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過ちからの出発

リスイアが回復した頃、宿の人から声を掛けられた。

「あの、お客さん。外に訪ねて来られた方がいるんですが…」

「ん? 誰だろ??」

「さあー」


宿の外へと出てみると、リスイアを(さら)ったあの若者レヴィオがいた。

「なんだお前。まだ俺たちに何か用なのか?」

タブルスがキツめに言うと、レヴィオは腰を折って深々と頭を下げた。

「この度は誠に申し訳なかった…」

一同は意外な態度に黙って見つめている。

「許しを請う為に来たのではない。私の自分勝手な態度を詫びたくて来たのだ。迷惑を掛けて本当にすまなかった」

リスイアたちはどう返事していいのか考えあぐねる。

「旅の無事をお祈りする。では…」

荷物を抱えたレヴィオは、悲しげに立ち去ろうとした。


「…待ってよ。どこか行くの?」

まだ本調子ではないリスイアが、アビイとカナンに支えられながら声を掛けた。

「旅に出るのだ。ここにいては気分が晴れず、また誰かを傷つけてしまうかもしれぬ…」

「もし良ければさ、僕たちと一緒に行かない?」

リスイアの言葉にレヴィオだけではなく、ザミアたちも驚いた。

「おい、リスイア、いいのか? お前を攫った奴なんだぞ?」

「そうだよ! アンタを縛り付けようとしたんだよ?」

タブルスとカナンが反論する。

「分かってるよ。レヴィオのやり方は間違っていたけど、今なら僕も分かるんだ。誰かを失うことの辛さがね。そして、頼ったり甘えたりしたくても出来ない孤独をさ。僕だってみんながいなければ、一人で耐えられなかったと思うよ」

「リスイア…」

その場の者たちはリスイアを見つめる。

「ホッホ。そうじゃのう。人は誰しも孤独や悲しみを抱えながら生きておるものじゃ。側に居てくれる仲間がいるだけでもきっと支えになるじゃろう。まあ、無理にとは言わぬが、ここにいる者たちもまた目に見えない傷を抱えておる。決してお主だけではないのじゃよ」

「そうだよね。僕もリスイアたちのお陰で、人生再出発できたしね」

ザミアとアビイもリスイアの意見に賛同した。

「まあ、私も一人で居ても退屈だったしー、リスイアがいいなら私は別にいいけど…」

と、カナンも。じっとレヴィオを睨んでいたタブルスは、

「…ホント、リスイアはお人好しなんだからよー。まー、今度問題起こしたら、俺がブン殴ってやるよ」

「これ! 暴力はいかんぞ!」

「分かーってるよ!」

などとザミアに窘められながらも、渋々承知したようだった。

「リスイア…皆…こんな私でも良いのか?」

「間違いは誰でも侵すさ。大事なのはこれからどうするかだろ?」

リスイアの言葉にザミアたちも頷く。

「皆…すまぬ…有難う…」

レヴィオはみんなに許されて泣き崩れた。

こうして、レヴィオも仲間として迎えられたのだった。


レヴィオは立ち上がると、改めてみんなに礼を述べ、一度家に戻って準備をしてくると言い残して去っていった。

その間にザミアたち一行も旅支度を整えて、明朝にこの町を出ることとなった。

「ねえ、そういえばさー、カナンさんも何か特別な才能ってあるの?」

何気なくアビイが尋ねる。

「そうねー、私は歌ったり踊ったりして楽しく過ごしてるだけで男が寄ってくるわね。この町でも良い男見つけたかったけど、イマイチだったしなー」

「えっと…カナンさんの旅の目的って、もしかして…」

「そうよ! 世界中旅して、私に相応しい良い男を見つけてやるんだからー!!」

「…」

一同は唖然とした。

「ホッホ。まあ、それぞれにやりたいことがあって良いじゃろう。儂も昔はナイスガイだったんじゃがのう…」

「まー、アンタ達も体鍛えて、私を敵から守れるくらいのタフガイになりなさいっ」

「別にカナンさんにモテなくてもいいけど…」

タブルスが呟く。

「アンタ、なんか言った?」

「いえ、何も…」

「嘘おっしゃい!」

カナンがタブルスを締め上げる。

「ちょーっと、暴力はんたーい!」

「これは愛の鞭よっ」

アビイとリスイアはクスクス笑っている。

「これ! 騒ぐ元気があるなら、酒でも走って買ってこい!」

またいつも通りの笑顔とドタバタが戻ってきて、リスイアはホッとしていた。


出発の日の朝、連日降り続いていた雨も上がって、久しぶりの晴れ間が見えていた。

朝日に照らされ、薄っすらと虹もかかっている。

「あー! 虹だ!!」

「ホント?!」

「ほお。旅立ちに相応しい良い朝じゃのう」

「おい! どこだよ!!」

それぞれに言葉を発しながら空を見上げていた。

「ん? ねえ、アレって…」

リスイアが遠くからこちらに向かってくる影を指差した。

大きく左右に手を振る人影と、大きな物影が見える。

「アレは…レヴィオか? なんか連れているっぽいが…」

レヴィオが近づいてくると、荷台のある馬車を連れてきたようだった。


「おはよう、皆。お待たせした」

「ちょっと、これ、馬車じゃない? どうしたの??」

カナンがびっくりして尋ねる。

「父上に頼み、商団で使っていた物を頂いたのだ」

「良いのかのう、こんな立派な物を…」

「遠慮はいらぬ。これは私からの詫びと、皆への感謝として受け取って欲しい」

「それなら、まあね…人数も増えたことだし、遠慮なく使わせて頂きましょうよ」

カナンは早く乗ってみたくてウズウズしているようだ。

「じゃあ、ロフィスを先頭にして、馬車に荷物積もうよ」

アビイはロフィスを馬車に繋げて、タブルスとリスイアは荷物を運び込んだ。

こうして一行は、馬三頭と六人の仲間たちという大所帯になって、更に旅を続けるのだった。

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