西から東へ
「そうなると…ここからどこへ向かうかじゃが…」
「あのさ、さっきの宝箱の中に、こんな地図があったんだけど…」
アビイが持ってきた地図を広げて、みんなは覗き込んだ。
「え…ちょっと、これなんだかおかしくない?」
カナンがふと疑問に思ったことを口にする。
「確かに…これは真ん中に海があって、左右の陸が続いている…」
「ザミアさん、今の地図持ってますか?」
「ああ、これじゃよ」
ザミアは自分の持っていた地図を広げて見比べてみた。
「これって…もしかして…この古い地図は、海が中心に書かれているんじゃない?」
リオが中心にある島を指差した。
「そうじゃ! このトランティアスと言う島がこの島じゃ」
「ということは…え? もしかして、この世界は繋がってるってこと??」
皆はカナンが言った驚愕の事実に驚いた。
「…僕が前に買った本でね、異世界の話があったんだけどさ…」
リスイアがポツリと話を切り出した。
「その話ではね、宇宙と言う真っ暗な空間に、丸い星が浮かんでて、その中で僕らと同じような生き物が住んでるんだって」
「…それで? それと地図と、なんの関係があるのかしら??」
「つまり、リスイアさんが言いたいことは、この世界も同じであると言うことですか?」
「うん。もしかするとね。だからこの地図を丸く繋げてみると…」
「! そうか! 今までの地図だと、海の向こうは何もねえと思ってたけど、西にずーっと行くと、東に出るってわけか!」
「そうなんだ! まあ、これは仮説でしかないけどね」
みんなはなるほどと頷いた。
「じゃあさ、この海の向こう側がどこに繋がっているのか、ひとまず行ってみない? 私も気になるし」
インセーレが話に割って入ってきた。
「そうじゃのう。…では、そうしてみるか」
ザミアもインセーレの提案に同意した。
「よっしゃー!! じゃあ、新たな海へ冒険の旅に出発だ!!」
「おおー!!」
タブルスの掛け声に合わせて、みんなも手を突き出して叫んだ。
グオオーーー!!
海亀のケロンドピアスも応答するかのように一声上げて、島ごと動き出して西に進み始めた。
「スゲーな! 島ごと動くなんて」
「ほんとねっ」
「ねえ、見て! イルカの群も一緒に付いてきてるよ!」
アビイが進行方向の右手の海を指差した。黒い影が水面ギリギリを泳いで付いてくる。
「私たちを見送ってくれるのかしらねっ」
「こんな旅ができるなんて、夢のようですね」
リオもレヴィオも楽しげに笑っている。
月は傾き始め、真夜中を過ぎていた。
「お主ら、今日は色々あって疲れたじゃろう。少し休むとしようぞ」
「はーい!」
ザミアたちは野営の時のように、天幕を使って寝床を作った。
リスイアは初めての船旅、いや海亀の島の旅を、満月を見ながら目に焼き付けていた。
波の音が心地よく響いてくる。
リスイアが目を開けると、もう陽が昇っていた。
周りには誰もいない。もしかして、昨日あった出来事は幻だったんじゃないだろうか。
リスイアは起き上がって辺りを見回した。
海が四方八方に広がっている。時々海亀の手が水を掻くのが見えた。
あれからずっと休まず泳ぎ続けているのだろうか。
「おーい、リスイア! やっと起きたのか」
タブルスが手を振って浜の近くに立っていた。
「おはよう。みんな、早起きだね。どこ行ったのかな?」
「ああ、食料がないか島を探索しているんだろ。俺はここで魚を取ろうと思ってな」
「ふああ。おはよう」
人魚も海から岩礁に登ってきて挨拶してきた。どこかで寝てたんだろうか。
「おはよう。自己紹介してたっけ? 僕はリスイア。こっちはタブルスだよ」
「貴方が神の子ね。私はインセーレよ。よろしく」
「神の子って言われてもなあ。僕にはそんな力ないと思うんだけど…」
「あら? まだ覚醒してないんじゃない? 大丈夫?」
「こいつは一度記憶を無くしているからな。けど神官様に選ばれた奴だぜ?」
「そうなんだ。貴方以外の子たちも、いろんな特技ありそうね」
「おう。ちょっと待ってろよ」
タブルスは岩にジャンプして立ち上がり、神経を集中させ始めた。
「何が起こるのかなー? ワクワクッ」
リスイアと一緒にインセーレはタブルスの様子を見守っていた。
すると、海水が波立ち、クルクルとウェーブを描き始めた。
その波の上にタブルスが乗り、波を自在に操っている。
「ちょっと、なに君! 凄いじゃない! 私にも遊ばせてよ!」
インセーレはタブルスの波に向かって行き、クルクル回りながら一緒に遊んだ。
「まー、こんなもんよ」
波と共に浜に戻ってきたタブルスは、砂浜に転がってきたインセーレにそう告げた。
「世界がぐるぐる回ってる〜」
インセーレは目を回して倒れている。
「おい、大丈夫か??」
タブルスとリスイアはインセーレを助け起こして、波打ち際の涼しい場所へと連れて行った。
「あ、ありがと。アンタ、凄いわね」
「俺なんかまだまだだよ。ザミアって爺さんの話によると、昔、海を割った人物がいたって話だしな」
「ああ。そんなんいたっけねー」
「本当にいたんだ! というかさ、インセーレさんって他に人魚の友だちはいないの??」
「それがね、大嵐が来た時に逸れちゃったのよね、私。だからさー、このケロちゃんが今は友だちみたいな感じかな」
「そっか。まあ、こうして一緒に海を旅してるうちに、見つかるといいな」
「うん! アンタ…タブルスだっけ? 意外と優しいわね」
「俺はいつでも優しい男だぜ!」
「タブルスは仲間思いのいい奴なんだよ。…ところでさ、ここってどの辺りなんだろね」
「そうだなー。半日くらいは進んでるみたいだけど、海しか見えないもんなー」
「あの、インセーレさん。この海亀さんって休まなくて大丈夫なのかな??」
リスイアは海亀のことが気になった。
「そうねえ。ちょっと聞いてくるわ」
人魚は気力を取り戻して、海に潜って行った。
そうしているうちにザミアたちが戻ってきた。
「おはよう、みんな。食材はあったの??」
「それが、ずっと海に沈んでたせいか、海藻か魚介類ばっかりだわね」
「そっか。こっちも魚は取ったけどな。まあ、とりあえず飯にするか」
「うん!」
みんな集まってきたところで食事を取った。それぞれ寛ぎながら話したりしている。
「ここがどこかまだはっきりしないけどさ、予想だと地図の東の大陸に出るってことだよね?」
リスイアがみんなに聞いた。
「そうだな」
「次の目的地は、えっと…どこに行くんだっけ?」
「三種の神器の最後の一つは、太陽の剣でしたよね。リオさんは確か、砂漠と関係があるとか仰っていたはずでしたが…」
レヴィオがリオに話を振った。
「そうね。砂漠地帯にある石造りの建造物が見えたわ」
「東の大陸の砂漠地帯となると…」
「ギュプストイア、儂の故郷じゃ」
アビイが言いかけた時、ザミアがボソッと答えた。
「ザミアさんの? じゃあ、その伝説の剣の場所に、心当たりはあるの?」
カナンがザミアに尋ねる。
「まあ、いくつかはな。情報はその国で一番の都市、フィメンスで集めよう」
「そうですね」
レヴィオがザミアの意見に賛同し、みんなも食事に戻った。
リスイアは、ザミアの表情が少し陰ったように見えたのが少し気になっていた。




