太陽神の力
更に奥へと進む一行は、王の墓がある広間へとやってきた。
「ここがかつてのギュプストイア国の王の墓か…」
「思ったより簡素な感じね」
タブルスとカナンが呟く。棺の他にはいくつかの装飾品が飾られてあるだけであった。
「王家の宝ってこれだけなのかな?」
アビイが辺りを見回して誰にともなく尋ねる。
「ここには神器は無いようですね」
レヴィオも同じように見回しながら言う。
「ってことはさ、ここまで来たのに収穫なしってこと??」
「うーむ。また何か仕掛けがあるやも知れぬ。辺りを調べて見るのじゃ」
ザミアの言う通りに、壁や床などあらゆる場所を調べた。
「ねえ、この壁見て! この絵に何か見覚えない?」
カナンが棺の奥にある台座の後ろで声を掛けてきた。
草木が青々しく茂り、蝶が舞っているようだ。
「何かおかしいのか??」
「この花よ、見たことない?」
タブルスは何かよく分からず、カナンに尋ねた。
「花??」
「これは、イリスの花ですね」
「リスイア、もしかして、これもそうなんじゃない??」
「ああ!」
リスイアは聖光の首飾りを取り出し、絵の前でかざしてみた。
すると、その絵に色がついた光が浮かび上がり、ガシャンと言う音がして壁が左右に動き出した。
中は光で満ちて何も見えなかった。
「うっ!」
「なに! どうなったの??」
段々と視界が戻り、光の中にあった物がハッキリと見えてきた。
階段上にある台座の一番上に、真紅の宝石が埋め込まれている剣が一つ突き刺さしてあった。
「もしかして、あれが神器、太陽の剣…」
「リスイア、行ってみなさいよ!」
「う、うん…」
カナンに言われてリスイアは、階段を登っていき、ゆっくりと剣に触れてから引き抜こうとした。
その時、一瞬赤い光を解き放ち、その後スルリと剣は抜けて行った。
リスイアは剣を頭上に掲げる。
「うおおおー!!!」
「神器が揃った…」
リスイアの手には太陽の剣、そして首元には聖光の首飾り、左手にはキレアスの盾が揃っていた。
太陽の剣は天井から射す光によって、輝きを放っていた。
「やっと揃ったのう。では、ここから出て一度街に戻るとするか」
「よっしゃー!!」
みんなは歓声をあげて喜び、大イタチもなんだか嬉しそうに踊っていた。
リスイアたちは来た道を戻り、狭い通路もなんとか大いたちを押し出して潜り抜け、ようやく外に出てきた。
陽が傾き掛けていた外の景色は、時間の経過以外に何か不自然な気がした。
「ザミアさん、そういえば兵士たちがいないよ?」
「何かあったのかな??」
「うーむ…」
みんなで考えていたところ、遠くから悲鳴が聞こえてきた。
「だ、誰か、助けてくれー!!」
「うわー!! こっちにくるなー!!」
兵士たちが何かに襲われているようだ。
「行くぞ!!」
ザミアは義足の足で出来るだけ素早く移動した。
「お前らはここにいろ!」
タブルスもザミアに付いていく。
「タブルス!!」
兵士たちを襲っていた魔物は、大きな蛇と鶏を合わせたような異様な出で立ちをしていた。
「司令官! ジスバリクです! アイツに近づいてはいけません! 猛毒を持っていて何人かやられました!!」
「猛毒?! それは厄介な相手じゃのう…」
「申し訳ありません! 睨まれるだけで死に至らしめる力があるようで…逃げるしか術がありませんでした」
「おいおい。砂漠にはこんな危険生物がいるのかよ! どうする、ザミアさん」
「むう…ひとまず、儂らで引きつけて食い止めねば!」
「わかった!」
ザミアとタブルスは兵士たちから離れ、間合いをとって攻撃した。
ジスバリクはザミアたちに焦点を絞り、そちらに向かって行った。
ザミアは雷でジスバリクに攻撃しているが、ダメージを受けてもすぐに回復してしまうようだった。
「くっ! 効果なしか…」
「攻撃しても回復しちまうな…」
「ねえ、リスイア、どうしよう…」
カナンが心配そうにしている。リオは兵士たちの傷の手当をしていた。
何か策がないだろうかと考えていた時、アビイが叫んだ。
「リスイア! 大イタチが戦うって!」
「え? だけど、大イタチだけじゃあな…」
「私が撹乱致します! 私の霧には相手を惑わせる効果もあるのです」
「レヴィオ…そうか! みんな、作戦を言うから指示通りに動いて!」
「はい!」
リスイアは小声で何やら作戦を伝えた。
「以上だ! いいね!」
「うん!」
「了解です!」
「キュオオンッ!」
「みんな、気を付けて!!」
カナンとリオは残り、兵士たちと待機することになった。
「クッ…やべえな、こりゃ」
「神器を持ち出したせいで、こんな物騒な魔物を呼び起こしてしまったのかのう」
「ゴオオオアアアアッ!!」
ジスバリクが叫び声をあげて襲いかかる。
「くっ!」
「もうダメだ!!」
タブルスが死を覚悟した時、痛みの代わりに魔物の悲鳴が聞こえた。
「グギャッオオ!!」
タブルスとザミアが目を開けると、大イタチがジスバリクに噛み付いていた。
「タブルス、ザミアさん、僕らに任せて!」
大イタチに乗ったアビイが、二人に叫んだ。
「アビイ!!」
そして、どこからか霧が立ち込めてジスバリクを覆った。
すると、ジスバリクは誰もいない場所に向かって暴れている。
「なんじゃ、どうしたと言うのじゃ!」
ザミアも唖然としている。
「さあ、今のうちに、こちらへ!」
レヴィオが霧を操りながらザミアたちに話しかける。
「レヴィオ! お前、やるなー」
「これも修行の成果ですよ」
「おお!」
ザミアとタブルスはその力に感心していた。
「ギャアッ!」
大イタチがジスバリクの目を引っ掻いたようだ。
「これで目を見ても大丈夫だね」
アビイは器用に大イタチに乗っかり、得意げに話す。
ジスバリクは回復を試みながら、苦しんでいた。
「今だよ、リスイア!!」
「うおおおおー!!」
アビイが合図を送ると、リスイアが飛び出してきた。
大イタチを駆け上り、高くジャンプして太陽の剣をジスバリクに向かって振り下ろした。
「闇の魔物よ、この世から消し去れーーー!!」
太陽の剣はリスイアの炎を剣に帯び、ズバンッと勢いよく真っ二つに切り裂かれた。
「グギャオオオアアッ!!」
ジスバリクの身は炎によって全て焼かれ、灰となり消え去った。
「うおおおー!!」
兵士たちの歓喜の声が響く。
「な、なんと言う力じゃ…」
ザミアも言葉にならなかった。
「お前ら、すげーな! いつの間に、そんなレベルアップしたんだよ!」
「ふふん! 私の応援のお陰でしょ?」
「そうかもね?」
リスイアが笑って見せると、みんなにも笑顔が広がった。
そして、ポツリと冷たい物が落ちてきた。何ヶ月ぶりかの雨だった。
「これは…やはり貴方様たちが神の子なのですね」
「ホッホ。たまたまじゃろうて」
「いえ! 私はなんと言われましても信じますぞ! 彼らがいなければ、我らの国は滅びていたかもしれません」
兵士たちはリスイアたちへ尊敬の眼差しを捧げた。
「ちょっと大げさ過ぎない?」
「まあ、でもよ、これで少しは希望が見えてきたかもな。カナンも頑張れよ?」
「私はだから戦闘要員じゃないっての! アンタがもっとしっかり私を守りなさいよ!」
「はいはい」
いつものやり取りと神器を無事に手に入れたことで、みんなに安堵の表情が戻った。




