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プロローグ

 プロローグ


 輸送艦内にけたたましいアラート音とともに放送が鳴り響く。

「間もなく、降下目標地点に到達する。各員、最終準備に係れ」


 僕はリュート。

 リュート=グッドホープ。連邦の新米兵士として、今日初出撃する。


「おいリュート、味方のケツを撃つんじゃねーぞ」

 クルムハイツ先輩が茶化すように言う。


「大丈夫だ……。訓練通りにやれば、問題ない」

 巨漢のヴァン伍長がぼそりとつぶやく。


「野郎ども、おしゃべりはそこまでだ」

 ケイマン隊長がビシッとたしなめる。


「いくぞ、全機出撃!」


――時は連邦歴436年、皇国歴1017年。

 連邦による11回目の「クロスゲート奪還作戦」が今まさに始まろうとしていた。


 クラトス機械都市連邦と神聖バームガルド皇国は、すでに400年以上にわたり戦争を続けてきた。


 機械と魔法、民主共和制と絶対王政。互いに相反する対極に位置するような超大国同士の戦争は、とどまるところを知らなかった。


 しかし15年前、転機が訪れる。


 皇国に突如現れた「英雄」が、圧倒的な力で連邦の最重要拠点である要塞、「クロスゲート」を奪ってしまったのだ。


 連邦は領土を大きく後退。

 以後必死に「クロスゲート」の再奪還を試みるが、1度も成功していない。


 連邦は皇国にじわじわと追い詰められつつある。


――「おいリュート、ボケっとするな!」

 ケイマン隊長の喝でハッと我に返る。


「すみません。隊長」

「来るぞ! トカゲ野郎だ」


 僕は言われた方角を見る。コウモリのような翼を広げた醜い怪物が、空を黒く塗りつぶすようにして迫ってくる。


 皇国のドラゴン部隊だ。


「落ち着いて陣を張れ。電磁フィールド展開。対空ランチャー準備!」


「大丈夫だぜリュート、まだ距離がある。のんびり準備しよーや」

 ビビる僕にクルムハイツ先輩がそう声をかける。


「は、ハイ」


 しかしそうは言ったものの、ジェット機のような速度で突っ込んでくるドラゴンの大軍を前に冷静ではいられない。


 もたつきながらようやく準備が完了すると、すでに敵は目の前に迫っていた。


「攻撃開始。打て―!」

 隊長の合図で対空ランチャーを一斉に発射する。


 耳をつんざくような爆音と衝撃。

 立ち上がる粉塵で、敵に当たっているかどうかもわからない。


「ヤベぇ、一騎抜けてきやがった!」

 先輩の声が聞こえたのとほぼ同時に粉塵をかっ切って一匹のドラゴンが突っ込んできた。


 そいつは僕の目の前でふわりと着地し、品定めをするように僕を眺めている。


 黒く光るウロコに不気味な黄色い目。

 ギザギザの口からは炎が見え、鼻からはもうもうと煙が吹き出している。


 機械文明である連邦にとって、明らかに「異形」であるドラゴンが僕の目の前にいた。


「バカヤロウ! リュート動け! ただの的だぞ!」

 隊長の怒鳴り声が聞こえるが、まるで金縛りにあったようにピクリとも動けない。


 ドラゴンがゆっくりと口を開き、ファイアブレスを吐くために力をため始める。


「クソっ」


 ヴァン伍長がレーザーブレードを起動して僕を助けようとするが、ドラゴンのしっぽが鞭のようにそれをはじいた。


「――ッ! ――ッ!」

 クルムハイツ先輩が何か叫んでいるが、もう何も聞こえない。


 ファイアブレスの光で目の前が真っ白になり、そして真っ暗になった。


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