表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/59

流れる滝の洞窟

次の日の朝、一行は村から離れて山間の滝が流れる場所へと辿り着いた。

切り立った崖から流れ出る水飛沫は、火照った体温を冷ますのに丁度良かった。

「スゲー!!」

「見事な滝ですね」

「ホッホ。ここの景色も素晴らしいがの、目的の場所はこの中なのじゃ」

「この中??」

タブルスとリスイア二人の声が重なった。

ザミアに続いて滝の裏側に入り込むと、表からは見えない洞穴が現れた。

「こんなところに入り口が…」

「ホッホ。それでは行こうかの」


松明を持つザミアを先頭に、リスイア、そしてタブルスが後ろから続いた。

辺りは闇に包まれ、外の気温より冷んやりとしていて薄気味悪い。

「こ、こんなとこに、何があるって言うんだ?」

タブルスはリスイアの服の裾を掴んで震えている。

「なあに、心配するでない。儂がついておるのじゃ」

「だって、武器も取られてるんですよ。何かあったら…」

話している最中に、タブルスの首元に冷たいものが落ちてきた。

「う、ヒャーっ!」

「なんじゃ? ただの水じゃろ。まあ、魔物は出ないと思うがの、念の為、護身用のナイフはあるから心配するでない」

「ほ、ホントに大丈夫なんですか?!」

「リスイアを見習え。まずは落ち着くのじゃ」

「うー。リスイアは怖くねーのかよ」

「まあ、怖いけど、ちょっと探検みたいで面白そうじゃない?」

「なんか出ても俺は知らねーからなっ!」


ザミアは時々、足元を照らして確かめながらゆっくりと歩みを進める。

しばらく奥に進んだところで行き止まりになった。

「行き止まり?? 何もないじゃないすか」

タブルスがほっとして腰を下ろし、ザミアは天井や壁を松明で照らしながら調べている。

そして、岩の出っ張りに手をかけて押し込んだ。

すると、壁だと思っていたものが横に動き出し、入り口が現れた。

「壁が…動いた」

タブルスは腰を下ろしたまま驚き、リスイアも固まっていた。

「ほれ、もうすぐ目的地じゃ」

ザミアはタブルスを立たせて、再び奥へと歩き出した。


壁の奥の開けた空間には、植物の蔓が絡まっている。

固い岩を押しのけ、こんなところにまで木の根が張り巡らされているのだろう。

ゆっくりと奥へと進んで行くと、古びた石碑が現れた。

しかし、文字なのか記号なのかも判別できないものが書き記されてある。

「これは…」

「古の時代に残された文字じゃ。そしてこの文字を読めるものはこの世界にはいない」

「えっ?? どういうことですか??」

タブルスが尋ねる。

「この文字を残したものは、神と呼ばれる存在に近い者じゃろうな」

「じゃあザミアさんは、何故ここへ?」

「儂は昔、あるお方に託された。この書物と共に、ある使命をな」

「それで…ここには何が刻まれているのですか?」

リスイアは解読不能な石碑を見て更に尋ねた。

『精霊を司る者よ。全ての精霊を携え我の前に出でよ。さすれば闇の世界に希望の光が訪れる』

「何? よくわかんねーんだけど」

タブルスが首を捻る。

精霊を司る者、そして希望の光…。

「ふむ。今はまだその時ではないようじゃの…」

「ザミアさんには意味がわかるのですか?」

リスイアが尋ねると、ザミアは難しい表情をしていた顔を解いてリスイアに微笑んだ。

「まだ旅は始まったばかりじゃ。まずは我々の目的である他のイディアペリスを探すことにしよう」

一行は洞窟から出て、再びフロス村へと戻って行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ