春一番
”マナへ
色々悩んだんだけど……。
何を書けばいいかわからないね。
動画にしようかと思ったけど、なんだか恥ずかしくて辞めた。
僕はあまりにも自分勝手だね。
君は、また屋上で涙を流すのかな。
屋上で泣いていた女子高生は、思ったより大人しくて
純粋で、照れ屋だったよ。
こんな僕の側にいてくれる優しい女の子だった。
サヨナラする為に、なんて言ったくせに未練がましいかもしれないね。
本当はね、一目惚れだったんだ。
病気を利用して君と付き合った僕は卑怯だね。
でも、後悔はしてないよ。
約束通り、僕は君の抱えてるモノを持って行けたかな?
君があの日のみ込んだ言葉に僕は、気づかないフリをしたんだ。
本当はね、僕も君と一緒に居たかった。
色々なモノを一緒に見て、歳を取れたら良かった。
ねぇ、マナ生まれ変わったら僕はまた君に会えるかな?
君が保育士になって、僕がそこの子供だったら面白いよね。
屋上で飛び降りようなんて考えないでね。
覚えておいてねマナ。
君は誰よりも綺麗だ。
僕にとっては、君が未来なんだよ。
大好きだよ、初めて君を見た日から。
じゃあねマナ。
笑って見送ってよ。
サヨナラだ。
一回も直接好きって言わなかったクセに……。
マナ「ズルいよ…ハル。」
初めて愛したハルは、あっさりと私を置いて行った。
キスとメールを残し、私の前から消えてしまったのだ。
私の中にあったドロドロした部分は、全てハルとの思い出だけになった。
真面目に勉強して、大学へ進んだ。
ハルの命日には、お墓参りに行っている。
命日に会うハルのお母さんは優しくて、いっつもジュースを買ってくれる。
私は、保育士になった。
ハルの生まれ変わりが子供たちかもしれないと思うと、
どの子もより一層可愛くて愛しく思える。
大事な人を失うとこの世の終わりが来たように感じる。
でも、私の人生は動き続け放っておいてはくれない。
それが今は、残酷で愛しく感じる。
短い出会いが私の人生を全てを変えた。
春一番の風に包まれると、春に生まれたあの人を思い出す。
マナ「…サヨナラ、ハル。」