表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時が鳴りて  作者: オオクマ ケン
19/19

第18章 決戦・時が鳴りて

  第18章  決戦・時が鳴りて



 パーテイルたちが乗る小型の飛行機は、かなりのスピードで飛んで行った。

ロザが操縦席から声をかける。

「もうすぐトライス城の城下だ。本腰を入れて臨んだ方がいい」

「ロザ、着陸はどうするんだ?」

「考えてない。この辺に着陸できるところは見当たらない」

「じゃ、どうするんだ?」

「分からん。城の中庭にでも降りるか?」

「冗談!このまま城へ突っ込んじまえ!」

「俺もそう思っていた。この先、安全など最初からないんだ。そうしよう」

リマはそれを聞いて、パーティルの方を向き、ニヤッと笑った。

「飛び込むんですか?このまま?」

「そうだよ、お姉さん。死んじまわないように気を付けな」

「でも・・・」

そう言うと、パーティルはリマの表情を見た。ロザも同じ顔をしているだろう。

「分かったわ。このまま行ってください」

「命懸けだよ?」

「望むところです!」

「それでこそ、次なるカシミアの女王だ」

「あなたが憎むカシミアよ?」

「お姉さんは違う。だろ?腐ったカシミアを正してくれる正当なる王族の娘だ」

「敵もカシミアよ。容赦してくれないわ」

「その時は俺たちの出番だ」

「わたしは戦いを人に任せてしまう覚悟を持ってるわ。どんなに図々しくとも、わたしの目的のためにはあなたたちを利用する役を買って出る」

「それは違うぜ、お姉さん。俺たちみんなの目的が同じだからさ」

「ええ」

「みんなで戦争を終わらせるんだ」

「そうね」

「これは俺の戦い、ロザの戦いでもある。そしてお姉さんの戦いだ」

「みんなを信じてる」

「それでいいんだよ。敵は任せろ。いいな?」

「ええ」

そうこう言っているうちに、城下を抜け、トライス城が目の前に見えた。

「さあ、行くぞ!」

ロザは迷うことなく飛行機を城の大広間が見えるところに突っ込ませた。


 ドドーンという豪快な音が、トライス城の中に響き渡った。柱を順番に倒す音とともに金属がひしゃげる音が聞こえ、様々なものがなぎ倒される音がこだまする。

飛行機はギリギリ反対側の壁の手前で止まった。

「よし、降りるぞ」

ロザは操縦席を離れ、パーティルとリマも飛行機のハッチを開け、大広間に降りた。

「多分、こっちの階段を上ればルリアの玉座にたどり着くよ」

パーティルの手を引くリマ。そのあとを手持ちキャノンを持つロザがついてくる。近衛兵が後ろから来た。ロザは手持ちキャノンで敵を吹き飛ばす。

「標的、一人倒した。パーティル!」

階段を上ると、大きな扉にぶつかった。

「この扉、鍵がかかってる」

パーティルは拳銃を、鍵がかかってるところに向けて発砲した。

バキュンという音とともに鍵が壊れ、扉が開いた。

部屋に入ると、そこは玉座だった。

 そこにいたのは、カシミア王国の王女ルリアとその側近クチカットだった。

パーテイルたちは玉座の前で立ち止まる。

「あなたが王女ルリアね?」

パーティルは拳銃を手に話しかけた。

「ええ、そうよ。わたしが今の王女、ルリア・カシミアよ。あなたは?」

「わたしはあなたのお父様の妾の子、ウール皇国が出身国のパーティル・エバンス。あなたの霧の姉よ」

「やはり王族の者か。会いたかったわよ」

「え?」

「あなたが来ることはもう知ってた。ここまで長旅ご苦労様。きっと会えると思っていたわ。存分に私の顔を拝むといいわ」

「この戦争を終わらせてくれないかしら?」

「今は出来ない。ウール皇国を攻め落とすまでは・・・」

「なぜ、この戦争を始めたの?」

「それを聞いてどうしようっての?今からあなたたちとわたしたちの戦いが始まろうってのに」

「争いたくはない。それに仲間を危険に晒したくもない。だからこれ以上・・・」

「クチカット、あなたは後ろの二人をお願い!」

「御意!」

突然クチカットが剣を抜いて、パーティルのそばを通り過ぎ、リマたちに切りかかった。

ダガーを出して戦闘を始めるリマ。

キイインという音がして、リマの右手に持っていたダガーの刃が折れた。

なんという鋭い打ち込み。

「くっ!」

リマは下がった。

ダガーの刃がどこへ飛んだのかわからない。

カランカランという音は聞こえたのに。

「こいつ・・・」

リマはクチカットから離れた。

「ロザ、殺ってくれ!」

ロザが手持ちキャノンで最後の一発を撃つ。

クチカットの剣が折れた。

クチカットはバランスを崩し、その場でよろけた。

その隙をリマは見逃さなかった。

左手のダガーでクチカットの身を引き裂いた。

「ぐわっ!」

クチカットは吐血した。内臓をやられたのだ。

「くたばれ!」

リマはありったけの力でダガーの先端をクチカットの体に埋め込む。

クチカットは倒れる。

 パーティルも拳銃を出した。その狙いをルリアに突きつける。

しかし、ルリアの抜いた剣により、拳銃は暴発し、床に転がる。

パーティルの喉に剣が突きつけられる。

「さあ、死になさい。王女はこの国に二人もいらない。だから・・・」

そう言った時だった。

「いいえ、三人よ!」

その声が聞こえた瞬間、ダガーの刃が食い込んだ血だらけの手で、その場に立っている者がいた。

リッサだった。

リッサはダガーの刃をルリアの背に突き立てる。

「あっ!」

ルリアは剣を落とし、倒れた。

「どうして・・・。どうして下女のお前が?」

「あなたに毒を盛ったのはわたしです。わたしもあなたのお父上の妾の子」

今わの際に、ルリアはそれを聞いて目を開いた。

「なん、ですって!」

「あなたが死ぬのをわたしは夢見ていました。この戦争をいつか終わらせるために!」

「そ、そんな・・・。わたしはこの国の、国女・・・」

「そしてわたしも!」

リッサはとどめの一刺しをルリアに食らわせる。

ルリアは絶命した。

血だらけの手でダガーの刃を落とすリッサ。

息が荒くなっていたが、気を静めるとパーテイルたちの方に顔を見せた。

「あなた方のおかげです。これで戦争は終わりました」

「あなたも、わたしやルリアの異母姉妹?」

「あなたもなんですね?そうです。わたしはリッサ・ドーワーズ。王女の付き人として生きてきました。でも・・・」

「あなたも宿命を背負っていたのですね?」

「いいえ、わたしはきっかけに過ぎません。本当にこの戦争を終わらせるために生きてきたのはあなたの方です。パーティル・エバンス。わたしのお義姉さん」

「まだ、この時も今、多くの者が戦っている。そして多くの者が死んでいっている。早くこの戦いを止めないと」

「それならこちらへ。もう王女は死にました。新しい王女が必要です。あなたが」

パーテイルは悟ったようにその場に立ち尽くした。

そして・・・。

「いいえ、本当に王女を名乗るなら、それはあなたです、リッサ」

「え?」

リッサは驚いた。

「あなたの勇敢な行為。畏敬の念を感じます」

「そんな・・・」

「リッサ。リッサ・ドーワーズ。これよりリッサ・カシミアの名を与えます。称号は王女。わたしの下命よ」

「パーティル・エバンス。いいえ、お義姉さん」

「あなたがこの国の次の国女。さぁ、戦争をあなたの手で止めてください。わたしは見守ってあげます」

「ありがとう」

リッサは人を殺めたその手で、城の鐘楼へと急いだ。

鐘が鳴る。

大きな釣り鐘が、リッサの血だらけの手で鳴らされる。

戦争が終わる合図だった。鐘を四回鳴らしてそれを国に伝える。

長い戦いが終わりを告げる時が鳴りて、それは人から人へ伝えられ、やがて戦争は終わりを迎えることとなった。


 数日後?―

トライス城内にて戴冠式が行われた。

リマとロザが迎えられる。

「あなたたちの尽力により、我が義姉、パーティル・エバンスは旅を完遂することが出来ました。あなたたちを我が国の英雄とします」

リマとロザはリッサ・カシミアの前にひざまずき、リマは新しいダガーと騎士の称号をもらった。

「俺はメンカ共和国の娘だ。いいのかな?

「ええ。あなたは生涯、この国に語り継がれるダガー使いとして後世に名を遺すでしょう。それにスリラ族の誇り高き戦士、ロザ・ガーウィン。あなたもこの国の戦士長として迎えたいのだけれど」

「いや、俺は疎開している家族の元へ帰る。俺の称号はたたの誇り。それだけあれば俺はいい」

「謙虚ですね。その謙虚さを邪魔するものは何もありません。この地を去ってくださっても結構です。あなたの名はこの国に残るのですから」

「そうか。それも悪くないな」

リマとロザはその場を去った。

「あんたも俺も、英雄だってさ」

「そんなもん、別にいらんさ。俺には守るべき家族がいる。それだけでいい。それがスリラ族の男だ」

「ハイハイ。でも、お姉さんはどうしたんだろ?あの場にはいなかったな」

「知らなかったのか?そうか・・・」

「何だよ?」

「あいつは一足先に帰った。ウール皇国へ」

「なんだって?」

リマが驚く。

「あいつはまた旅に出たんだ。自分の旅にな。王女も知っている」

「何で内緒にしといたんだよ?俺だって国に帰る前にお姉さんに・・・」

「ああ。お前はついてくるだろうから言わないでおこうと思ったんだとさ」

「それは・・・。俺ももう孤児だし、お姉さんについていくのもアリかなって思ってはいたんだけどさ」

「だからだろう。お前にはお前の旅をしてほしいのさ。それがあいつの願いなんだろうからな」

「そっか。でも、もう会えないってわけじゃないからな」

「その通りだ。いつかまた会える。それが旅の醍醐味ってやつだからな」

「俺もそう思うよ。いつかきっと・・・」

「ああ、また会える!きっとな」

「人の旅は続く。どこまでも・・・」

そうポツリとつぶやくリマ。

「ありがとな、お姉さん!」


 戦争は二度と起こしてはならない。

それはパーティルの大事な願いであった。

それを汲むのは生き残った者たちの宿命であった。

すべてはその願いのために・・・・・。










戦記物、どうでしたでしょうか?よく書くジャンルなのですが、今回ライトノベルっぽい書き方で頑張って書きました。楽しんでいただけたら幸いです。また感想やレビューもお待ちしておりますので、よかったらどんどんくれると嬉しいです。それではまた!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ