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出会い


毎年、私の間を通り抜ける春一番。


私の初恋は、甘酸っぱく切ないというような生易しいモノではなかった。


心に深く刻み込まれたソレは、私の人生を変えてしまうほどだった。


出会いは唐突にやってきた。


いつもと変わらない日常。

私の日課は、母親の病院へ行くことだった。


高校生になり、自分も母親と同じ女だということを思い知らされる。


母は、愛されたいが故におかしくなってしまったのだ。

誰かに縋ることでしか、立っていられない愚かな母親を軽蔑していた。


でも、実際その母親を見て育った私は、彼女と同じ道を歩みつつある。


ピロン


C『今日彼女来ないんだけど、家来る?』


        『また、後で連絡する』マナ



キーンコーンカーンコーン


秋彦「マナ、一緒に帰ろうぜ。」


マナ「病院行くからいい」


クラスメイト「ハハッ、また秋彦フラれてるじゃん。」

「あの子、病院通ってるんでしょ?」


「何かヤバイモンでもうつされたんじゃないの~?」


秋彦「やめろよな!」


クラスメイト「でも、実際そう思ってるから秋彦も手を出さないんでしょ?」


秋彦「そういうわけじゃ……。」


「まぁいいじゃん!カラオケでも行こうぜ~」



大きい声で話してるから、全部聞こえてるけどどうでもいい。


病院へ会いに行っても、実際母親は私をわかっていないことの方が多い。

一緒にいても、母親を捨てた男を思い出しいきなり暴れ出すこともある。


バシッ

母親「あんたさえ、あんたさえいなきゃ……。」


看護師「暴れないでください。そっち抑えて。」

「はい。」


看護師「マナちゃん、腫れるといけないから手当しようか?」


マナ「大丈夫です。ありがとうございます。」


母親の病室に行った後、私は屋上へ行く。

何度もここから、飛び降りることができればと思った。



「ねぇ、顔が腫れてるよ?大丈夫?」


振り返ると、そこには私よりも細く押せば折れてしまいそうな男の人がいた。

同年代くらいだろうか。


マナ「どっからどうみても、アンタの方が大丈夫じゃないでしょ。」


「ハハッ、まぁそうかもしれないけど…。僕は泣いたりしてないから。」


マナ「私だって泣いてない。」


「いつもここでアメイジンググレイスを口ずさんでいるのはキミ?」


マナ「…違う。」


「派手なわりにウソをつくのが下手だね。おいで、冷やそう。」


振り払えないわけじゃなかった。

けど、私を掴む手があまりに熱くて驚いた。


病室で待っていると、氷を持ってやってきた。


「はい、どうぞ。」


マナ「…ありがと。」


「フフッ、思ったよりも素直なんだね。」


なんだか恥ずかしくなり、目をそらすと名前と年齢が書いてあった。

19歳なんだ。2歳上か……。


マナ「…春一?」


春一「あぁ、そうだよ。春一番が吹いた日に生まれたんだって。」


マナ「そうなんだ。」


春一「痛そうだね。」


春一が私のほっぺたに触った。


春一「避けないんだね。」


笑いかけられて恥ずかしくなって避けた。


マナ「……。」


ピロン


C『どうすんの~?』



マナ「私帰るね。」


春一「そう、またおいでよ。」



Cの所へ行くことにした。


C「遅かったじゃんマナちゃん。もう来てくれないかと思ったよ。」


C「相変わらず無口だね。ハハッ、その顔どうしたの?」


マナ「別に。」


C「まぁ、マナちゃん元が綺麗だから気にならないけどね。」



同じ男に触られてもこんなに違うんだ……。


マナ「やっぱり帰る。」


C「えっいやそれはないでしょ。」


マナ「離してっ」


C「なんだよ、急に何?純情ぶってんの?」


ピーンポーン

ドンドンドン


「たける!あんた女連れ込んでるでしょ!開けなさいよ!」


C「やっべ。ほらマナちゃん靴持ってベランダから出て。また連絡するから。」



あの人たけるって名前だったんだ。

もう別にどうだっていいけど。


スマホ画面



『ブロックしますか?』


『はい』



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