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ごめんね


春一「聞いて欲しいの?」


マナ「…わからない。」


春一「そっか。そうだなぁ、マナが話したことは全部僕がお墓に持って行くのはどう?」


マナ「どういう意味?」


春一「マナが抱えてるモノを全部僕が、サヨナラする時に持っていてあげる。」


マナ「フフッ、そんなの無理だよ。」


春一「でも、気は楽になるかもよ?」


マナ「……。」


春一「まぁ、無理に話して欲しいわけじゃないよ。」


ハルの手がいつものように頭を撫でる。


マナ「…私のお母さんはね……。」


私は、母親が壊れてしまったこと。

その母親のように自分も荒れた生活を送っていたことを話した。


ハルは、吞気に”それは、大変だったね。”と笑った。


もっと同情されるのかと思っていた。

あまりにも単純な言葉に、大したことではないのかもしれないと思える。


マナ「ハルってやっぱり変だよ。」


春一「そうかな。変だったら嫌?」


マナ「ううん。ハルが好き。」


珍しくハルの顔が真っ赤になった。


マナ「えっ……もしかして照れてるの?」


春一「うるさいよ。」


マナ「フフッ、ねぇ頭撫でて。」


春一「……いいよ。」


話したらスッキリした。

でも、ハルを好きだと自覚したら急にサヨナラが怖くなった。


マナ「ハル……。」


”死なないで”たった一言が言えなかった。


春一「どうしたの?」


マナ「ううん。また明日ね!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



秋彦「おい、昨日は悪かったな。」


春一「あぁ、マナの友達だね。どうしたの?」


秋彦「どういうつもりなんだ?」


春一「何が?」


秋彦「お前、その……体治るのかよ?」


春一「フフッ、君に関係ないだろ?」


秋彦「マナが傷つくとは思わないのか?」


春一「だから、君に関係ないよね?」


秋彦「っお前、バカにしてんのか?」


春一「いいや。それにマナは僕が治るなんて思ってない。」


秋彦「じゃあ、わかってて一緒にいるのか?」


春一「そうだよ。――キミはマナのことが好きなんだね。」


秋彦「…だからなんだよ。」


春一「なんで告白しなかったの?――怖じ気づいていたくせに、悔しくて僕に会いに来たの?」


秋彦「っお前に関係ないだろ!」


春一「そうだね。――それなら、僕たちの関係も君に関係ないだろ?」


秋彦「っ……。」


春一「そもそも、すぐに死ぬ僕と張り合っても意味なんかないだろ。」


秋彦「お前……。なんなんだよ。」


春一は、窓の外を見ている


秋彦「俺は、マナに告白するからな!――良いんだな?」


春一「そう。頑張ってね。」




次の日、ハルには会えなかった。

その次の日も……。

看護師さんに聞いても困ったような顔をする。


ハルがいなくても休みの日は、子供たちに会いに行く。

本当に、保育士を目指してみようかな。


屋上で景色を眺めていた。

ハルと出会う前に戻ってしまったみたいだ。


春一「好きだね、その歌。」


マナ「ハルッ!大丈夫なの?」


春一「フフッ、心配してたの?」


マナ「当たり前じゃない!」


春一「そっか。ごめんね。」


マナ「部屋に早く戻らないと……。」


春一「もう少し、ここに居たい。」


マナ「じゃあ、私の上着着て!」


春一「フフッ、こういうのは逆なんじゃないの?」


マナ「私は、風邪とかひかないから大丈夫!」


春一「景色が綺麗だね。」


ハルが私の肩に頭を乗せる。

景色が綺麗だと言いながら、ハルの目は閉じている。


濃くなっていく別れの気配……。

思わず、涙が出そうになる。


マナ「…うん。」


春一「ねぇ、前に言いかけた言葉を言ってよ。」


マナ「えっ?」


春一「言いかけて辞めただろう?」


マナ「っ。お願い…死なないで……。」


ハルは、微笑んで私に初めてのキスをした。

自然と涙が流れ、何故かとても悲しい気持ちになった。


春一「思ってたより、ドキドキするんだね。なんで泣くの?」


マナ「わからない。」


春一「フフッ、ごめんね。」


何故かいたたまれなくなって、立ち上がった。


マナ「ねぇ、ハル本当に私に保育士ができると思う?」


春一「あぁ、マナなら大丈夫だよ。キミは、誰よりも優しい。」


マナ「優しくないかないけど……。目指してみようかな。」


春一「なら、サボらずに学校へ行かないとね。」


マナ「あの日しか、サボってないわ。」


春一「マナ……。」


ドサッ


マナ「ハル!?ハルッ誰か!誰か……。」


そこからのことはあまり良く覚えていない……。


白衣を着た人がたくさん来て、ハルを運んで行った。




次の日、ハルの病室へ行くと前に泣いていた女性がいた。


女性「あら、あなたこの前声をかけてくれた子ね。」


マナ「…はい。あの……。」


女性「もしかして、あなたがマナさんかしら?」


マナ「はい。」


女性「そう。じゃあ、コレはあなたに渡さなくちゃ。」


スマートフォン?


マナ「えっ?」


女性「手紙に書いてあったの”マナに渡して”って。」


マナ「でも、こんな……。」


女性「いいのよ。負担でなかったらもらってあげてちょうだい。」


マナ「……ありがとうございます。」



屋上へ行く。

ハルのスマートフォンの画面には、私が居眠りしていた時の写真が写し出されていた。


マナ「スマホ持ってたのに、何で言ってくれなかったの……。」


画像フォルダには、私の写真や子供たちの姿が写っていた。


動画を開くと、そこにはハルが声をかける前の私が写っていた。

屋上で、泣いたのを見たことがあったんだ。


マナ「フフッ、ストーカーかよ。」


動画のメッセージが残っているかと期待したけど……。


マナ「ないか……。」


メールの画面に下書きがいくつかあった。


マナ「ハル、見てもいいよね。」




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