雷獣/
あらすじより
雷獣の誘い。白の光の中で聞く詩。何ものでもないことを知る。
投稿日
2015年 11月23日 00時14分
すっきりとしていない
曇りのある瞳で
近づいてくる嵐の冷気を見ている
ばっさりと落とせない
重たげな髪の毛は
濡れて重く頬に張り付いている
吹く風に交じる雨粒は
ばらばらと
地面を叩き
わたしを叩く
山の向こうの閃光
遅れてくる太鼓の音
直撃を待っている
あの日
手懐けた
雷獣が
雷を下りてくる
きっと
この辺りに
黒い体毛に覆われ
ぱちぱちと燐光を放つ
青白く光る瞳は小さ目なのに
耳まで裂けた口は大きく
鋭い白銀の歯が並ぶ
丸い耳に短い四肢を持ち
尾は短く
撫でてやれば
かすかに暖かい
猫のようにすり寄り
犬のように鼻を鳴らす
紫の光が近づいてきた
わたしを探している
深い山の中で
独り迷っているわたしを
見つけたなら
迷わず
杉の木を裂いて落ちてくるだろう
燃え上がる轟音で
濡れた地面を震わすだろう
痺れてしまいたいような
鼓動を止めていたいような
森の雨土の匂いに包まれて
待っているのは
畏れでなく
俯瞰するための飛躍
雷を逆流するための軽やかさ
雷獣は
光りを放ち
雲間から射す光のように
わたしを透かす
嘘も
闇も
全て
レントゲンのように
一瞬の光に透かしてしまう
どうしようもなく
放り出された
自由の白の中で
わたしは
聞く
太古より
途切れることなく続く
神々の詩を
まだ誰のものでもない言葉で
聞く
そして誰もが
何ものでもないことを
知る
随分と構えているけれど、動物(空想だけど)が出てくるのはお気に入りです。