魂の欠片
ザミアによって首を切り落とされたラヒュドは、最後の首だけ復活してリスイアたちに襲いかかってきた。みんなはアビイの風の力で難なく回避する。
リスイアの体にオーラが集まり、太陽の剣は今までになく激しい炎で包まれていた。
「行けぇー、リスイア!!」
「僕らとザミアさんの思いを乗せて」
「やっつけちゃって!!」
「うおおおおおああっ!!!」
リスイアは燃え盛る剣を手に、みんなの夢や希望を背負い、ラヒュドに向かって駆け出した。
「これが僕ら人間たちの力だー!!」
リスイアは高く舞い上がり、ラヒュドの最後の首を目掛けて剣を振り下ろした。
ラヒュドはリスイアを噛み切ろうとしたが、リスイアの剣の威力が優った。
「グギャアアア!!!」
ラヒュドの首は先端から真っ二つに切り裂かれ、全身炎に包まれて倒れた。
「リスイアー!!!」
「や、やった…僕たちがやったんだ」
みんなはリスイアに向かって駆け出して、喜びを分かち合った。笑顔に囲まれ、リスイアも安堵する。
「みんなの力のお陰で、アイツを倒すことが出来たよ」
「やったね、リスイア。これでザミアさんもきっと、喜んでくれているよね…」
カナンが嬉しいのと悲しいのが混ざったような涙を流していた。
「ああ。きっと見守ってくれてたよ」
「うん」
みんなは少し落ち着き、しんみりとしてしまった。
ラヒュドは丸焦げになり、完全に炭と化していた。これでもう動けるはずはない。
その炭が崩れ落ちたのかゴロンと音がした。
みんなは一瞬ビクッとしてラヒュドの方に目をやった。
「なんだ、崩れ落ちただけだな」
「嫌だなー、驚かさないでくださいよー」
「終わったのよ、もう」
タブルス、レヴィオ、リオが、ラヒュドを見てそれぞれ口にした。
「だけど、やっぱりあのギュロンドノアスって子を救えなかったわね」
「アイツはもう、怒りと悲しみで変わっちまったんだ。しょうがねえよ…」
カナンとタブルスがリスイアを気に掛ける。
「もう、これで終わったんだ…」
リスイアは自分に言い聞かせるかのように呟く。
「…ねえ、リスイア。あれ…」
アビイが驚いた顔をして違うところを見て指差す。
「どうしたってんだよ、アビイ?」
タブルスが怪訝そうに尋ねて、アビイが指した方向を見て強張った。
「あれは…なんなんだ?!」
皆もその様子に危険を察し、振り向いて見上げると…なんと、ラヒュドの炭の中から黒い影のようなものが出てきた。
「うぐぐ…こんな姿になるとは!! 許せぬ! 人間どもめ!!」
「もしかして…ギュロンドノアス??」
「嘘でしょ?!」
「まだ生きてるって言うのかよ! しぶとい奴だな!」
リスイアたちは驚きを隠せなかった。
「もうあれは怨念みたいなものね。肉体を持たず魂だけの存在になってるわ」
「一体あんな奴、どうやって倒せばいいんだよ!」
リオとタブルスの言葉を聞いて、みんな戸惑っていた。
「クククッ…もうこの腐った大地などくれてやるわ! 我はあの清らかな大海を頂くとしよう」
ギュロンドノアスはそう言うと、魂だけになった体で浮遊し、窓を割って飛び出して行った。
「ちょっと! どうするのよ! なんだか知んないけど、アイツ出てっちゃったわよ?」
「清らかな大海とかって言ってたな? アイツまた、何する気なんだ??」
カナンとタブルスが慌てて話し出した。
「大海ってことは海…だよね??」
「とにかく、早く追わないと! また、何かしてからじゃ遅いわ!」
アビイとリオもリスイアに向かって訴えた。
「ああ。革命軍の人たちにここは任せよう。僕らは急いでアイツを追うんだ!」
「オオー!!」
リスイアたちは司令室にいた革命軍の参謀総長に会い、状況を説明した。
「な、なんと!! 司令官が殉職された!?」
「はい…どうかザミアさんを宜しくお願いします」
「…クッ。しかし、あの方らしい最後だったのですね」
「ええ。私たちと皆さんに希望を託されて逝かれました」
「そうですか…。アストラン兵は我らが鎮圧致しました。ここは我らにお任せください!」
「お願いします!」
リスイアたちは司令室を出て、裏口から外に飛び出した。
「ヒヒーンッ!」
「おっ! ロフィス!! お前、迎えに来てくれたのか??」
外に出ると白馬のロフィスが馬車を連れて待っていた。
「ありがとう、ロフィス! 助かるよ!」
リスイアがそう伝えてロフィスを撫でた瞬間、聖光の首飾りが光り、ロフィスに異変が起こった。
七色の光に包まれたロフィスと馬たちの背に、大きな翼が生えた。
「これは…?!」
「羽が生えちゃったわよ!!」
「ロフィスがね、どこでも飛んで連れて行くよって!」
アビイがロフィスの心を代弁した。
「まるで天の使いみたいね」
リオも嬉しそうにロフィスを撫でる。
「ロフィス、時間がないんだ! 急いでギュロンドノアスを捕まえたいんだけど、行ける?」
「ヒヒーン!!!」
ロフィスは任せてくれと言わんばかりに前足をあげて叫んだ。
「よし! みんな、急いで乗って! アイツを止めなきゃ!!」
「うん!!」
リスイアたちを乗せた馬車は、何もない空を駆けるように上昇し、ギュロンドノアスを追いかけて飛び立った。




