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神々の住処

(いにしえ)の時、神々が住まう山があった。

人と神は一時、同じ土地に暮らしていたが、ある時、欲をかいた人間たちに神が怒った。

二度と過ちを犯さぬように体を二つに引き裂きバラバラにして、凍えた大地を暖めていた火を取り上げた。

それでも尚、人間たちは完全体になって神を脅かそうと火を奪い、武器を作り、戦争を起こしてこの世界を破壊し続けた。


人間たちが生み出した兵器、機械人間たちもまた人間が神に抗ったように、人間たちに反逆した。

そして、機械人間に支配され滅ぼされた国もある。

神は天へと帰る時、希望を残して去ったという。

神の力を与えられた神と人の架け橋。

人間の最後の善意を信じて…。


七色のステンドグラスから光が差し込む。

その光の指した場所に立っていた神官は、ゆっくりと目を開けた。

間も無く、やってくるだろう。神に選ばれし子らよ。私は伝え導く者。

あれからどのくらいの年月が経っただろう。この世界はもう終わりを告げるのだ。

最後の唯一の希望。この世界を、闇に落ちたあの子を救えるのはきっと彼らだけなのだから…。


一台の馬車がやってきた。

この村に外部から人が訪ねてくるのは、いつ以来のことだろうか。

あの霧を解いたということは、私が待ち望んでいた客人たちだろう。

この時を待っていた。私の役目も間も無く終えることが出来る。

だが、あの子はもう戻れぬだろう。悲しみが深すぎる。

私は最後の希望を託して信じるしかないのだ。


霧を抜けると山岳地帯が現れた。これ以上先へは馬車は通れないようだ。

「ザミアさん、どうする?」

リスイアは辺りを見回して尋ねた。

「タブルスよ、お主らの村はこの辺りなんじゃな?」

「ああ。見覚えがある。確か、この山の中腹にあったはずだ」

「皆、ここからは歩いて行くぞよ」

ザミアが皆に声をかけた。

「え〜!! 歩くのー?」

「ここで待っておってもええがのう。儂もここいら一帯は未開の地じゃ。なにが出るか分からんがのう」

「いっ、行くわよっ、もう!」

カナンが急いで馬車から降りた。

「すまんが、ここで待っておれ」

ザミアは馬たちを撫でながら、側に餌と水を置いた。

「ヒヒーン!!」

ロフィスは、行ってらっしゃいとばかりに声をあげた。


背の低い木がポツポツ生えているだけで、岩や石ばかりの乾いた山岳地帯を歩いていく。

「こんなところに人が住めるの??」

「中腹には川や泉が僅かにあってさ、そこに代々住んでいる人たちがいたんだ」

「へー」

カナンはタブルスに掴まりながら、不安そうな面持ちでなんとか付いていく。

一行が歩き出してしばらく経つと、少し平坦な場所に出た。

何か建物らしき物が見えた。教会のようだった。

辺りにはそれ以外の建造物はなぜか見当たらなかった。

「あれだ! 俺たちが育った教会だよ!」

タブルスが山間に現れたその教会を指差した。

「あれが、僕らの故郷…」

人を避けたようにひっそりと佇むその建物は、何かしらの力を感じた。

「あれが、噂の教会か…では、訪ねるとしよう」

「うん…」

みんなは緊張した様子でその教会へと向かった。


リスイアは教会の前に立つと、前に見たことがあるような感覚に陥った。

しかし、どこかが違う気もする。他にも子どもたちがいたような…。

中に入ればきっと何か手掛かりが得られるだろう。

「じゃあ、いいかみんな? こんにちはー」

タブルスが先頭に立って扉を開け、中へと入って行った。

中は薄暗く、僅かにステンドグラスからの光が差し込んでいる。

「こんにちはー! 誰かいませんか??」

タブルスの声が響く。

一行が中に収まると、一番奥の方に人影が見えた。

「もしかして…神官様?」

リスイアはなぜかそう口に出していた。

「…おかえり。我が子らよ」

そこには栗色の長いウエーブがかった髪で、白いローブを身に纏う若者の姿があった。


「神官さまっ! 元気だったか?」

「…ああ。タブルスも元気そうだね」

タブルスは神官と呼ばれた若者に飛びついて挨拶した。

「皆様も、ようこそお出でくださいました」

神官は一礼する。

ザミアや皆もそれに応えるように一礼した。

「突然、このように大人数で押し掛けて申し訳ない。儂はザミア。そして、ここにいる者らはタブルスやリスイアたちと共に旅をしている仲間です」

「ありがとうございます。貴方がタブルスとリスイアを救ってくださったのですね」

「ああ。何もかもお察しでしょうかの」

「貴方たちがここに来るのを待ち望んでおりました。さあ、お掛けください」

みんなは顔を見合わせて、教会の長椅子に腰掛けた。


神官は中央に立ってみんなの顔をじっと見回した。

「やっと集まったのですね。皆様」

「はい。まだ力に目覚めていない者もおるがの」

「まあ、仕方のないことでしょう。時が経つにつれ、記憶とは失われていくものですからね」

「ねえ、何が始まるんだろう?」

「さあ」

「静かになさいな」

カナンがアビイにひそひそと尋ねると、リオが制した。

「貴方方は、ここがどういう場所か知っていらっしゃいますか?」

「儂は噂程度じゃがのう」

他のみんなは答えないようだったので神官は話を続けた。

「分かりました。貴方方が生まれる遥か昔、人と神が誕生した頃の話です」

みんなは真剣な表情で神官の話を聞く。

「この大地にはたくさんの種族が生まれ、仲良く暮らしておりました。しかしそれは長く続かず、ある時、神の力を欲した人間たちが神の力を奪おうとしました。そして遂に、神の逆鱗に触れたのです」

みんなの表情が変わっていく。

「それで…人間はどうなっちゃったの??」

カナンが物語の続きが気になるようで神官に尋ねた。

神官は宣教師のようにみんなへ向かって話し出す。

「神の怒りによって人間たちは、真っ二つにされてしまいました。そして神はこの地を離れ、天へと帰って行ったのです。神がいなくなった世界を人間たちは支配しようと、今度は人同士で争いを始め、大地は荒廃していきました」

「ふむ。今の世界の現状と同じじゃな…」

「まあ、今はその人間たちが作った機械人間に支配されそうになってるし…哀れなもんだな」

「それでも神は人を信じずにいられなかった。そして、神はある人に希望を託したのです」

「希望??」

リスイアは気になって尋ねた。

「そうです。それは貴方方の中に眠っています」

「えっ?? 僕らのって、もしかして…」

「そうです。イディアペリスと呼ばれる子たちに秘められた力です」

「!!!」

みんなは驚愕した。但しザミアを除いて。

「ザミアさん! もしかして、だから僕たちを探してたの??」

「まあ、そういうことじゃな。しかし、儂の研究ではそこまでしか分からんかった。だからこそ、旅に出て更に調べようと考えたのじゃ」

「私たちにそんな力が??」

「戸惑うのも無理もありません。その力は目覚めさせて活用できるようにしないと何も役立たないのですから」

「一つ尋ねたいのだが、宜しいでしょうか?」

黙って聞いていたレヴィオが発言する。

「どうぞ、遠慮なく」

「我らの力が目覚めたとして、それはどのようなことが起こるのでしょうか?」

「…それは、使い方次第ですね。例えば、邪悪な者がその力を手に入れたら、世界は破滅するでしょう。しかしもし、その力を正しく使うのなら、それは神の力に等しい奇跡の力となるでしょう」

「なぜ、そんな力が私に託されたのだろうか…」

「それは神にしか分かりません。神は人を今一度信じていいのか試しているのでしょう。貴方方は皆、何かしら失ったものや辛い過去があるのではないですか? その怒りや憎しみに取り込まれるのか、それともその試練を乗り越えて前に進むのか、神は見守っておられるのです」

「…」

みんなは思い当たる節があるように、それぞれ頭を巡らせていた。

時は進み行く。自分たちは何を為すべきかと、それぞれが心に問う。

この腐敗した世界を壊すのか、それとも救うのかと。

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