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海の住人

怪しい女性の警告を無視して進むリスイアたちを乗せた海賊船は、既に深い霧に包まれていた。

「船長! 視界不良のため、これ以上は危険です!!」

「クソッ! せめて、この霧さえなんとかなればな…」


甲板にいた船員たちは、心地良い美しい歌声にウットリしていた。

「ああ、なんて美しい歌声だろう。夢の中にいるようだ…」

そのうち船員がバタバタとその場に倒れ、眠ってしまった。

「皆、耳を塞ぐのじゃ! 惑わされるな!」

ザミアの声が届いた者たちは、なんとか耳を塞いで耐えた。

「どうする? このままじゃ…」

「レヴィオとアビイ! まずは、この霧を晴らすのじゃ!」

「はい!」

「わかった!」


二人はザミアの指示通り、前と同じく神経を集中させた。

レヴィオが水蒸気をかき集め、放出するタイミングでアビイが風で吹き飛ばすのだ。

「…行くぞ、アビイ!」

「うん! いいよっ!」

「うーむ…ハッ!!」

二人の息はピッタリだった。出航が決まってから練習を重ねた成果が現れていた。

海の上を覆っていた深い霧は、あっと言う間に消えていた。

「すごい! 二人とも!!」

カナンがリオと一緒に喜んでいる。

しかし喜んだのも束の間、船の周りには渦潮が複数出現して行く手を阻んでいた。

「やべえぜ、こりゃ!! 面舵いっぱい!!」

船長は海面に現れた渦に飲み込まれないよう、操舵者に指示を出した。

眠っていた船員たちも起こして対応に当たらせる。

周りには岩礁もあり、霧が晴れなければ完全にぶつかっていたところだった。

「おい! みんな、振り落とされんなよ! どっかに掴まれ!!」

船が大きく左右に揺れ動く。このままだと危険だ。


「フフフッ。やるわね、貴方たち。また私の子守唄で永遠に眠らせてあげるわ…」

また怪しげな歌声が響き渡る。

「クッソ! このままじゃ、危ねー! 退却するしかないのか…」

この状況で船員がやられたら、本当に海の藻屑になりそうだった。

「もう、こうなったら私の出番だわね…」

「えっ? ちょっと、なにするのカナン??」

リオが止めようとするのも聞かず、カナンは船首の方に向かって行った。

カナンは大きく息を吸い込むと、深く息を吐いて深呼吸し、目を閉じて神経を集中させた。

そして、カッと目を見開く。

「行くわよ! 戦士の舞!」

カナンは情熱的な舞を踊り、歌いながら、怪しい歌声に対抗するように舞い踊った。

怪しげな歌声が徐々にかき乱されていく。

「そ、そんな! 私の声が届かないなんて…」

「カナンも、やるときゃやるのう」

「タブルス? どうしたの??」

リスイアがカナンの舞をぼーっと見ているタブルスに気付いて、声を掛けた。

「えっ? ああ、あいつもやるなーってな。うんうん」

「顔赤いけど、大丈夫? タブルス」

アビイもニヤニヤしながら尋ねる。

「な、なんでもねーよ!」

「カナンさんも、あのように妖艶な美しい舞を踊られるのですね」

「おい、レヴィオ! カナンに手を出すなよ?」

「えっ? どうしたんですか、急に??」

「アイツ、怒ったらとんでもないんだからな! レヴィオなんか簡単に()されちまうから触れないほうがいいぞ」

「あれー? タブルス、もしかして妬いてるのかな??」

「お、俺が? カ、カ、カナンに?? あ、あるわけねーだろっ」

アビイがタブルスをからかっていると、いつの間にか海面が穏やかになって、カナンの舞も終了していた。

海面に映る満月が美しく光輝いている。


「ちょっと! 貴女、なんなのよ!」

どこからか女性の声が聞こえた。

「リオ? アンタ、なんか言った??」

「え? 私じゃないわよ」

「こっちよ、こっち!」

カナンでもリオでもない女性の声。

ということは、まさか…。

「幽霊〜!!!」

みんな一斉に同じことを叫んだ。

「違うわよ! 人魚よ、人魚!」

声のした方を注意深く見てみると、上半身が女性で下半身が魚の姿のメルヘンな生き物が岩礁に座っていた。

「に、人魚ー!!!!」

「そうだけど、何か?」

「な、何か? じゃねえーよ! そんなのおとぎ話だろ!」

船員の一人が突っ込む。

「おとぎ話ねー。まあ、信じたくない気持ちもわかるけどさ。私だって、こんな姿になりたくてなったわけじゃないわよ」

「やっぱり、あれですか? 失恋して海に身を投げたからとか…」

リスイアがなんとなく聞いたような話を言ってみた。

「もう、そんなんじゃないわよ! ちょっと、聞いてくれない?」

人魚は意外にお喋りで人懐っこかった。

その人魚、インセーレによると、昔この辺りにあった島トランティアスに住んでいたという。

その島が海に沈んだ時、この海で生活できるようにと神様が魚の尾を与えてくれたそうだった。


「…ってな訳なのよー。私もこれで苦労してんのよー」

「はあ、それは大変だったんですねー」

リスイアたちは茶を飲みながら、しばし人魚の生い立ちについて聞いていた。

「ちなみに人魚殿、その島には伝説の盾とやらがあったのかのう」

「ああ、あれね。確かに神殿に祀られていたわね」

「あるんかい!」

誰かが突っ込んだ。

「それで人魚ちゃん、その島ってさ、満月の夜に現れるって聞いたんだけど、行き方知らない?」

カナンが友だち感覚で気軽に聞いた。

「えー、どうしようかな…選ばれた人しか教えてあげちゃダメって言われてるんだけど…」

「選ばれた人って??」

アビイが人魚に質問した。

「神の子として認められた証を持つ者よ」

みんなは顔を見合わせた。

「もしかして、リスイアの持ってるやつじゃね?」

タブルスがリスイアの首元を指差す。

「ああ、この首飾りか…」

リスイアは人魚に聖光の首飾りを見せてみた。

「アンタ、それ!! 間違いない! うん、いいよ! 教えてあげる」

「やったー!!!」

人魚はニッコリと微笑むと、リスイアたちを認めてくれたようだった。

「お、おい! マジで宝の島に行けるのか!!」

「うおおおおーー!!」

船員たちも歓喜に湧いた。

「じゃあ、私に付いて来て!」

人魚はそう言うと、海に飛び込んで船の前方へと進み、顔を出して手を振った。

「よーし! 宝の島に行くぞ、野郎ども!!」

「オーー!!!」

「ホッホ。遂にお目見えじゃのう。楽しみじゃわい」

リスイアたちもワクワクと期待に胸を躍らせながら、宝の島を目指して進むのだった。

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