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2126年 2月1日 7:00 状態:生存

生き残るためのマニュアル


食事は出来るだけ温かくして摂取しましょう。

栄養は偏らない様にしてください。必要ならサプリメントも摂取してください。

カロリーだけを満たしても、栄養が足りなければ飢餓状態になってしまいます。

 小鍋に缶詰からコーンスープを移し、火にかける。今日の朝食はコーンスープとパン、フリーズドライの野菜チップスだ。

 温まったコーンスープを器に移すと白い湯気が上がった。スプーンで一口啜ると、それだけで体と心が温まる気がした。この生活になってから、温かい食事の重要性がよく分かった。食べる事とは命そのもの。極限状態では取り敢えず食事を摂る事に気が向きがちで、その食事の温度は無視されがちだ。だが、冷たい食事が続けば身体は健康でも、精神は荒んでいく物だ。そして精神は身体に大きな影響を及ぼす。


 この狭いシェルターの中で俺が精神を保てたのは、戦前のインテリ達がバリエーション豊かな食事を用意してくれたからという事実が一端を担っているだろう。勿論、それらを温める手段も。


 あのビルに登って無線とフレア打ち上げを始めてから11日が経った。本当はそれに加えて探索もしたかったのだが、変異種との戦闘で痛めた肋骨を自動医療システムに診て貰った所、やはりと言うべきか肋骨の一本にひびが入っていた。

 それで俺は自動医療システムに従い、バストバンドを着用して軽い鎮痛剤を服用しながら、激しい運動を避けていたという訳だ。

 

 だが、昨日自動医療システムに診てもらうと、どうも肋骨のひびは大分良くなっているみたいだし、体を捻ったりしてみても痛みは無かった。まだ完全に治ってはいないが時間は無駄に出来ないので、今日から探索を開始する事にしたのだ。


 今日の探索で決まっている事は東に向かうという事だけだ。当初に予定していたロケーションは粗方探索したので、取り敢えず東に向かい、何か気を引く物が有れば探索する計画になっている。

 外で行動できるのは夜まで。つまりこのシェルターとの距離を考えて、夜までに往復できる距離でなければいけないという事になる。


 俺はいつもの様に装備を整え、シェルターを後にした。





 外は良く晴れて、風の気持ちいい日だった。しかし太陽に目を向けると、うっすらとベールが掛かった様に見える。巻層雲だ。それはこの後天候が悪くなる兆しだった。

 2月はまだ寒い。地表活動中に雨が降らなければいいんだが。俺は淡い期待を胸に抱き、崩壊した街を進んだ。


欧州連合、中東に宣戦布告。

     ――2022年 日本新聞

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