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おっさん実験する 1

実験。

それはどこまでプレイヤーに抗えるのか。

気がついたら、思ってもいない場所にいた、というのはどこまでプレイヤーの意志が反映されるのか。

今は常識的な範囲内での移動だが、たとえば、どうやっても行くことが不可能な地点にいても、瞬間移動のように飛ばされてしまうのか?

東京であと一時間でイベントが起きるという時にアマゾンの奥地にいたらどうなるか、みたいなものだ。

後は、イザベラのステータスを確認したい。

ゲームの中にはイザベラの日記というアイテムがあり、そこから集めたスチルを見たりステータスを確認したりできる。

(きみは日記はつけているか?)

「はい、村にいる時からの習慣でつけています」

(出してくれ)

「…えっ…」

(内容は必要ない。裏表紙を上にして置いてくれ)

「はい」

(右手を当てて、『ステータス開示(オープン)』と言ってみてくれ)

「わかりました。『ステータス開示』」

ふわり、と。

日記が柔らかな光を放ち、空中に文字が投影される。

「こ、これ…!神殿で『聖なる書』に触った時と同じ…!」

(そうか)

「成人の儀の時以外に頼んだら小銀貨五枚はとられますよ!」

(五千円くらいか)

「ゴセンエン?てなんですか?小銀貨五枚あったら、一ヶ月は生活できます…!」

(…ちょっと待て、食費含めてか?)

「食費はタダです。朝夕を寮で食べて、朝の残りをお弁当にすれば。…なのに、カフェテリアでいつの間にか大銅貨五枚も使ってしまっていた時は!悔しい!」

(誰かに会わなかったか?カフェテリアで)

「…食べきれなくなったお弁当を、相席した食欲旺盛な方にさしあげました…」

食欲旺盛な方ってザフィーロスのことか…?

「お礼にと、デザートのベリーのタルトを下さったのは嬉しかったです…」

(腹一杯だったんじゃないのか?)

「スイーツは別腹です!思い出すだけで…ため息がでます…なんてすてきな一時だったのでしょう…」

…お?結婚も恋愛も興味ないかと思ったがこれは…?

「ざっくりした生地にしきつめられたふんわりやわらかでなめらかなカスタードクリーム、甘くてみずみずしいイチゴにブルーベリーにラズベリー…」

…そっち(ケーキ)かーい…。

イケメンの優先順位はとことん低いな…。

憐れザフィーロス…(二回目だな)

うっとりと(ケーキとの)思い出にひたるイザベラはとりあえずおいておくとして。

一番知りたいステータスは『精神抵抗』だ。

ゲームの中ではほぼ、お飾りのステータスだ。

最大値が100だが、イザベラは12。

かなり低い。

だが、魔力は最大値100の横に+と表示されている。

(魔力は高いが精神抵抗が低いな…)

「精神抵抗を上げるのが実験ですか?」

(ケーキとの)思い出から帰還したようだ。表情がきりっとひきしまっている。

(それも実験の一つだが、今日すぐに効果が出るわけじゃない)

昨夜、王子との『白のばら園』イベントがあったということは、今日、街に出たらお忍びで出歩いている王子との遭遇イベントが起きる確率が高い。80パーセントくらいで設定したはずだ。

(きみの村は日帰りできる距離か?)

「いいえ、往復馬車で急いで一週間はかかります」

(…帰省は無理か。街からなるべく離れた場所に行ってほしいんだが。できれば今すぐ)

「わかりました!」

(ストーップ!)

勢いよくパジャマ?ネグリジェ?を脱ぎさろうとしたイザベラにストップをかけた。

(恥じらいはないのか!?)

「だって仕方ないじゃないですか」

(きみが目を閉じれば俺も見えない)

「目を閉じたら着替えられません!」

確かに…。


試行錯誤した結果。

俺が「見ない、聞かない」と念じることで俺の視覚、聴覚を遮断できることがわかった。

が、そうするとイザベラが普通に出した声はもちろん、強く念じたことも俺に何も伝わらない。

それだと、いつ感覚を戻していいのかわからない。

結局、イザベラが魔法を使うとその感覚が伝わってくるので、『ライト』の呪文を合図にすることにした。


「これもある意味実験でしたね。さて、」

(だから何のための実験だあああ!)

早速着替え始めたイザベラに、あわてて感覚を切る。

…見てないからな、いや、チラッと見えたかもしれないけど!

俺のせいじゃないからな!


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