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プロローグ
夢を見た。
僕は子供で、一人ぼっちだった。いつも皆から蔑まれ、虐げられ、誰にでも顧みられることない、一人の少年だった。
いつも一人で、茶色い煉瓦のような壁しかない小さな部屋に押し込まれ、ただ時間を無為にくすぶらせていた。それが当たり前だった。死ぬことも知らず、ぬるま湯のような無限地獄を体感しながら、僕はいつも神様に祈っていた。
なんだってかまいません。どうか、僕を助けてください。
それに応えるように、ある日目を覚ますと、可愛い女の子がそばにいた。
「私の名前は――。よろしくね?」
優しい女の子だった。僕はひねくれ者だったから、すごく邪険に扱っていたと思う。だけど、そんな僕に対し、――はずっと優しかった。そんな彼女に、僕は、いつの間にかひかれていった。
やがて僕たちは大人になり、僕から告白し、つきあって、結婚して。
そして、幸せになる。
――そんな、血なまぐさい、今となっては叶えようもない夢だった。