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かつての言葉たち  作者: 蠍座の黒猫&につき
24/24

石が物心付いたころ

14.11.12 推敲

半ば埋まった石が

物心付いたばかりのころ


燃える黄葉を仰ぎ

秋の炎に焙られていた


西を見れば

耕された土が 畝になり

こちらからあちらへと

あちらからこちらへと

何列も並んでいる


年老いた

小さな

腰のまがった

低い鼻の

女が


長い畝と畝の間で

鍬を杖にして

くぬぎ林を眺めている


そこでは虫が捕れる

てらてらと輝く

強い足を持つ

甲虫たち


父親は幼い娘を連れていく

カット西瓜の

空飛ぶ円盤のような形の

空パック 一杯に

カブトムシを詰めて

「いりませんか」と

私に差し出した




庭に

今年初めての

山茶花が咲いた


石は眠れないだろう


銀杏は白々と切り倒されて


くぬぎ林は 薪になって

誰かの畑の片隅に

随分長く積まれたままだ 


月のない晩には

あの畝と畝の間に

寂しい風が吹いている


だから

祖母と仲良しだった

皺だらけの老婆は

墓から抜け出して

畑の畝に

ぽつぽつと

小石を植えてやる


やがて

月の明かりで

小石が芽を出して

灰色の枝豆が実れば


夜中も起きたままの石は

這って行って

その豆を

ぼりぼり食べて

そこに留まり


やっと

人並みに

心を無くして

ありふれた石になって

孤独に

苔生していく

これで終わります。

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