表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつての言葉たち  作者: 蠍座の黒猫&につき
22/24

空想のやわらかな虹いろの雲/

進み振り返れば来し方が見える。進むとは空想の力。それは理を超える唯一の手段であり、拠り所であり、誓いの代償である。

あらすじより

投稿日

2016年 01月31日 23時35分

胸の中の歯車が回っている

きゃりきゃりと軋む音を立てるそれに

甘い思い出の潤滑油はいらない

それは口に入れるものではないから

なんとか生み出そうとしている

鮮度の良い言葉には不似合いだから


父の

母の

懐かしさの溢れるであろう

ビデオのフィルムを

写真とそのネガを

わたしは捨てた

残したくはない未練からではなくて

出来るだけ痕跡を現実に残さぬため

存在の消えたことを寿ぐために

そして

わたし自身の根源として

受け継いだ存在として自覚するために

奥歯を食い縛り 眦を釣り上げて

それでも 思い出には縋らないことを誓ったのだ

わたしが彼らの子であることは

疑うべきことではないのだから

わたしが生きていることこそが

彼らの生きていた証であるのだから

殊更に思い出を追うべきでない

この欠損を 空白を

このわだかまりを 人間をいうものを

どうしようもない後悔であり続けるということを

一番大切なものとして

後に残るものへ伝えることを

誓ったのだ


そうして

本当のところは

歪んだレンズで見ているような

思いがけない姿で

いつか出会うのかも知れない

わたしの背中に

しがみ付いているのが

目を閉じた孤独な嬰児ではなくて

丈夫な根を生やした

小さな星を宿した樹であって欲しいと

そう思うからでもある


その星では

皆が思索を深め

直観の閃きを追い求め

お互いの顔色など気にも留めない

そうであることを

明るい空色の脳裏に

共感している


今という

永遠に捕らえられることのない盗人は

全てを奪い去り消し去ってしまう

その姿は決して感知することは出来ないから

わたしはタイムワープを試みる

それは予測ではなくて

予感または予知夢として現れる光景

知覚時間限界の堅固な壁をすり抜けて

空想のやわらかな虹いろの雲へ至り

今の刹那を振り返れば

わたしの後ろに連なっている

知らない顔 顔 顔

存在の連続と連鎖は

過去からの鎖

われわれは最も先端の一つの輪だ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ