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鮫と鳩/
仕事へ行くために、朝に家を出た
早く歩く
振り返ると、子どもの鮫が遅れている
早く来なさいと、見ていると追いついてきた
鮫と一緒に出来るだけ早く駅へ急ぐ
駅に着くと鮫は悲しそうだ
鮫は電車には乗せてもらえない
改札に入ると鮫はすごすごと引き返す
きっとあの橋の下を流れる川へ戻るのだろう
冷たい流れる水の中で私の帰りを待つのだろう
電車が来た
電車に乗る
人と人と鳩が乗る
さてゆっくりと座ろうか
何しろ片道十年の通勤だ
鳩たちは歩き回る
そのうち足の指が擦り減ってしまって指のないのもいる
もうすぐしたら足も擦り減ってしまって、胴体だけでばさばさ羽を使ってはい回る
それからついには鳩の体が全部擦り減ってしまって
終点だ
ファイル保存日時
2014.11.01 00:17
このころ、まあまあな距離を通勤していた。家を出る時、わたしの何かを置いていった。雇われるという中で、わたしの何かがすり減っていった。そのリアルな思いが書かせたものです。