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世界のどこかで

港町トノスに来てから数日目の朝。

リスイアは海岸沿いを歩いていた。

潮風が柔らかく髪を撫で、ほんのり湿った汗を乾かしていく。

「気持ち良い風だな〜」

青い海や空を見ると、心が何故か落ち着くようだ。


「リスイア殿ー!!」

「んっ?」

遠くから背の高い人と低い人の二人組みが、こっちに向かって走ってくる。

よく見ると、朝見かけなかったレヴィオとリオのようだった。

二人はリスイアに追いついて息を整えた。

「おはようございます、リスイア殿。リオ殿がですね、私たちと共に旅に出たいと仰りまして。これから皆に知らせに行こうとしていた次第です」

「そうなの?!」

「ねえ、リスイア、私も行っていいでしょ?」

「ああ、僕はリオと一緒に旅出来ると嬉しいけどさ、あのお花畑はいいの?」

「うん。元々借りてる土地だったからね。あの花畑も譲ろうと思って」

「そうなんだ。みんなもきっと喜ぶよ。じゃあ、ザミアさんたちに報告しに行こう」

「うん!」


リオを連れてリスイアとレヴィオは、宿へと戻った。

「マジで?!」

「わーい!!」

「ホッホ。可愛いお嬢さんは大歓迎じゃわい」

「ちょっと! ここにも世界一美しい女性がいるでしょ?」

「ほらね、大歓迎でしょ?」

みんなは口々にリオを歓迎してくれた。

「改めまして…。私、リオ。みんなと出会えてとっても嬉しいですっ。これからもよろしくねっ」

新しい仲間が加わって、皆は拍手で喜んで迎えた。

それから足りない食材や防備を整えて旅立ちの準備を行い、明朝に出発することとなった。


「この町ともお別れね…」

リオは夕暮れの海を見ながら今までのことを振り返り、それから明日からの新しい一日のことを考え、不安と期待を抱いていた。

「なに黄昏てんの?」

「カナンさん…」

顔を上げるとカナンがこちらを向いて立っていた。リオの隣に来て腰を下ろす。

「よいしょっと。夕暮れ時の海ってのも、なかなかロマンチックじゃない」

二人は地平線に沈んでいく夕陽を眺めていた。

「私もさ、リスイアたちに会うまではポルカリートを出たことなくてさ。今の生活もそれなりに楽しかったけど、なんか物足りなくてね。だからね、私も貴女と同じなの。新しい世界を見てみたかったんだよね」

「カナンさんも、その…髪の色で虐められたりしたの?」

「小さい頃はね。けど私、案外その辺の男の子たちより強かったからさ。まあ、面倒だから朝か夕方しか出歩かなかったのもあるけどねー」

「そうなんだー」

「世界にはさ、うちら見たいな変わり者でも受け入れてくれるところがあるんだって知ったらね、少しだけ心が軽くなったの。それに今はリスイアたちもいるしね」

「うん」

「歓迎するわ。明日からヨロシクね!」

「ありがとう、ヨロシク!」

カナンとリオはお互いに手を差し出して握手した。


ザミアは酒場で一人酒を飲みながら、ポツリと呟いた。

「これでやっと揃ったのう…。あの森に行くか…それとも…」

「司令官。各地に派遣した隊長から連絡がありました。ここ最近の異常気象と砂漠化が進み、民の生活に影響を与えている地域が増えてきたそうです」

見知らぬ男がザミアに話しかけた。

「コレ! 外ではザミアと呼べと言うたじゃろ。…それで、あの国の状況は?」

「それが、なにやら国民を刈り集めて作らせているようで…」

「ふむ…」

「軍事兵器かそれとも…只今、潜入組が捜査中ですので、今しばらくお待ちください」

「わかった。くれぐれも見つからぬように気をつけるのじゃぞ」

「了解!」

男はすぐにその場を去った。

世界の時計が着実に進んでいるようだ。我らも急がねばならん。

希望はまだある。必ず見つけなければ。世界を救う鍵を…。


その頃、工業都市アダルナピスでは、機械人間たちに監視された人間たちが、朝晩問わず交代で働かされていた。

「サア、イソグノダ! ワガオウノタメ、ハタラケ!」

「うう…」

バタンッ!

年老いた男が一人倒れた。

「ナニヤスンデイルノダ! オイ、コイツツレテケ!」

「やめてください! まだ働けますから!!」

倒れた男は必死に起き上がろうとしている。

「ウルサイ! イケ!」

「頼む! 嫌だ! やめてくれー!!」

ジジジジ…と無機質に動く機械音だけが響き、なんの遠慮もなく男を連れ出していった。

男は叫び続けるが、誰も止めることができず、ある部屋へと連れて行かれる。

「イヤだあー!!! 助けてくれー!!!」

そこに入っていった者は誰一人帰って来ることはなく、詳細を知る者は誰もいなかった。


宿で休んでいたリスイアは、アビイと遊んでいたタブルスに尋ねた。

「ねえ、タブルス。僕らが生まれたところってさ、どんなところだったの?」

「ん? 俺らの生まれ故郷か? 俺たちの故郷はな、遥か北のポスオリンって小さな村だったよ」

「そういえば、リスイアとタブルスは幼馴染だったっけ?」

「ああ。って言ってもな、俺らはその村の教会で他の子どもたちと一緒に育ったんだよ」

「そうなんだー。それで、その村の他の子たちとは会っていないの?」

「ん? まあな。遠いとこにいるしな…」

タブルスは何かを思い出しながら俯く。

「僕、その村に行ってみたいんだけど…」

「えっ? 行くってお前、かなり遠いぜ? それにあの村は…」

「この首飾りなんだけどさ、何か大切な物な気がしてさ」

リスイアは常に身に付けていた花の首飾りを取り出して見せた。

「それって…もしかして、アイツの物じゃ…」

「見覚えがあるの?」

タブルスが難しそうな顔をしながら思い出そうとしている。

「うーん…確かにアイツが付けてたような気が…」


「リスイア…お主それは…」

ザミアが帰ってきて直ぐ、リスイアに話しかけてきた。

「ああ。これさ、僕が記憶を失った時に唯一身に付けていた物でさ、なんか気になるんだ」

「すまんがちょっと見せてくれんかの」

「えっ? いいけど…」

ザミアはリスイアから花の形の首飾りを見せてもらった。

七つの透明な宝石が小さく散りばめられていた。

「それで、これはどこで…ああ、記憶がないのじゃったな」

「そうなんだけどね、前にね、その首飾りを神官様みたいな人から貰った夢を見たことがあって。それで、もしかしたら、僕が生まれた場所と何か関係があるんじゃないかなって、ずっと気になってたんだ」

「ふむ…なるほどのう。タブルス、その場所はどこなのじゃ?」

「遥か北のポスオリンって村だよ」

「!! まさか、お主! あの村の出身じゃったのか!!」

「ああ。ザミアさん、あの村のこと知ってんの?」

「まあな…そうか…」

ザミアは何やら深く考え込んだ。

「そうじゃのう…何か手掛かりがあるやもしれんし…。リスイア、じゃあ行って見るかの?」

「え?! いいの?」

「うむ。仲間集めは一段落ついたとこじゃしのう」

「おい、だけど、あの村にはもう…」

「儂もちょっと調べたいことがあるのじゃよ。タブルスよ、ええかのう?」

「ふう…まあ、しょうがねえか。だけどなリスイア、あんまり期待するなよ?」

「ん? うん…」

タブルスはそれ以上リスイアには言えなかった。

あの村に何が起きたのかを…。

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