私はこういう人間だ
Kさんとの出会いはマッチングアプリだった。顔も好みで、話は少しつまらないが、誠実であった。片手では足りないほどには食事などをし、徐々に距離を縮めていたと思う。
ある日、高校の同窓会があった。その集まりには、当時少しだけ気になっていた人物も参加しており、少しの期待をもち参加した。私は無口で地味な高校生活を送っていたことから、その型から抜け出すことはできなかった。目の前を流れる会話をただ眺めて、合間に振られる恋愛に関する質問に答えていた。よく気の回る同級生をもったものだ。
当時の私とは違うところを見せたいという気持ちから、嘘を混ぜてKさんの話をした。できるだけ、好意的な感情を気取られぬように努めた。
その場の多数の男が
「170センチない男はだめだな」
と口々にいった。
そのとき、私は、これまでの私の、丁寧に重ねてきた時間を忘れたようだった。Kさんへの好意が薄まるのを感じた。
同窓会までは、異性を見るときに身長には関心がなかった。その時から「私の異性を見るときリスト」に、身長が加えられた。
項目が増えたことに不満はない。しかし、その増えたきっかけが気にくわない。私にとって取るに足らない人々が言った言葉によって、私のリストは更新された。
私は、周りにどのように思われるかが大切な人間なのだ。