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時が鳴りて  作者: オオクマ ケン
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第9章 戦艦バレクシア

  第9章  戦艦バレクシア



 軍港ショーリカスは、ウール皇国軍の戦艦だらけだった。巡洋艦、駆逐艦も並んでいる。そして水兵たちがその周りを歩いていた。

「どれに乗るんだ?」

リマがパーティルに聞く。

「え~とねぇ・・・」

「っていうか、乗せてくれるのか、軍用艦に」

「ロゴット艦長は知り合いなの。彼の艦は・・・」

「ロゴット?ロゴット艦長?」

「ええ、そうよ。知ってるの?」

「俺の船が潜水艦にやられたときに助けてくれたのが、ロゴット艦長の艦、戦艦バレクシアなんだよ」

「ああ、そう。戦艦バレクシアよ。その艦分かる?」

「ああ、あの艦だよ」

リマは指さす。

大型戦艦がそこにはあった。戦艦バレクシアだ。

「あれね」

ロザが前に出る。

「あの艦に乗って海を渡るのか?」

「そうです」

「あんた、軍艦の艦長と知り合いなのか」

「はい。ロゴット・デズム艦長です」

そう言うと、パーティルは戦艦に駆け寄った。

水兵に声をかける。

「すみません、ロゴット艦長は?」

「あなたは?」

水兵が尋ねる。

「艦長の知り合いで、パーティル・エバンスと言えばわかります」

「わかりました、ではちょっと待っててください。艦長に伝えてきます」

「はい、ここで待ってます」

 十五分ほどすると、戦艦から艦長が出てきた。

「パーティル・エバンス?あのパーティル・エバンスですか?」

五十代半ばの男が声をかける。

「はい。わたしです」

「あなたが・・・。お噂は聞いております。カシミア王国へ行くのでしょう?」

「ええ」

「では、我が戦艦にお乗りください。クルアの港までお乗せしましょう」

「わたしの連れも一緒にお願いします。スリラ族のロザ・ガーウィンさんとメンカ共和国人のリマ・クイスキル嬢です」

「あなたのお連れの方でしたらいいでしょう。ご一緒にどうぞ!」

「ありがとう」

「いいえ」

「乗艦ください。護衛に駆逐艦二隻を付けます」

「はい」

「あなたの旅は重要だと拝見しております。どうか、ウール皇国をよろしくおねがいします」

「ええ」

パーティルはくるりとロザたちの方を見ると、手招きした。

「いいですよ。乗せてくださるって」

「あんた一体・・・」

ロザが首をかしげる。

「いや、戦艦の艦長と本当に知り合いとは」

「直接には・・・。でも彼はわたしのことを知っているんです」

「そうなのか。あんた、どういう人間なんだ?」

「ただの女ですよ。さ、乗りましょう」

その時、リマがロゴット艦長のもとへ走って来た。

「艦長、俺を覚えていますか?沈没した船から俺を助けてくれた・・・」

「ん?」

ロゴット艦長はリマを見る。

「君はあの時の!また会えるとは」

「ええ。あの時は助けてくれてありがとうございました!」

「礼ならもう、あの時さんざん言ってたじゃないか。別にいいんだよ。でも、君の両親を助けられなくて、こちらこそ申し訳ないと思ってるんだ」

「そんな」

「まぁ、いい。君も彼女と一緒に行くのかね、カシミア王国へ?」

「はい。戻って両親の敵を討つんです」

「そうか・・・。それならいい。だが、一つ頼まれてくれないだろうか?」

「何です?」

「君はダガーの達人と言っていただろう。その剣士と見込んで、このパーティル・エバンスさんを無事にカシミア王国へ連れて行ってくれないかね?用心棒だよ」

「あ、はい」

「頼んだよ。アテにしているからな」

「わかりました」

「もう一人、連れの方がいるんでしょう、パーティル・エバンス」

ロゴット艦長はパーティルを見る。

「あ、こちらの男性です」

「スリラ族の方だと・・・」

ロザは艦長の前に来た。

「どうも、ロザ・ガーウィンだ。戦士だ」

「あなたも彼女の用心棒を?」

「そうだ」

「では彼女をよろしく頼みます」

「わかっている」

「では三人とも、ようこそ我が戦艦へ!乗ってください。準備ができ次第、出発します」

 パーティルたち三人は、戦艦バレクシアに乗船した。


 ロゴット艦長は、見慣れない水兵に命令した。

「もやいを解け!」

「はい。もやいを解け」

戦艦は動き出して、港を離れた。護衛艦二隻が一緒に動き出す。

「では、後を頼む。わたしは艦長室へ戻る」

「はい」

艦長が背を向けた途端、水兵が拳銃を出した。それにとっさに気づいたロゴット艦長は、体を伏せた。銃弾が頭上を通過する。

他の水兵たちが、銃声に気づいた。

「あいつは誰だ?」

「カシミアの刺客だ!」

刺客は艦内に逃げ込んだ。

「大変だ!水兵の中に敵が紛れ込んでいる!」

「艦長!」

ロゴットは他の水兵によった立ち上がらされた。

「大丈夫ですか?」

「ああ。平気だ。しかし、あの男は?」

「恐らくカシミアの放った刺客だと・・・」

「どこへ行った?」

「艦内へ逃げ込みました。武装しています」

「探し出して捕まえろ!」

「でも、相手もウール皇国海軍の水兵の格好をしています。同士討ちの危険も・・・」

「艦内に放送をかけろ。急ぐんだ!」

「はい、艦長」


 パーティルは船員に部屋に案内されていた。ロザたちとは別々の部屋だった。しかし、突然その船員は銃で撃たれた。そしてパーティルは船員を撃った刺客に人質に取られた。

「あなた誰?」

「俺はカシミア王国の暗殺者だ。一緒に来い」

二人は迷路のように入り組んでいる戦艦バレクシアの艦内を移動した。

その時、艦内放送がかかる。

『総員、カシミアの刺客が艦内に紛れ込んだ。総員で艦内を捜索し、迅速に確保するように。繰り返す・・・』

刺客はパーティルと艦内をあちこち動き回る。

「さっさと来い!」

パーティルは引きずられた。刺客は鉢合わせた水兵を突き飛ばすと銃撃した。倒れる水兵を見て、他の乗組員たちが自動火器を持って集まってくる。

「あなたの目的は何?」

「艦長の暗殺さ」

「ロゴット艦長?」

「そうさ、ロゴット・デズムだ。ウール皇国海軍の連合司令官だからな」

「そんな事はさせないわ」

「いや、殺るんだ」

「艦長は命を惜しまないわ」

「どうかな?」

「本当よ。わたしを人質にとっても無駄だわ」

刺客とパーティルは、水兵たちに囲まれた。

ロザとリマも駆けつける。

手持ちキャノンを構えるロザと両手にダガーを持つリマ。

「あいつは誰だ?」

ロザがリマに聞く。

「知らん。でもお姉さんを人質に・・・」

「ウール皇国の者じゃないようだ。パーティルを助けるぞ」

「ああ。策はあるのかい?」

「あいつらまでの距離は約五メートル。気をそらせばダガーで切り込めるか?」

「気をそらすって?」

「俺がこの手持ちキャノンであいつらの頭上の天井をぶち抜く。その瞬間に敵をそのダガーで殺るんだ。できるか?」

「ああ、それでいこう」

「三つ数える。三、二、一、いくぞ!」

ロザは手持ちキャノンを発砲する。

天井の装甲は硬かったが、すごい火花が散った。火花をかぶる刺客とパーティル。

二人はその場に伏せた。すぐに立ち上がる刺客。パーティルはそのまま伏せた。リマはすごい勢いで走り、両手のダガーを刺客に突き刺した。その場に倒れる刺客。銃を落とす。

「やった!」

リマは伏せていたパーティルに駆け寄る。

「お姉さん、大丈夫か?」

「リマ・・・」

顔を上げるパーティル。

その時、刺客が銃を拾って立ち上がった。

「危ない!」

パーティルはリマを押し倒した。

銃弾がかすめる。

パーティルが拳銃を出した。刺客は銃を撃ちながら逃げる。

その場にいた皆が伏せた。

「敵が逃げたぞ!」

「追え!」

リマは立ち上がる。

「なんで刺したのに死んでないんだ?」

「ヨロイか防弾着を着てたみたいね」

「艦内のどこかに逃げ込んだみたいだな」

「あの人は艦長を狙ってここに入り込んだみたいよ。リマ、あなたは艦長を守って!」

「俺は艦長にアンタを守れと言われたんだ」

「わたしは大丈夫よ」

そう言うと、パーティルは拳銃を構える。

「わたしたちであの人を捕まえるわ」

「分かった。気を付けろよ」

「ええ」

リマはパーティルの元を離れた。

「あの人は船尾に向かったわ。袋小路よ」

ロザが手持ちキャノンを手にパーティルのそばに寄ってくる。

「俺が行く」

ロザとパーティルは船尾へ急いだ。


 刺客は船尾にいた銃火器を持った水兵を撃った。そして武器を奪う。

ロザは刺客に追いついたが、敵の持った自動火器の発砲を受け、壁に身を潜める。パーティルが銃を撃つ。

パンという音が鳴り、刺客の足をぶち抜いた。倒れる刺客。そして、とどめに手持ちキャノンを撃ち、刺客の体をバラバラにするロザ。

刺客の防弾着もろとも吹き飛んだ。

「やっと殺った・・・」

戦艦バレクシアの艦内はエンジン音だけが鳴り響いていた。



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