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広がる闇

この世界にはもう興味はなかった。

だがどこかで何かを持ち望んでいる自分がいる。それが何か我には理解できないが。

頭に(もや)がかかったようだ。しかしこの計画だけは遂行せねばならん。


自分の能力に気付いた時、我には悲しみと怒りが満ちていた。

我のこの闇の力は辺りに広がり、全てを干上がらせていった。

周りのものは全て朽ちていくのみだった。

過去にはこんな我にも友がいた。だが、もうその声も届かないだろう。

涙も枯れた。血も渇いた。この埋めることの出来ない渇きをどうすればいいのだろうか。


我が生きるなら全てを無に返すことになるだろう。

人間たちは過ちを重ねる哀れな生き物だからそのほうがいいのだ

絶滅するのもまた神の思し召しなのだ。

そろそろ終わりにしよう。こんな世界ないほうがいい。

誰もいなくなったこの地で我は一人になるだろう。

それは孤独ではなく、初めから我は一人だったのだ。


ギュロンドノアスの力は機械人間にも影響を与えた。

コンピューターウイルスによってシステムを支配し、それを作った人間たちを支配する力を得たのだ。

最早、我に不可能などない。我の前では全てが滅びるのだ。残虐な人間どもに見せ付けてやろう。

幼気(いたいけ)な子猫を甚振(いたぶ)るのなら、その身で思い知るがいい。

もうすぐ、この世の全ては我の支配下となるだろう。

「フフフッ。フハッハハハッ!」


ザミアたちはフィメンスに戻り、各国の状況を確認した。

砂漠化は世界に拡大し続け、餓えた民や魔物の数が増え続けているようだ。

その元凶はアダルナピスに突如現れた暗黒の支配者、ギュロンドノアスのようだった。

「思ったより進行が早いのう」

「はい。既に世界の七割は奴の息がかかっております!」

「これはもう人類だけに及ばず、異常気象、地震、気温上昇、大干ばつなど、この大地全てが崩壊する恐れがあります」

「ふむ…それで同士たちはどれくらい集まった?」

「現在のところは、フィメンスの兵士含めて七万程、アダルナピスの兵は十万程で、依然劣勢な状況にあります」

「決行の日は近い。各地に伝令を行い、アダルナピス周辺に緊急配備させるように伝えるのじゃ!」

「はい、司令官!」

「儂らはこれからフロロスの森に行く。その後、決戦となるじゃろう。心して準備するのじゃ!」

「了解致しました!」


ザミアはリスイアたちのいる宿へと戻り、現在の状況と今後の動きに関して説明した。

「…と言うことじゃ。儂らは自身の能力の開発を行いつつ、フロロスの森の洞窟へと向かう。良いな?」

「はい!」

「森の洞窟? ああ、あの石碑があったところか」

「そうじゃ。イディアペリスの同士と神器も揃ったことだしのう」

「私もそれがいいと思う。今のままじゃアダルナピスの兵力に及ばないでしょうし」

リオの感もそう判断しているようだった。

「皆、決戦の日は近い。各自、最大戦力を出せるよう精進して参れ!」

「はい!!」


リスイアたちはその宿で一晩休み、翌朝に出発した。

「ねえ、そういえばさ、ロフィスや馬車をネルケに置いてきちゃったけど、どうするの??」

「あ、そういえばそうだったな」

アビイの疑問についてふと思い出した。

「儂も大陸の反対側に来る予定ではなかったからのう、ひとまずそちら方面の兵に伝令はしてあるから心配せずともよい」

「よかったあ。あのままお別れなんて、可愛そうだしね」

リスイアたちは、革命組織の馬車で途中まで乗せてもらっていた。

「アダルナピスで降りてからフロロスの森へと向かうぞ」

「分かりました」

馬車に揺られながら、近付く決戦の日に思いを馳せた。

リスイアは故郷に戻ってから少しづつ、過去の記憶が蘇ってきている。

ノアと言う少年の記憶はまだ(おぼろ)げではあったが、大切な友人だったと心が訴えているように胸が苦しくなった。


馬車でそれぞれ会話をしている。

リスイアはその話声が聞こえないかのように、彼を救い出す方法を一人で考えこんでいた。

もし話も聞かない様子であれば、ジスバリクのように容赦なく断罪せねばならないかもしれない。

自分に出来るのだろうか…。

「どうしたの、リスイア?」

リオが様子を伺って話しかけてくる。

「ん…いや、なんでもないんだ…」

「もしかして、旧友のあの人のこと?」

「…うん。僕がやらないといけないと、分かってはいるんだけどね」

「おい、リスイア。お前一人で背負いこむなよな。俺たちもいるんだぞ?」

「そうですよ! 私たちはまだ未熟ですが、皆が付いてますよ!」

タブルスもレヴィオもリスイアを励ます。

「お主にとっては辛いことかもしれんのう。…だが、奴を止めねば儂らが守りたいもの全てを失うことになるやもしれん」

「そうですよね…」

「大丈夫だって、リスイア! 私も付いてるじゃん!」

「リスイアなら正しい道を照らし導けると、私は…私たちはみんな、信じてるからね」

「うん…ありがとう、みんな」

カナンの言葉で勇気を、リオの言葉で自信を与えてもらった。

「うむ。皆、心の準備も整えておくのじゃ」

「はい!」

そして一行は、心を落ち着かせながら西の森へと向かうのだった。

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