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時が鳴りて  作者: オオクマ ケン
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第5章 戦闘

  第5章  戦闘



 カシミア王国軍の戦車部隊から攻撃を受けたウール皇国軍の装甲列車は、辺り一面、爆炎に包まれた。

「戦車隊が迫ってくるぞ!」

 ロザは客車の窓からそれを見た。

「敵の戦車なんですか?」

「当たり前だろう。味方が攻撃してくるか?」

 パーティルは目の前の光景に驚きを隠せなかった。

敵は戦車七台とともに歩兵隊も後ろから歩かせてきた。銃声がこだまする。嵐のような攻撃が装甲列車に襲い掛かってきた。

装甲列車の大砲も負けじと撃ち返す。大砲の弾が飛び交った。

敵の戦車にはガトリング砲が主砲のものもある。一分間に三百発もの弾丸がまき散らされた。土柱が横一列に並んで次々とはじけ飛ぶ。

すさまじい戦闘で、互いの声も聞こえないほどだった。

 敵の大砲の砲弾が、客車の一部を破壊した。パーティルとロザの目の前で爆発が起きて、二人は身を伏せた。幸い、二人は無事だったが、二人の乗っていた客車が半壊してしまった。

「無事か?」

「はい!」

パーティルとロザは、お互いの無事を確認し合った。

 やがて、カシミア王国軍の戦車部隊は下がっていった。

ウール皇国軍の指揮官は双眼鏡で確認する。

「退けたか?」

「いえ、多分戦略的撤退でしょう。時間を置いてまたすぐに来ます」

「今のうちに戦車を降ろして並べろ。こっちも迎え撃つ準備をするぞ」

 

 パーティルとロザは、カシミア王国軍の戦車部隊が見えなくなるまで遠くの方を見つめていた。

「危なかったな」

ロザが言う。

パーティルは列車の窓から顔を引っ込めた。

「敵の戦車がもうこんなところまで・・・」

「ああ、やつらの侵攻はかなり進んでいる」

「どうします?」

そう言ったとき、ウール皇国軍の兵士がやってきて、声をかけてきた。

「乗客の方は避難してください。遠くへ!」

「えっ、でもどこへ?」

パーティルが聞く。

「反対側に逃げてください。お願いします!」

「でも、わたしたちの行き先とは逆なんですが・・・」

「ここは危険なんです。どうか遠くへ・・・」

「そんな・・・」

「奴らはすぐに戻ってきます。荷物は置いて、できるだけ・・・」

兵士がそう言った次の瞬間、逆の方から急に砲弾が飛んできた。

列車の手前で爆発する。

パーティルは悲鳴を上げた。

ロザが反対側の地平線を見る。遠くから戦車五台が接近してくるのが見えた。

「くそ、反対側の方からも来るぞ」

ロザは手持ちキャノンを手に抱えた。

「逃げられない」

さらに逆からも、再び戦車隊が戻ってきた。

「挟まれてる!」

装甲列車と、荷台車に乗せている戦車二台で応戦するウール皇国軍。

再び戦闘が始まった。

大砲の弾が飛び交う。

爆発が雪原のあちこちで起こる。銃弾も飛んできた。

敵の戦車と、その陰に隠れて進む敵兵たちが迫ってくる。ウール皇国軍もパーティルとロザも絶体絶命だった。

「仕方ない。俺たちも応戦するぞ」

ロザは手持ちキャノンの弾を確認した。

「二十発か・・・。歩兵をやるか、戦車を狙うか」

 パーティルは身を低くしていた。

「わたしはどうすれば・・・」

「銃を出せ!」

パーティルは拳銃を取り出したが、まだ身を隠していた。

「とにかくあんたは列車から出るな。撃つときは東側の歩兵を狙え。俺は逆側から来る戦車を狙う」

「わかりました!」

その時、敵の戦車のガトリング砲が列車を襲った。

バリバリバリという連続音で、装甲列車や客車に弾丸が浴びせられた。

そして、反対側からも戦車の砲撃で機関車が攻撃を受けて爆発した。

「こりゃ、危ないな」

ロザは客車の爆発で空いた穴から身を出して、手持ちキャノンを敵の戦車に向けて発砲した。敵の戦車の一台がキャタピラをやられて減速した。キャタピラは剥がれ落ち、止まる戦車。その後ろから歩兵たちが出てきて銃を向けて発砲してくる。

銃弾が飛んできた。

ロザはもう一発、手持ちキャノンを撃った。敵の歩兵の一人の上半身が吹き飛ぶ。

歩兵たちはそれを見て下がった。

 さらに装甲列車の大砲が、敵戦車の一台を破壊した。爆発して乗っていた兵隊たちが火だるまになりながら戦車から出てくる。

 続けて装甲列車の砲台が砲弾を数発放った。敵の戦車の手前で爆発し、敵の動きを止めた。

さらに二発、手持ちキャノンを撃ったロザは、もう一台、敵の戦車を破壊する。

「これで止まってくれればいいが・・・」

敵は、いったん状況を把握しようと集まっていた。少しは時間が稼げたようだった。

 しかし、反対の東側からの攻撃には苦戦していた。

敵戦車七台と、歩兵たちがどんどん近づいてくる。

 ウール皇国軍の兵たちは歩兵銃を構えると、一斉射撃を行った。敵兵数人が倒れる。敵も戦車に隠れながら銃を撃ってくる。銃弾の雨が飛んできた。弾丸の破裂音がこだまする。

 パーティルは拳銃を構えたが、飛んでくる銃弾に身を潜めてしまった。

パーティルにしてみれば、この戦闘は本当に恐ろしかった。こんな戦いに巻き込まれたのは初めてだった。それでも勇気を振り絞って、客車の窓から外の敵兵を狙った。

一発だけ慎重に発砲した。弾丸は戦車の装甲に当たると、それが跳弾となって敵兵の一人の方にぶち当たった。相手一人だが負傷させることに成功した。

それでも敵の進撃は止まらない。

さらに銃弾とガトリング砲が列車を襲う。

「撃てー!」

ウール皇国軍の指揮官は砲手に命令した。大砲が一斉に放たれる。雪原に爆発が広がる。そして敵の戦車一台が破裂する。一度爆発が起きるとさらに大爆発が起きた。その勢いで戦車の後ろの歩兵たちが吹き飛ばされる。

 さらに二発の砲弾が敵の隊列を崩すように飛び、爆発する。

敵は後退していった。

「やった、カシミア王国軍の戦車隊は撤退していきます!」

パーティルはロザに言った。

「喜ぶのは早いぞ。こっち側はまだいる」

反対側を見ると、敵の戦車隊はまだ応戦を続けていた。

大砲の弾がどんどん飛んでくる。

「進撃は止まってるが、攻撃はまだ続いている。こっちを手伝え!」

「はい」

 ロザは手持ちキャノンで敵兵を撃ち殺していったが、それでもまだ敵はひるまなかった。

「銃は?」

「持ってます」

「撃て!」

しかし、敵の銃弾がパーティルのそばをかすめた。そのせいで倒れ込むパーティル。

「大丈夫か?」

「ええ、撃たれてはいません」

「やっぱり身を潜めてろ。俺が戦う」

 装甲列車も砲撃を開始した。

 敵の戦車を一台吹き飛ばした。

「やった!」

 ウール皇国軍の指揮官は双眼鏡で爆発を確認する。

「もう少しだ。もう少し粘れば・・・」

その時、装甲列車は敵の砲弾を三発食らって大破した。

大爆発が起きる。

そのせいで、ウール皇国軍の兵たちは、何人か弾き飛ばされた。

「やばい、主力を失った・・・」

ロザは呆然とする。しかし、すぐに気を取り直した。

「俺のキャノンも残り十発か・・・。これでしのぐぞ!」

ロザは戦車に向けて発砲する。

二発が外れた。

もう一発撃つ。戦車の装甲が一台剥がれた。

ウール皇国軍の兵たちはそこから剥き出た敵の兵隊たちを銃で射殺していく。

「撃て撃て、一斉に射撃だ!」

バンバンバンと銃声が聞こえ、次々に敵兵に当たる。

ロザも手持ちキャノンで応戦した。

やがて、カシミア王国軍の戦車部隊は攻撃をやめた。そして兵たちは逃げ出す。

「やったぞ」

ロザはパーティルに言った。

「え?」

「戦闘だ、終わった」

「敵は?」

「カシミアの連中、全部撤退したぞ」

「そうですか・・・」

急に静かになったのを確認して、パーティルも戦闘が終わったのを確認した。

列車のあちこちから噴煙がモクモクと出ていた。雪原のあちこちにも黒い煙が噴き出していた。すさまじい戦闘だったことを物語っている。

「ああ、これは・・・」

「もう大丈夫だ。安心しろ」

「ものすごかったですね」

「ものすごかった?」

「ええ」

「これでも戦いとしては序の口だ。現に俺たちはまだ死んじゃいない。本当の戦いとは命を落とすものだ」

「はぁ・・・でも・・・」

「俺が経験した戦闘の経験では、十五年前の話だが、五百対千だ。民族同士の戦いだがな。その時はこんなものじゃなかった。それでも俺は生きている」

「すごいですね・・・」

「それが戦いだ」

ロザとパーティルが話していると、生き残った味方の兵の一人がやって来た。

「お二人とも、ご無事ですか?」

パーティルは振り向く。

「は、はい。大丈夫です」

「戦闘はもう終わりましたが、まだ警戒中です。お二人はもう避難してください。今のうちに」

パーティルはロザの方を見る。

「ああ、そうだな。今のうちに行くか。警戒は怠れないからな」

「はい」

「西にも東にも行けない、とすれば、あの壊れた線路の先を歩くしかないようだな」

ロザは線路の続きが伸びている南を指さして言う。

「また徒歩ですか・・・」

ため息をつくパーティル。

「仕方がない。線路は破壊されているし、列車もこのざまだ。歩くしかあるまい」

「はい」

「荷物を持て。今のうちに行くぞ」

「そうですね、わかりました」

パーティルは荷物を持って、ロザと一緒に列車を降りた。雪原にまたしても足を着いた。

「さあ、行くぞ」

「ここからは山に入りますね」

「線路沿いに行けばな」

「線路沿いに行きましょう」

「ああ」

「では・・・」

「出発だ」

生き残っていたウール皇国軍の兵たちにお辞儀をすると、パーティルとロザは南に向かって、線路沿いを歩いていった。先には山があった。雪山だった。



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