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妖艶な女のように紅蓮が踊る。
熱い。
喉が焼け、息が詰まる。
柔らかな寝着や髪が焦げ嫌な匂いが立ち、幼く弱い肌は赤く腫れ上がる。
薄れる意識の中で少女は思っていた。こんな風景をどこかで見たことがある、と。
それはどこだっただろう。遠い昔、それに多分、そばには誰かがいた。
細い糸を辿るような危うさで思い出そうとするけれども、それは呼び覚まされることがないまま、目の前の優美に花付く木立が燃え崩れるように途絶えた。
飼い獣が、きぃきぃと高い声で鳴きながら、短い手足でそこらを走り回る。その声を聞きながら、少女はぼんやりと虚空を見つめる。
灰紫の宝石のような瞳には、尽きようとする王国の火炎の影絵が映っていた。