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かつての言葉たち  作者: 蠍座の黒猫&につき
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憧れへの河を還る言葉たち/ 蠍/ 指をかんでみていた/

憧れへの河を還る言葉たち/


あなたが空虚なのではない。見えないけれども、そこに充満している、あまりに濃すぎる詩人の魂に、あなたの言葉が吸い取られているのだ。


やがて、それは還って来る。

夕陽の鋭い残照。

夜に吹く嵐。


そして、あなたは湧き起こる狂おしい憧れに身を任せて、燃え尽きるまでに生き急ぐのだ。



蠍/


病人は震えている。

この震えは死に至る震えだ。

この病人には、憧れが憑りついているのだ。


死を司る蠍の星座が、私の目の前で眠っている。

無防備な黒い背中が、ぴかりと光る。

蠍は後悔の毒もって、私を刺す。

もはや形無き憧れは、その鋏で引き裂かれる。

そして、彼は私を連れていく。

高く高く夜空を昇り、雲の上、成層圏を越えて、

大気圏さえ突破して、見遥かす星々だけの世界へと。

そのとき、私は肩ごしに振り返る。

そして探してしまうだろう。


杜深き静かな山並み。

あの日訪れた神寂びた滝。

おだやかな人心の村。

あの人の故郷を。

もはや、誰も戻ることのない、その故郷を。

青い蒼い宝石のような

思い出の欠片が埋まった場所を。




指をかんでみていた/


”私は、私に興味のあることしかいらない。”

誰のことも見もせずに、足早に広場を歩く。

若い男女を避けて。

中年のサラリーマンをよけて。

体格の良い自由業風の男をよけそこねて。


この街は、みんなそうだろうか。

例えば、そのビルとビルの隙間にいる。

片付いた物陰から、幼い私が覗いている。

例えば、見上げれば見える、冴え冴えとした満月。

眠れない少年の私が、熱い目で見上げている。

なにをするでもなく、なにができるでもない。

ただ、胸の中で渦巻く屈託が、狂おしい。

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