表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/59

怒りと痛み

人間とは同じものを仲間と呼び、違うものを排除する生き物だ。

我は何故生まれたのか。

望んでこのような体で生まれた訳ではなかった。

母親は我を産んでからすぐに別の男と去った。

我は教会の前に捨て置かれていたそうだ。

勝手に産んでおいて勝手に捨てる。血の繋がりなど無意味だ。


教会には我と似た境遇の子どもたちがいた。

戦争で親を無くした者、親に虐待を受けた者、周りから嫌われ出てきた者など、皆どこか孤独で何かを求めていた。

この世は弱肉強食だ。

知恵のある人間もまた、ただの動物だ。弱い者はいつでも標的にされ虐げられる。

我は強さだけを求めた。自分を守る術として。そして、弱き者を救う為に。


ある日、箱に捨てられていた子猫を拾った。

自分の食事を半分分けてやった。その子猫は我の守るべき子だった。

そしていつも通り、その子猫に食事を持って行こうとした時、血まみれの子猫を抱く子がいた。

その子は(うずくま)って泣いている。

「おい! どうしたんだ?!」

「僕は…止めようとしたんだ! なのに、こんな酷いことを…」

「おいっ! 誰だ!! 誰がやった!!」

「町の大人たちだよ…僕らが嫌われるのはいいけど、この子にはなんの罪もないのに…ううっ」

「ふざけやがって…」

「ダメだよ、ノア!! 憎しみを持ってもこの子はもう、戻らないから…」

ぐったりとした子猫は、ボロボロになって眠っていた。

我は爪が食い込むほど拳を握り締め、怒りと憎しみで血が滴っているのも気付かなかった。

「許さん! 絶対に…」

「ダメだよ、ノア! やめて!! 行かないでー!!」


ベッドに寝かされていたリオは、ハッと目を見開き目を覚ました。

「あっ! 気が付いた? 大丈夫??」

夕陽色の髪の女性が心配そうに顔を覗き込んでいる。

「貴女は…」

「私、カナンよ。ホントに大丈夫?? みんなも心配してたのよ。ごめんなさいね。無理に占いなんてお願いしちゃったから…」

「あ、そっか…私、占いしてたんだったわよね」

「ちょっと待ってね。リオが起きたってみんなに知らせてくるから」

そう言うと、カナンは部屋を出て行った。

そうだ。夕食に招待されて恋占いするって言って、みんなの占いしてる途中だったんだ。

占い自体はそんなに力使わないはずなのに…。意識を失ったのは初めてだった。

「リオ!! 気が付いたんだな!」

「大丈夫ですか? リオさん」

タブルスとアビイが先頭に立って顔を見せにきた。

「具合はどうじゃの?」

「ああ、もう大丈夫よ。ごめんなさいね、驚かせちゃって」

「誠に申し訳なかった。無理に占いなどをお願いしてしまい…」

ザミアとレヴィオも部屋に来てリオに声をかける。

「ううん。今までこんなことなかったんだけどね」

「ごめんね、リオ。遅くなっちゃったけど、僕が家まで送って行くよ」

リスイアも責任を感じているのか、申し訳なさそうに言った。

「そうじゃのう。リスイア、頼んだぞ」

「はい」


リスイアとリオは、町外れにあるリオの家に向かって歩いていた。

「ごめんね、送ってもらっちゃって」

「いや、僕こそ無理させちゃったみたいでごめん」

「…ねえ、貴方ってさ、小さい頃はどこで過ごしてたの?」

「うーん。実はよく覚えていないんだ。アダルナピスって街で倒れてた時に記憶を失ったみたいでさ」

「そうだったのね…。なんか、ごめんね」

「ううん。いいよ。思い出せないってことは、あんまりいい思い出じゃないのかもしれないしさ」

「だけどさ、貴方の生まれ故郷には行ってみたいんじゃないの?」

「まあ、そうだね。機会があればでいいよ。タブルスも同郷みたいだしそのうちでね」

「そっか。あ、この辺でいいわ。もうすぐそこだし。今日はありがとね」

「ううん。こちらこそありがとう。僕たちもう少しこの町にいるから、いつでも遊びに来てね」

「わかったわ。じゃあ、お休みなさい」

「おやすみー」

リスイアとリオは、手を振って別れた。

あの夢はもしかしたら…と思ったが、リオには口に出せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ