大地の神
馬車はアダルナピスの国境付近で止まり、ザミアたちは降りた後、そこからフロロスの森の洞窟へと向かっていた。
「久しぶりの森だなー」
「アビイは緑が多いとこだと元気になるね」
「だって、動物たちや森の木々が楽しそうだからね」
「いいなー。私も動物たちと喋れないかなー」
「カナンはまず人の気持ちを理解するところからだな」
「タブルスに言われたくないんだけどー!」
アビイの故郷、フロロスの森に辿り着いた。
リスイアたちにとっても今では懐かしい感じがする。
一行は森林浴を楽しみながら、滝の洞窟を目指していた。
暗くなってきたため一行は、野営できそうな場所を見つけて天幕を張った。
夕食後、焚き火を囲んで談笑している。
リスイアは空の見える草原までやってきた。空には満天の星空が広がっている。
「わあ、綺麗だな…」
「なかなかの眺めね」
「リオ…」
リスイアが空を見上げていると、リオがやってきた。
「ねえリスイア、知ってる? この星の中にも私たちと同じような人や生き物がいるかもしれないのよ」
「うん。何かの本で読んだことあるよ。僕らも向こうから見たら、ただのちっぽけな星なのかな」
「そうかもね」
リスイアとリオは草原で寝そべりながら星を見上げている。
「流れ星に願い事すると叶うらしいけど、リスイアなら何を願う?」
「そうだな…みんなと一緒に仲良く過ごせますように、かな」
「そうね…リスイアらしい素敵な夢ね」
「リオってさ、未来が見えたりするの?」
「未来ってね、実は一つだけじゃないのよ。その時の行動次第で変えられるものなの。だから、一人一人の行動によって見えてた未来も摩り替わっていくものなのよ」
「そっかー。希望が湧いてきた」
「どうして??」
「今のままじゃ悲しい未来になりそうだけど、変えられるって聞いて安心したんだ」
「フフッ」
「えっ? なんで笑うの??」
「リスイアって意外とポジティブなのねって思って」
「そうかな? 一度、記憶を吹っ飛ばしたせいか、みんながいるおかげか、今はなんでもやれば出来ると思えるんだよね」
「私たちを頼もしいと感じてくれているなら嬉しいわね」
「もちろん! 一人じゃ出来ないことも、みんなと一緒なら叶えられる気がするよ!」
「私、一緒に付いてきてよかったなー」
「僕も、リオと会えて嬉しいよ」
「…リスイアって、サラッとそういうこと言うのね」
「えっ? どういうこと??」
「知らなーい。じゃ、そろそろ戻りましょ」
「えっ? うん」
リオはそう言うと立ち上がって、みんなの元へと駆けて行った。
翌日、日が昇る頃に朝食を取り、目的地の洞窟まで歩き出した。
そして半日かけてアビイが住んでいたフロス村の近く、山間の滝が流れている場所に辿り着いた。
「緑豊かな森と清らかな水、正に大自然って感じだわね」
「なかなかいいところでしょ?」
「さあ、行くぞ。目的地は、この滝の裏じゃ」
カナンとアビイがマイナスイオンを浴びていると、ザミアが先を急がせた。
リスイアたちは滝の裏の洞穴に入り、ゆっくりと進んでいく。
行き止まりの壁の岩を押すと、入り口が現れた。
植物が絡みついた広い空間にやってくると、古びた石碑があった。
「さて、やっとここまでやってきたのう」
「ザミアさん、この石碑は??」
リオは見たことのない文字が書かれた石碑について尋ねた。
「『精霊を司る者よ。全ての精霊を携え我の前に出でよ。さすれば闇の世界に希望の光が訪れる』と書かれてある」
「精霊??」
「ふむ。では、皆、この石碑に触れよ」
ザミアの言う通り、石碑に手を触れた。
すると、文字が上から順に読み上げるように光り、最後の文字まで辿り着くと、全ての文字が輝き出した。
ゴオオンと言う音と共に、奥の壁が開き始めた。
「何、これ??」
「とりあえず行ってみましょう」
カナンの驚きの声をレヴィオが促し、一行もその壁の向こう側へと歩き出した。
光に満ちた部屋。
眩い光に目が慣れ始め、ゆっくりと中を見回してみる。
人が作ったとは思えないほどの煌びやかな装飾、その部屋の奥には円形の台座があり、石碑と同じような文字が書かれてあった。その後、壁の扉が閉まる音がした。
「ちょっと、何ここ? 閉じ込められちゃったわよ?!」
「…ようこそ、神の子たちよ。私は、大地の神アイガと申します」
カナンが騒ぎ出そうとしたところ、透き通るような神秘的な声が辺りに響く。
ザミアは跪き、みんなもそれに倣った。
「大地の神アイガ様。儂は時の神オイアン様より使命を承りし者に御座います。ここに神の子らを集結し、はせ参じました」
「よくぞ参りましたね。時の神とは懐かしい。其方らには遠き過去でしょうが…と、どうやらのんびり世間話をしている場合では無いようですね」
「はっ! 由々しき事態に御座います」
「大地が痛みと悲しみに震えております。一刻もこの悲しみの連鎖を止めなければなりません。さあ、神の子らよ、心を一つにするのです」
「心を一つに、と言うと、どのようにすれば良いのでしょうか?」
リスイアがアイガに恭しく尋ねる。
「其方が持つ聖光の首飾りに光を宿すのです。其方を中心に皆、円になって祈りなさい」
「はい」
リスイアが中央に立って、他の者たちは囲むように跪き、祈りを捧げた。
そして大地の神アイガが、この世のものとは思えぬ澄んだ歌声で歌い始めた。
すると、それぞれのオーラが色鮮やかに輝き出し、その光がリスイアの聖光の首飾りへと集まっていく。
首飾りの透明だった宝石が輝き、七色の宝玉となって光輝いた。
「こ、これは…」
「この世界を闇から救い出す為の希望です。神の子よ、其方らに託しましたよ」
リスイアは聖光の首飾りを見つめる。なんだか勇気が湧いてくるようだ。
「アイガ様に誓って、必ずやこの使命を全う致します!」
ザミアがアイガに宣言した。
「期待していますよ。…おや、まだ上手く能力を引き出せていない方がいるようですね」
「えっ…?」
「私が成長を促しましょう。そのまま祈りなさい」
みんなはよく分からないまま、言われた通りに跪いて祈った。
アイガが一人一人の頭の上を撫でるようにすると、それぞれのオーラが一瞬激しく燃焼した。
「さあ、これで自身のオーラを自在に操れるでしょう」
「あ、ありがとうございます!!」
みんなはアイガに深々と礼をした。
「ああ、それと、これを其方らに譲りましょう。味方を呼び寄せる力が込められた友愛の角笛です。きっと役にたつでしょう」
「ありがとうございます!!」
「誠に忝い。大切に使わせて頂きます」
アビイが代表して受け取り、ザミアも重ねて礼を述べた。
「其方らは生まれながらに過酷な運命を背負ってきました。自分の運命を呪ったこともあるでしょう。しかし、誰かを恨むよりも過ちを赦し、愛して欲しいのです。きっと其方らなら出来ると私は信じていますよ」
「ありがとうございます、アイガ様。僕らが大業を成せるように、どうかお見守りください」
リスイアがアイガにそう伝えると、アイガはニッコリと微笑んだ。
リスイアたちは洞窟を出た。
アイガに頭を触れられてから、どこからか力が漲ってくるようだった。
「さて、皆の者、準備は整った。これから最終決戦に突入するぞ! 心して参れ!」
「オオー!!!」
リスイアたちは三種の神器と自身の最大能力を携えて、これから挑む決戦へ鼓舞して立ち向かうのだった。




