表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

2126年 2月3日 12:03 状態:酸素量が低下しています

生き残るためのマニュアル


廃虚内で爆発物を使う時は注意してください。

室内での衝撃波は致命的です。

 部屋から飛び出すと、右の通路からクリーチャーが走って来ていた。距離は近く、考える猶予は残されていない。モスバーグM500を短く持ち、銃剣を構えてクリーチャーの突進を回避、すれ違う形で首筋を切り裂いた。

 振り返って生死を確認する余裕は無い。肉腫から距離を置き、安全距離を保ちながら一方的に攻撃できる位置に立つのが最優先だ。

 通路の突き当たりまで走り、接近するクリーチャーが居ない事を確認してから振り向き、肉腫にM500のライフルスラグ弾を浴びせる。強い反動を抑え、引き金を絞るたびに肉腫の体から表皮が吹き飛ぶ。出血は少ないが、それでも確実にダメージは与えられていた。


 発砲し、ポンプをスライドして排莢するとほぼ同時に新しいライフルスラグ弾を装填する。ポンプアクション式の利点を最大限利用した射撃に対し、肉腫は顔から胴にかけてを丸太の様な両手で守りながらゆっくり、しかし確実に歩み寄ってくる。

 ライフルスラグ弾は有効だが、当然弾数には限りがある。狙うのは急所だ。本来なら胸部や頭部を狙うべきだが、残りの弾で両腕を砕き、その上頭を吹っ飛ばす自信は無かった。ならば膝を狙うまでだ。機動力を削げば大分有利になるし、時間も稼げる――放射線量的にも酸素量的にもあまり時間は無いが、少なくとも精神的余裕が生まれる――


 ゆっくりとは言え、歩いている肉腫の膝を狙うのは難しかったが、不可能では無かった。大事なのはタイミングだ。照準を合わせると固定して、地に着いた瞬間を狙って撃つ。

 関節は脊椎動物にとって弱点だが、既に肉腫は関節の脆弱性に対し対策を講じていたようで、膝関節は大きく、歪で、他の部位より一層硬い組織で覆われていた。キチン質だろうか?

 引き金を絞る。ライフルスラグ弾が飛翔し、膝関節を守る組織に着弾。硬質な音と共に砕けた組織の一部が舞った。


 生物がこれほどの強固さを持つ組織を持てるなどどう考えても理解できないし、信じたくも無い。

 発砲を繰り返し、4度目の発砲でようやく右足の膝関節が大きく抉れ、肉腫がよろめいた。大きな進歩だが――それだけだ。奴を殺すには至らない。あと一つ、奴を死に至らしめる一撃が足りないのだ。

 

 残りのライフルスラグ弾は15発。M500はチューブ内全ての弾薬を使い果たしていて、リロードしなければならなかった。ベルトに装着されているライフルスラグ弾をM500に装填しようとして、左側から迫るクリーチャーの群れを視界の端に捉えた。

 

 M500に弾を装填している時間は無い。ならばベレッタPX4を抜くべきだが、ここで戦うのは得策とは言えない。左側の通路に少し行った所の部屋を見つけ、そこに入る事にした。入る前に、ピンを抜いた手榴弾を通路に落とす事も忘れない。


 響き渡る爆音と揺れを感じながらも走る。自分がどこにいるかなど分からない。こうなったら出たとこ勝負だ。


 肉腫を殺せそうな武器も無いわけでは無い。ただし、それは大きなギャンブルになる。自分の命、血清、俺の持つ全てを賭けなければならない。

 しかし、人生には賭けなければいけない時があると俺は思う。そして、それはまさしく今だとも。


 

 

中東で核兵器使用か? 波紋広がる

         ――2026年 日本新聞

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ