伝承 其の弐
季節は夏。8月真っただ中。
だからこそなのか、目の前に見える景色が幻に見えていけない。
川。渓流。河川。なんと言えばいいか。
すごく綺麗な水が上流から下流へと流れていく。
その上、すごく自然豊かだ。木々が木漏れ日を生み出していて空気も良い。
真夏とは思えない涼しさだ。これはすごい。
2155年現在、日本でこれほど綺麗な水と自然が存在しているのは
沖縄だけだと聞いていたが・・・
まぁ、細かいことはどうでもいいや。目の前には綺麗な川と森がある。以上。
「うっひょぉおおおおおおお!!!!!!!川だ!!!川だぜお前ら!!!!」
「川だからなんだっていうんです? ・・・綺麗ですね」
うおっ、冬次郎が反応した。めっずらしいこともあるものだ。
・・・ってちょっと待て功牙。その手に持ってるのはまさか・・・・・・
「いやぁ~水着持ってきてよかったぁ~!! 冬次郎!お前もどうだ?」
「いやです」
「えぇ~?!そこはノっとけよ~!!」
「当然だ功牙。今は任務をだな・・・」
「剣都!お前はノるよな?な?」
「・・・はぁ。ノらねぇ。」
「おぉぉぉぉぉぉぉのぉぉぉぉぉぉおおお!!!!」
騒ぐな耳に悪い。
・・・ん?車の収納スペースに搭載してる通信機が鳴ってるな?
車の収納スペースには連絡用のモニター付き電話が常備されている。
というより、今の電話は相手の顔も見れるモニター付きが主流だ。
受話器ではなくマイクを使って声を伝える、画期的な電話だ。
「悪い。ちょっと通信機見てくる」
「わかりました。私は偵察してますね」
「俺は一人で遊ぶぜ!コンチクショー!!」
本来なら待機時間なのを運動に費やしてる辺り、さすが実技Sだな。
さてさて着信はーっと。・・・うげ。[佐村一家]って書いてある。出たくねー。
でもいつもお世話になってるからなぁー・・・ しょうがない、出るか。
「はい、剣都です」
『やっと出たわね、剣都。10分前から電話鳴らしてたのに。もう』
冷たくも暖かい声の女性が迎えてきた。彼女は佐村雪子。俺の義理の母。
「あー、仲間に授業してました。そのせいで気づきませんでした」
『あっ、だったらいいのよ気にしなーいで?』
『雪子ー、剣都かー?』
『ええ、そうよ。あなた』
うわっ、来やがったなあの野郎。
『やぁ剣都君。仲間との仕事は順調かい?』
雪子さんに代わって出てきやがったのは佐村勇太。
目が棒のように細い。いわゆる細目キャラだ。
たまに目が開くが、その目は何かと見透かされてるようで嫌いだ。
「・・・あぁ、今現地に到着したとこ」
『おぉ、そうかそうか。』
『ちょっと、あなた。剣都困ってるわよ?』
『おっと、すまん。で、いつ帰ってくる予定だい?
練太郎が待ち焦がれてて・・・』
佐村夫妻の一人息子に小学三年生の佐村練太郎がいる。
小学校中学年だが、中学生の体型をしている、すごい奴だ。
「予定では3日後。そのうち帰ってくるって言っといて」
『わかった。伝えておくよ』
「・・・じゃあもう切るよ?俺も忙しいんだ」
『『はーい』』
切る。最後は息ピッタリなんだな。さすが夫婦。
俺は車を後にして、高い所に居る冬次郎に声をかけた。
「終わった。で、【竜の巣】はあるか?」
「はい。小10、中8、大2、です」
山が連なっていて、鳥が鳴いている見事な自然の中、
熱風が吹いている地域がある。
そこにはバカでかいニワトリの卵のような形をしている
焦げ茶色の物体がいくつもあった。
【火竜の巣】。目算全長70m、直径50m。それが中サイズ。
これに合わせた小サイズと大サイズがある。
冬次郎が言ったのは、そのサイズと数。難易度としては結構高い方。
「たしか今回の任務はこの20個の火竜の巣を駆除と、そこに住んでいるであろう竜族の討伐または捕獲だっけか」
「ええ。ですが変なんですよね」
「何が?」
「普通、これだけ火竜の巣があれば・・・周辺の森が燃えてしまってもおかしくありません。」
「それで被害が熱風程度だから変、と?」
「はい。そんなところです」
「こまけぇ事はどーでもいいだろぉ!?要はあれをぶっ潰せばいいんだろ?いつもどーりぱーっとおわらせて川で遊ぼうぜぇ!!!」
「はいはい。じゃあ行くか」
「行きましょう」
気合全開の水着のままの功牙と、冷静に武器を取り出した冬次郎。
そんな二人を確認し、俺は今いる高台を飛び降りた。
「とりあえず、デカい奴から潰していくか」
「よーっし!俺に任せな!!」
「お願いしますよ」
「くらえ!!!俺の必殺技ァ!!!!!
【爆炎拳】ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
功牙がそう叫びつつ、右手で全力の正拳突き。
爆発の轟音と共に、ニワトリの卵のような形の火竜の巣は砕けた。
「相変わらずの馬鹿力ですね」
「竜の巣潰しはあいつの得意分野だしな」
「よーっし!!次ィ!!!!」
と、順調に壊していった。
だが、ここで不気味なほど順調に行き過ぎていることに気づく。
「竜が居ませんね」
「あぁ、そういえばそうだな・・・ まるでゴーストタウンのようだ」
「大サイズのものがあったので、【上等竜】が居るのを覚悟していたのですが・・・」
「上等竜どころか、【中等竜】、【下等竜】すらいねぇな」
「おーーい。これで最後だぜーー??」
最後の小サイズの物の傍で功牙が手を振っている。
「まったくよ。竜一匹もいねーとか面白くねぇ。じゃ、これでオワリだ」
その時、俺は殺気を感じた。
「・・・いるな」
「いますね」
「えっ?何がいるって??」
「功牙!!今すぐその巣から離れろ!!!」
「あ??なんd・・・どわああああああ!!??」
俺が功牙に危険を伝えようとしたら、轟音と共に火竜の巣が崩れ落ちた。
土煙の中から姿を現したのは、上等竜。
竜族の中でも強力かつ巨大なもので、四足歩行をするタイプ。
首は長く、尻尾も長い。そのくせその巨体を飛行させるためのバカでかい翼。
一言で[ドラゴン]と言って伝わるような見た目だ。
「上等竜・・・!それも大型種ですか・・・!」
「いよっと。どうするよ、剣都!」
分析結果を言う冬次郎と、華麗に着地した功牙が揃って聞いてきた。
そ ん な の 、 決 ま っ て る だ ろ 。
「・・・殺す。絶対に逃がすな」
「「了解っ!!」」




