国と契約
僕は警察署で1日保護されてから家に帰った。
ほっぺや歯の治療は自分でちゃんとしたよ。
天宮協会長が逮捕されたのが広まって、泣き寝入りしていた被害者達が警察署に詰めかけているらしい。僕だけじゃなかったんだね。
それで、天宮協会長の罪が明らかになりはじめて、刑務所行きは間違いないとか。
探索者支援協会も天宮に協会長を辞めさせて、関係ないのをアピールしているらしい。逆に怪しいよね。
歴史で習ったけど、昔は保釈金を払えば実刑を受けるまで釈放されたらしいけど、今の世の中はお金を持っている人でも悪人なら、警察に身柄を拘束される。
天宮の部下達も逮捕されて事情聴取を受けているらしい。
これで安心して夜道も歩けるってものだ。僕あまり夜道を歩かないけど。
天宮が逮捕されてから1ヶ月。家に訪ねて来た人達がいた。
バリアは解いてないから、悪い人達では無いと思う。
国の調査官らしい。5人で来られて名刺も渡されたけど僕の家は普通の家だ。リビングに座ったら5人でいっぱいいっぱいだ。
もちろんお茶は出した。
賢者の石に何で来たのか聞くと、妖精素材の情報が国に流出したとの話だ。
一応、スマホで音声を録音しておいた。
「大勢で詰めかけてすまないね。高梨君」
「いいえ、あの、ご用件は?」
「妖精の素材の話を耳にしてね、どうにか融通してくれないかとお願いに来たんだ」
『言葉に嘘はありません』
「妖精素材はお渡し出来ません」
「何故だい?対価も払うよ?」
「それほど数は無いですし、僕が欲に溺れると二度と手に入りません」
「そう!何処から入手してるんだい?君は一般的な庶民だろう?そこが不思議なんだよね」
「黙秘させていただきます」
「アキ総合病院の奇跡の回復を知っているかい?医者が匙をなげた患者が次々と病気や怪我が治っているようだ。君のせいでは無いかな?」
「……」
「何も言わないか。私達が信用出来ないかね?」
「悪い人では無いのはわかりますが、信用は出来ません」
「対価、お金に興味も無いかい?どうすればいいのかね」
「もう、妖精素材について探らないでください。そっとしておいてください」
「そうはいかないのだよ。君に目を付けているのは私達だけじゃ無い。もっと達の悪い奴等もいる。君を守る為にも引き下がることは出来ないのだよ」
『言葉に嘘はありません』
「どう言うことですか?」
「妖精素材が悪用される可能性がある。君だけでは無く親戚なども注意が必要だ。人質に取られるかもしれない。君も隔離しておきたいくらいだ。いつ誘拐されるかわからないからね。それほど切羽詰まってると考えてもらえると嬉しい」
「僕の情報はどうなってるんですか?」
「もう、漏れに漏れてると考えてくれ。警察が情け無いが、天宮の証言や君が録音した音声、書類から情報が漏れている。裏社会の人間にも話が行っているはずだ。君と妖精素材を保護したい。これは本当の話だよ」
『嘘はありません』
「僕はどうしたらいいですか?」
「協力的になってくれたかな?君には私達の用意する部屋に移ってもらいたい。それと妖精素材の入手先を教えてもらえるかな?」
「僕は家を離れられません」
「それはどう言う意味だい?ご両親との思い出がつまっているからかい?妖精素材の入手先の話かい?」
(賢者の石、信用できる人はいる?)
『この部屋にいる人物5人は信用できます』
(その言葉、信じるよ)
「妖精素材の入手の話です」
「この家から入手出来ると?」
「そうです」
「いきなり協力的になったね。いや、我々としては嬉しいが。ダンジョンみたいなものが家にあるのかい?」
「そう考えてもらえるといいかもしれません」
「私達も入れるかい?」
「いいえ、多分ですが僕と妖精達しか入れないでしょう」
「妖精がいるのかい!?何処にいるんだい?」
何故か、大杉さんが興奮している。あ、大杉さんは僕と話をしてる人ね。
「僕の頭の上と両肩にいます」
「見えないなー?分からないなぁ。高梨君、羨ましいね。どんな姿だい?」
「有名なアニメ映画に出て来る妖精とそっくりです。大きさは親指ほどですが」
「諦めるしかないかぁ。妖精素材が取れる所に案内してもらってもいいかい?」
「分かりました」
僕は両親の部屋に5人を案内した。無駄だと思うけど。
「その部屋のドアを開けてください」
「この部屋かね。失礼するよ。普通の部屋じゃないか。どこに入り口があるんだい?」
「僕が1人の時にドアを開ければ、別空間になり地下に続く階段が現れて妖精の森に辿りつけます」
「それじゃあ、高梨君しか入れないって事かい?」
「そうなりますね。でもいつか僕も入れなくなると思います」
「それはどうしてだい?」
「今の僕だから入れるそうです。僕が欲に溺れたら入る資格を失うようです」
「う〜ん、かなり複雑な事情があるのは分かったよ。君に全面的に頼るしか無い事もね。その上で君と契約したい。妖精素材を融通してもらう為に。出来るだけ君の願いに添った契約にさせてもらうよ?」
「僕の関係者が無事に生活出来るように約束してくれれば、いいですよ」
「よし!では話を詰めようじゃないか!」
リビングに戻り、僕の希望と契約内容を詰めていく。
僕の望みは、僕の関係者を守ること。
出来るだけ低い値段で重病人や怪我人を治すこと。
僕を犯罪から守ること。
僕の秘密を守ること。
転売はしないこと。
この5つだ。大杉さんはう〜んと唸りながらも、双方の利益になるように考えてくれる。
安い値段での治療がネックになっているようだ。僕や親類縁者、薬を守る人達の給料も払わないといけないし、それを維持していかないと駄目だ。
僕の支払いは安くて良いと言っても「生産者が儲けにならなければ意味が無い」と言われてしまった。
結局、万病薬は1粒30万円。劣化エリクサーも30万円で取引することになった。
そこから、薬に関わる人の給料や維持費を足して、売値は100万になると言われた。高い!と思ったが破格の安さだそうだ。心臓移植や臓器移植をしようと思えば、この値段ではすまないらしい。
実際に本契約する時にレッドが頭から降りてきて、契約書に触ると一瞬、契約書が燃え上がった。
僕もびっくりしたけど、大杉さん達はもっと驚いたらしい。「妖精のせいです」と言えば「妖精とも契約したんじゃ、必ず守らないとな」と苦笑していた。
契約書は実際には燃えなかったよ。レッド驚かすなよ〜。つつくと逃げて行った。
大杉さん達の帰りには、実際の薬を3つずつ提供して効力を試してもらうようにしてもらった。
それからは月に一度、大杉さんか他4名が取りに来るから、他の人が来ても渡さないように言われた。
顔と名前が一致するように、よく覚えておいたよ。
代金の振込は口座に振り込んでもらうようにした。
僕、欲に呑まれそう。助けて!レッド、ホワイト、イエロー!




