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天色の星

リスイアが起きた時、タブルスとザミアはまだ寝息を立てていた。

「ザミアさん、いつの間に帰ってきたんだろう…あれ? アビイは??」


厠にもどこにもいなかったので、散歩にでも出かけたのだろうか。

街に出ると朝焼けの空に微かに霧がかかっていた。

昨日とはまた打って変わって、朝露に光り輝く街並みが美しい。

人影は少なく、パン屋の香ばしい匂いが漂い、犬を散歩させている人が通り過ぎた。

「アビイはどこに行ったんだろ…。そんなに遠くまでは行っていないと思うんだけどな」

そう考えながらあちこち見て回ると、塀の上にいる猫に向かって話しかけているアビイがいた。

「ふんふん。ニャルほどねー」

「おい、アビイー。 こんなところで何してるんだよ」

「あ、おはよーリスイア。…ん? ああ、またね」

猫はニャーンと一声鳴いて去って行った。

「タブルスのイビキが(うるさ)くてさ、目が覚めちゃったんだよー」

「なんか今、猫と話してるみたいだったけど」

「うん。この街のこと教えてもらおうと思ってさ。さっきそこで会ったんだ」

「ふーん。それで、なんて言ってたの?」

「まあ主に近所の猫の愚痴だったけどね。後は、みんな陽気で楽しい街だってさ」

「そうなんだー。いいなあ、僕も動物達と話せるといいんだけど」

「んー、だけどね良いことばかりじゃないよ。生き物が多いと、いろんな声があっちこっちから聞こえすぎて頭痛くなっちゃう時もあるしね」

「そっか…それも大変だね。じゃあそろそろ、みんな起きてくるから戻ろうか」

「うん!」


宿に戻るとザミアが身支度を整えていて、タブルスはまだぐっすりと寝ていた。

「おお、おはようお二人さん。朝の散歩かね?」

「おはよー、ザミアさん!」

「おはようございます。ザミアさんも朝早いですね」

「ホッホ。朝の早起きはもう癖みたいなもんじゃよ。さて、この寝坊助も起こして朝飯に行くとするかの」


まだ眠そうなタブルスをなんとか着替えさせ、引きずりながら朝食に出かけた。

少しずつ人が出てきて、店先の外のテーブルでは優雅に朝食を囲んでいる人たちもいる。

「ザミアさん、昨日は遅くまでどこ行ってたんですか?」

「ん? ああ、ちょっと飲み足りなくてのう。もう一軒飲みに行っておったんじゃ」

「まあ、久しぶりの街だしな」

「ねえ、今日は何するの??」

アビイが楽しげにパンを頬張りながら尋ねる。

「今日はの、各自で動いて欲しいのじゃ。アビイには言っとらんかったがの、儂らは訳あって儂らと同じ有色の髪を持つ者を探しておる。もしその者についての情報があれば、集めて欲しいのじゃよ。但し、深入りはするなよ? こんな真昼間に物騒なことはないと思うのじゃが、十分に気をつけて行動するのじゃ。わかったな?」

「おっしゃー! やったるぜー」

「あ、すまんがタブルス。アビイはまだ幼いから一緒に動いてくれんかの?」

「そっか。そうだな。よし! じゃあ、飯食ったら準備して行こうぜ、アビイ!」

「うん!」

「…タブルスはちょっと不安じゃからの。アビイといいコンビじゃろ」

ザミアが小声でリスイアにこっそり耳打ちした。

「そうですねっ」

「ん? なんか言ったか??」

「いや。今日も張り切って頑張ろう!」

「おう!」

「オー!」

「ホッホ。何かあったらすぐに知らせるのじゃぞ。儂は度々、宿に戻っておるんでのう」

「分かりました」


夕食の時間までには戻ることを約束して、四人はそれぞれ外出した。

リスイアは気になることがあり、商店街へと向かった。

店が立ち並ぶ通りに、小さな本屋を見つけた。

中に入ると、学生らしき青年や若い女性、帽子を被った小太りの男性など様々な人たちがいる。

街ではいつも目立たないようにフードを被るようにしているが、気温の高いこの街では変に怪しまれる為、先ほど購入したツバ付きの帽子を被っていた。

髪の毛はなんとか丸めて帽子の中に隠している。


(えっと…歴史書は、と…)

リスイアは記憶が未だに戻らない為、せめてこの世界の知識を補おうと考えていた。

記憶は戻るか戻らないか分からない。

何かキッカケになることや、これからの旅の助けになることなどがあれば仕入れて置きたかったのだ。

リスイアは手頃な歴史書を一冊手にして会計へと向かった。

その途中、チラッと目にした本が気になり立ち止まる。

(ん…これは…)

天色(あまいろ)の星』というタイトルだ。

中をパラパラとめくってみると、なんだか不思議な話が書かれていた。

綺麗な水と空気に包まれ、多様な生物が存在する星の話だ。

その星では多種多様な生物の生存争いが行われ、遂には滅びたと言う。

その滅びた理由については詳しく紹介されていなかった。

ただ、その星で見られる生物の姿や生態などについては詳細に記述があり興味深い。

この世界にいる生き物と似ている生物もチラホラ見かけた。

「へえ…面白そうだな」


「毎度ありー」

リスイアは単なる好奇心で、ついでにさっきの本も購入した。

世の中には知らないことが山ほどある。

偉人たちの経験や知識は、記憶のないリスイアにとっては有益な情報源だ。

何処かでじっくりと読み込みたい。

リスイアは、新しい知識を得る喜びに期待で胸が高鳴っていた。

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