親の部屋が無い=思い出の品が無いからだ。


 黒い空間を叩こうにも手に当たる物は無く、虚しく空間を切るだけだった。


 この階段の下に元凶がある気がしてならなかった。


 里音は苛立ちのまま下に下りて行く。

 下りて行くにつれて、光で明るくなってきた。

 自分は今、空中にある階段を下りている。なんだか苛立ちより、未知の体験をしていることが不思議だった。


 階段を下りると部屋があり、何畳くらいだろう。10畳以上は有りそうだ。ここで暮らせるくらいの広さがある。何故か部屋の一角から水が流れて床に吸い込まれて行く。


 だが、里音の興味は続くドアにあった。


 ゆっくりとドアを押すと開いた。


 ドアの向こうは、ファンタジーな木々や植物に溢れていた。


 なんだ、これは。ダンジョンのような空間が出来たのか?それにしては、可愛らしすぎる。女性が好きそうな空間だ。


 一歩踏み出す。柔らかい草に足を踏みつけた。空気が良い。まるで本当の自然の中にいるようだ。

 もう少しだけ前に出る。光る木に宝石のような植物。ここは不思議な場所だ。


 何やらふよふよと集まって来た。初めは虫かと思ったが、昔、流行ったスーパーボールの大きさの光るマリモのようだ。

 何か喋っている。不思議な生き物だな。


「@Ptn&ajtmwomk?」

「'(urajdmjtgtdjb&w」

「jfd__ajgjppvjd」


「言っている事が分からないよ。何を伝えたいんだ?」


 なんだか、光るマリモが四方八方から沢山集まって来た。これはヤバいんじゃないかと、部屋に戻ろうとしても、光るマリモに身体に無数にひっつかれて身動きが取れない。冷や汗が出て来た。


 何匹かの光るマリモが、2匹で協力して飴玉みたいな宝石みたいな何かを持って来た。僕の口に入れようとしているみたいだ。


 なにを食べさせられるか分からん。口は開けないぞと思っていると、普通の光るマリモが2匹ほっぺにひっついた。自然と口が開く。


 焦っているうちに口の中に何個か放り込まれた。吐き出そうとしても、口に入ったとたん溶けて甘味だけ残して無くなっていた。


 何だ?何を食べさせられた?あ〜うるさい!言葉が分からないってば!


 ピコン。


「これできこえる?」

「きこえるかなぁ」

「きこえるといいな」

「ねぇきこえる?」

「なにかはなしてよー」

「ねえねえ」

「きこえるー?」


「あー!うるさい!聞こえてるよ!」


 無数に声を360度掛けられて、頭がパンクしそうだ。光るマリモは里音の首から下と頭に無数に張り付いている。もう、どうにでもなれだ。


「きこえたって」

「うんきこえた」

「きこえた」

「でもうるさいって」

「うるさいー?」

「きこえた」

「つたえなきゃ」

「そうだねー」

「つたえなきゃ」


「「「「「「すきー」」」」」」


「すき」

「すき」

「すきだよ」

「みんなすき」

「すきすき」

「すきー」

「すきなのー」

「すき」

「すきー」


「あー!うるさい!好きなのは分かったよ!身体から離れてくれよ」


「わかったって」

「うけいれてくれた?」

「わかったっていった」

「でもはなれてって」

「いやー」

「うけいれてくれたら」

「うんうけいれてくれた」

「わたしたちのだっぴ」

「うんできるー」

「いまするー」

「みんなでするー」

「さんせー」



 いきなり、光るマリモ達が一斉に震えた。里音はビクッとする。光も強くなったようだし、温かい。身体に何か温かいものが入って、出ていく。


 目の前の光るマリモがぱかっと開き、中から妖精?が出て来た。

 里音の身体に付いていたマリモ達もパカパカ開いて行く。無数の妖精に囲まれた。



「ありがとうー」

「ありがとう」

「いとしいひと」

「ありがとう」

「おかあさんにほうこくしないと」

「ほうこくー」

「ありがとう」

「ありがとう」

「これおれいー」

「おれいー」

「わたしもー」

「わたしはついていくー」

「えーずるいー」

「わたしもー」

「じゃあばいばい」

「またね」



 3匹だけ残して、後の妖精は無数の丸いガラス玉みたいな物と自分達の抜け殻をくれて去って行った。


 残った妖精は髪が赤・白・黄色とわかりやすい色をしていた。


「なまえつけてー」

「なまえー」

「ほしいー」


「お前達はなんなんだ?今、何をした?」


「ぴくしー」

「ちがうよせーれー」

「ちがうよよーせー」

「なにしたー?」

「だっぴしたー」

「そう、だっぴー」


「お前達が子供だってことはわかったよ」


「そうこどもー」

「いませいちょうきー」

「あなたといっしょー」


「僕と一緒?僕は大人だぞ」


「まだこどもー」

「ねぇなまえー」

「なまえほしー」


「僕についてくるのか?」


「ついていくー」

「なまえー」

「なまえー!」


 名前か、赤・白・黄色じゃいかんだろうな。いや、それでいく!


「髪が赤いのはレッドだ。白いのはホワイト。黄色いのはイエローだ」


「わたしれっどー」

「わたしほわいとー」

「わたしはいえろー」

「「「なまえー」」」


 妖精?がぴかりと輝いた。名付けに意味があったのか?適当じゃまずかったか?


 光ったあとには親指サイズの妖精達がいた。髪と同じ色のミニワンピの服を着ている。かわいい。


「よろしくー」

「いっしょにくらす」

「いっしょー」


 よくわからないが、同居人が出来たようだ。



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