童歌と大洪水
ザミアとタブルス、カナン、アビイの方は順調に狭い道を通り抜け、広い部屋に出てきた。
火で照らすと、壁には古代の文字や壁画が書かれてあった。
その中には太陽を崇める人、そして神様が剣を人に渡すところが描かれていた。
「これは…やはり太陽の剣を示しているみたいじゃのう」
「そうみたいね」
「てことは、やっぱりこの中にあるってことなのかな?」
「んー、分かんねーけど、まずは進んでみようぜ」
「うん」
四人になり少し心細く感じていたが、とにかく前に進んでいくことにした。
広間を過ぎて少し小さい部屋に移ると、両端に松明がある壁のみで行き止まりになっていた。
「あれ? 行き止まりみたいね」
「ふーむ…どこかに別の道があるのかのう」
「ねえ、ザミアさん。この壁にも何か書かれてあるみたいだよ?」
ザミアが松明を壁に照らし出す。
「これは…絵か??」
太陽と枯れた大地、数人の神子が祈祷している。そして雨が降って喜んでいるようだ。
「これになんの意味があるんだろうね?」
アビイの疑問に誰も答えられなかった。
「んー、これは童歌を表しているようじゃな」
「童歌?」
「真っ暗闇でカラッカラ〜、お天道様がピッカピカ〜、神の子どもたちが祈ったら、笑顔の雨が降り注ぐ〜。というやつでな、この国の子どもたちがよく歌っている歌じゃ。儂も昔はよく婆やに教わったものじゃがのう」
「そうだとしてもさ、どうやって先に進めばいいのかしら…」
「ここには太陽も雨もねえしなー…」
「…」
「他の場所を探してみましょうか?」
「そうだな」
一行は、ひとまず他の道を探すことにした。
リスイアたちと大イタチは、真っ暗な空洞を歩き回り、抜け道を探していた。
「けっこう歩いてみたけど、何もないわね」
「そうですねー」
「やっぱり出口はないのかなー。けどさ、この子は何処から入ってきたんだろう?」
「そうよねー。リスイア、ちょっと聞いてみてよ」
「うん」
リスイアはすっかり懐いた大イタチに尋ねた。
「ふーん。そうなんだー」
「で、なんて言ってたのよ!」
「この奥にある水路を通ってきたってさ」
「水路??」
リオとレヴィオは辺りをよく観察して調べてみる。
「皆さん! こっちから水の気配がしますよ!」
「ホント?!」
レヴィオが言う通りに進んで行った。
少し狭い空間の部屋の奥に、池のように水が溜まっていた。
「ここから来たってことかしら?」
「一体何処に繋がっているんだろうね」
「ここ以外に出口はなさそうですが…」
そんな話をしていた矢先、ゴンッと入ってきた部屋の扉が閉まった。
「ちょっと! なんか閉じ込められたみたいなんだけど!」
「そうだね…」
「そうだねじゃないでしょ! ちょっと、どうすんのよこれ!!」
「ん? 皆さん、何か聞こえませんか?」
「え? どうしたの、レヴィオ?」
「これは…ちょっと、危険な予感がします」
「待って! これ、なんか流れてくる音じゃない?」
ザザザザーっと言う音が段々と大きくなってくる。足元に濡れた感触があった。
「水だ! 大量の水が入ってきてるよ!」
リスイアがそう叫ぶと、上の方からいつの間にか滝のような水がドババババッと流れてきていた。
「これは、マズイですね!」
大イタチはおろおろしている。
あっという間に水嵩が増して首の下にまでやって来た。
「あっぷ! もうダメ、溺れちゃうわ!」
「これ以上は無理です!」
「…そうだ! みんな、大イタチに捕まって!」
「えっ?」
「いいから、早く!」
リスイアの言う通りにみんな必死で大イタチに捕まった。
「三、二、一で息を止めて!」
「分かったわ!」
「じゃあ、いくよ! 三、二、一…」
リスイアの掛け声と同時に、みんな目を瞑って息を止めた。水はとうとう天井まで覆ってしまっていた。
すると、大イタチは水の中をグルンと一回転した後、池の中へと突っ込んで泳いで行った。
ザミアたちは壁に沿って歩きながら、別な道がないか探していた。
「…ねえ、何か聞こえなかった?」
「うーん。そういえば誰かの声が聞こえたような…」
「いるんだよ、きっとここに。王家の人の亡霊が…」
「ちょっと! 驚かせないでよ!」
「むん? いや、確かに聞こえるぞ? 何かが押し寄せてくるような…」
ザミアたちは静かに耳をそばだてた。
「確かに…」
「なんだろ、これって…もしかして」
そんな話をしていたところ、ドバッと大量の水が吹き出してきて、ザミアたちも押し流された。
「どわーッ!」
「キャー!!!」
「お、押し流されるー!!!」
突然の出来事にザミアたちは為す術もなく、水の流れのままに流されていくのだった。
そして、突き当たりだった壁画が描かれた壁にぶち当たると、松明が消えて壁が光輝き、突如、壁が開いた。
「うわわわっー」
「どおおりゃあーー」
「なんなのよ〜!!!」
「壁が…開いた?!」
ザミアたちは壁の向こう側に投げ飛ばされた。
そして、バッシャンッと大きなイタチと数人の男女も一緒に飛び出してきた。
「いてててッ」
「た、助かったの??」
「め、目眩いがする…」
「リ、リスイア?!」
カナンが飛び出してきた人たちを見て叫んだ。
「お前ら! 無事だったのか!」
「リオさん、レヴィオも!」
「おお! よかった、本当によかったのう…」
リスイアたちの無事に喜び、抱きしめ合った。
「…それで、この大イタチはなんなんだ?」
落ち着いたところで、タブルスがずっと気になっていた物について尋ねてきた。
「落とし穴に落ちたところにいたのよ。それで、一緒についてきちゃったわけ」
「だけど、この子のおかげで助かりました」
「水が溢れてくる部屋に閉じ込められた時、この大イタチが水路を泳いで僕らを助けてくれたんだ」
大イタチはびしょ濡れの体を震わせて、水を弾き飛ばしている。
「この子は危険じゃないみたいだよ。迷いこんじゃって出られなくなったんでしょ?」
「うん」
アビイは大イタチを撫でると、すっかり仲良くなったようだ。
「まあ、とにかく、こうしてなんとか先に進めたようだしな」
「ふむ。ここに置いていくのもなんじゃしのう。連れて行ってみるかの」
「はい! よかったな」
「キュウウンッ」
大イタチも喜んでいるようだった。
「それでは、皆、先を急ぐぞ!」
「オオー!!!」
謎の仕掛けに戸惑いながらもザミアたちは、なんとか揃って迷宮を進んでいくのだった。




