最果ての町
リスイアたちは霧を抜けると、再び広大な大地の草原に出て南下していった。
「ねえ、これからどこに向かうの?」
「ふむ…そうじゃのう。まずは道中でそれぞれ修行しながら、神器とやらの情報を集めるとしようかの」
「えーと…残るのは、キレアスの盾と、太陽の剣だっけ?」
カナン、ザミア、アビイがそれぞれ話していた。
レヴィオは馬車の外で手綱を引いて様子を伺っている。
「ねえリオ、僕らはどこに向かったらいいかな? 何か手掛かりになりそうな場所とか分かる?」
リスイアがリオに尋ねる。
「うーん…そうね。一つは海深く、もう一つは砂漠にある石造りの建物が見えるわ」
「むう。そうなると…」
ザミアは地図を広げて、リオが指し示した場所を探した。
「現在地は、北西のここじゃ。海と言うと、西の果てと東の果てかのう。近いのは西側じゃ。まずはそちらから情報を集めるとするかの」
「おう! 今度は西だな? レヴィオに伝えてくるよ」
タブルスが元気良く返事して、そのままレヴィオにも伝えに行った。
「タブルス、心配してたけど元気みたいでよかったわね」
「うん。カナンたちもありがとね。僕らのことに巻き込んじゃったみたいで申し訳ないけど…」
「まあ乗り掛かった船だし、イケメンのいない世界なんて嫌じゃない! それは阻止しないとね!」
「罪もない動物たちも被害に合っているなら、僕だって放って置けないよ!」
「まあ、これは私たちにしか出来ないことでしょうしね。リスイアの仲間も助けてあげないと」
カナンとアビイ、リオもリスイアに協力を示した。
「本当にありがとう、みんな…」
みんなは涙ぐむリスイアを抱き締めた。
馬車は西の果てを目指して進んでいた。
地図ではこの先に何があるか指し示すものはない。
行ってみるまでわからない謎に満ちた場所だった。
ザミアたち一行は、休憩を取ったり修行を行いながら数日かけて、やっと目的地付近の村を見つけた。
馬車を降りた一行は、手分けして情報収集と食材の補充などを行っていた。
「リスイアたちはどうだった?」
「うーん。あんまりいい情報は得られなかったな」
「そうですね。もう少し大きな町で聞き込みした方がいいようです」
「ねえ! ここから少し南に下った所に、港町があるって! そこなら情報得られるんじゃない?」
カナンとアビイ、リスイアとタブルス、そしてレヴィオが集まっていた所に、リオが駆け寄ってきてみんなに伝えた。その後、ザミアに報告し、更に南へと向かうことにした。
更に半日ほど馬車で向かった南西の地、港町ネルケに一行は到着した。
陽も落ちていたので先に宿を確保し、食事処へと向かった。
この地には多くの漁船や観光船が航行し、またそれらの船を狙った海賊なんかもいるようだった。
リスイアたちはなるべく目立たぬように帽子やフードを被ったり、軽く変装したりしていた。
食事処に入り、テーブル席について店員を呼び止める。
「ああ、すまぬのう。この辺でオススメの料理を。あと酒と水を」
「あいよ」
ザミアがまとめて適当に注文した。
夕食の時間帯なので店は賑わい、あちこちで楽しそうな会話が飛び交っている。
「ふう…やっとマトモな飯が食えるな」
「あら、私の料理に何かご不満でも?」
「そ、そんなことは言ってないだろっ!」
「まあまあ。少ない食材でできる料理も限られてるしね」
「そうよ! 私だって頑張ってるんだからねっ」
タブルスとカナンの夫婦喧嘩にアビイが仲裁しようとしている。
「ホッホ。最近はカナンの料理も食べ飽きたからのう。いろんな町の料理や食材を知るのも勉強のうちじゃて。さあ皆の者、今日はたらふく食べて、明日は朝から情報収集じゃ」
「おう!」
大皿に盛り付けられているのは、魚介類をメインとしたマリネやサラダ、刺身、スープやソテーなどだ。
いつもの肉や川魚、山菜以外の料理は久しぶりだったので、みんなウキウキしながら料理に手を伸ばした。
「うめー!! なにこの味付け??」
「む…なかなか美味しいわね」
「このスープも良い味出してるー!」
口々に感想を言いながら黙々と食べている。
「この料理、リオの町のとちょっと似てるね」
「そうね。うちの町も港町だったからね。だけど、この香辛料は珍しいわね」
「こ、この大きなザリガニは食べられるのでしょうか…」
リスイアがリオと話している隣で、レヴィオが大きな海老を指して青ざめていた。
「これはタスアクスね。海にいる大きな海老の仲間で、なかなか美味しいのよ?」
カナンが切り身を一つ食べて見せる。
「うん! 美味しいっ」
レヴィオは恐る恐るその海老を突つく。
タスアクスはピクッと動いた。
「ギャー!!! い、生きてるじゃないですかー!!」
「それだけ活きが良いってことよっ! ほら、これなら大丈夫だって」
カナンがレヴィオの皿に、タスアクスの焼き物を乗せる。
レヴィオはじーっと見つめてから、思い切って口に放り込んだ。
「!! 美味しい…」
「ほらねっ。ほら、アンタたちも遠慮してないで食べなさいよ!」
「は、はい」
カナンはいつの間にかみんなの皿に、どんどん料理を取り分けていた。
「カナンってさ、なんかお母さんみたいじゃない?」
「あれはお母さんじゃなくて、世話焼きなオバハンだな」
「タブルス…なんか、言った?」
「う、ぐっ」
リスイアとタブルスがコソコソ話していると、聞こえたのかカナンがタブルスの口に串焼きを突っ込んだ。
「ホッホ。愉快愉快」
ザミアは酒が入り、二人を見て面白そうにしている。
店の奥の席では、怪し気な二人の男が、チラッとこちらを見ながらヒソヒソと話していた。
ザミアの目が一瞬、鋭く光る。
店内を見回してみると、観光客らしき者、この町の常連らしき者、そしてそれ以外の影の臭いがする者も混ざっているようだった。
(ふむ…何やらキナ臭い感じじゃのう)
「ふう、お腹いっぱい」
「なかなかの味だったわねー」
アビイはパンパンに膨れた腹を摩り、カナンも満足そうにしていた。
食事が終わり、みんなは宿へと戻ろうと歩いていた。
ザミアは近くの酒場に行ってくると言って出かけていた。
夜の潮風が心地良く、このまま宿でグッスリと眠れそうだ。
これから向かう先にどんな危険が待ち受けているかなど、この時は誰も予想していなかった。




