第1話《殺害現場》
――S県N市御影町。
本日未明、一人の男が殺された。
殺害現場は河川敷。
現場に遺体は、残っていない。
跡形もなく何らかの魔術で、消滅させられたことが魔力の残滓で解っている。
同様の手口で、今月だけでも六件ほど確認している。
俺は警察ではないが、この事件を追っていた。
正義感からでも、被害者と縁があるわけでもない。
完全に個人的な理由からである。
「パパ上。犯人はまちがいなく、女子でござる!」
現場の匂いを感知して、ハウゾウが誇らしげに言った。
彼女はハスキーの子犬だが、俺の魔力を分け与えているので知性と言葉を手に入れた。
「まだ、若いんに!」
真っ白な仔猫のハウタも、同じく俺の眷族となっている。
六件の殺害現場でも、同じことを言っていた。
殺人鬼の少女に、非常に興味が沸いていた。
いかなる理由で、殺しているのだろうか。
快楽や怨恨なんて、チープな理由ではないのは確かだ。
それは残留思念での『記憶』からでも、窺えた。
思念を『記憶』として、視ることができた。
犯人の少女は、無表情であった。
なんの前触れもなく、被害者に魔術を放つ少女。どの殺害現場でも、一撃で仕留めている。被害者の身体は一瞬にして、蒸発しているので証拠も残らない。
ゆえに警察はおろか、だれにも気付かれていないのだ。
非常に興味深い案件である。
かならず見つけだして、少女と接触してみせる。
俺をつき動かしているのは、純粋な『好奇心』からであった。