12話 豚は豚らしく鳴くのが似合っている
村落につくと周辺の様子をうかがい、周辺に魔物が居ないのを確認すると、慎重に村の中心部へと向かう。
やはり魔物は中央の広場を中心に陣取っているようで先ほど焼いていた「もの」を食べている。
丁度右手に俺がぶつかって壊れた民家を見つけるが、あいにくそちらの方向には豚の魔物を遮るような物が無くなっている。
これでは豚の魔物の裏側を通ら無ければいけないと思いながら豚の魔物の様子をうかがう
リーダーと思われる魔物の隣ではせわしなく鳴いている豚がいるが、様子を見る限りあの豚が魔物全体の指示を出しているようである。
このまま素通りをするのもいいかもしれないが、このままここで繁殖などをして俺が行った後の街や村を蹂躙されるとお思うと素通りなんてできない
どのように殺すか考えながら観察をする
リーダーはがたいもよく確かに危険であるが、1対1であれば何とか勝てそうではある。
ただ、リーダーと対峙中に別の魔物が乱入されると勝ち目は薄いかもしれない。
となると必然的にあの隣の指示を出している豚を先に殺す必要がある。あいつを殺せばある程度の混乱起きるはずである。
そうなればその間にリーダーに向かうのも良いが、一気に回りの雑魚を蹴散らしリーダーと1対1で戦うのが安全か。
奇襲で上手く殺せたとしても、リーダーに指揮を執られる可能性は十分にあり得るが、そうなれば必然的にリーダーは戦闘に参加できなくなる。ある意味一番安全かもしれない。
最悪なのはこちらが動く前に向こうに気づかれることである。
そうなったら一気に乱戦となり一気に勝機が薄くなる。
しかし、一番最悪の事は想定しておかないと起きたときに対処となると必ずお粗末な対策しか立てられない。
だが、ばれたときなどそのまま一気に切り込むか逃げるかの2者択一でしか無い。もちろんばれて逃げれば保護した少年の元に走り一緒に逃げなければならない。
となると必然的に追いかけてきた豚の魔物はこの村落以外を襲いに走るのは安易に予想できる。結局は豚の魔物との戦いは避けて通れない。
それならばばれたときは一気に突っ込むしかないなと結論づける。
しかし、戦闘になるなら一番勝機が濃いもので挑むべきとなると指示を出している魔物を殺すのが一番勝機につながると判断し、あのうるさい豚を殺すために慎重に動くとしよう
俺はゆっくり、音を立てず回り込もうと移動していると、
丁度俺が壊した民家の反対側に着くと俺は少し気を緩める。
ここまで来れれば後は同じ事をすれば簡単に背後をとれるだろ。
そして、豚の魔物の様子をうかがうと
一匹の豚が鼻をひくひくと動かして居るようだ。すると突然「ブヒブヒ」と騒ぎ出した。
そして何故かこちらに腕を向け「ブヒブヒブヒ」と何かを言っている。
するとリーダーの横に居る豚が「ブヒーー!」と一段と大きく鳴くと周りの物を食いあさっていた豚も一斉にこちらを向き走り出してきた。
いったい何故あの豚が気づいたかは判らないが、とにかく今は一番最悪の事態が起きているということだけは判る。
俺は決めていたとおりに突っ込むことにするが、あらかじめ覚悟を決めていた為かそれほどの動揺はないし、気負いも無い。まだ想定していた最悪の事態が起きただけだ、想像外の事が起きているわけじゃ無い。そう言い聞かせると腰の刀を抜き豚の魔物に向かって一気に走る。
豚の魔物の速度とこちらの異常な速度を持ってすれば互いに衝突するまでの時間はそんなには長くなく、あっという間に豚の魔物との間合い近くにまで迫っている。
ただ、こちらに向かっている豚の魔物には個体差があるためか、多少ばらばらになってこちらに突っ込んで来ている。
俺は軽く飛び、一体目の豚の魔物を袈裟切りで一刀両断にすると続けざまに真一文字に刀をなぎ払い2体同時に切り裂く。明らかに刀身よりも長い距離切れているが、そんなことを気にしている余裕が無いほどに豚の魔物はこちらに向かってきている。向かってきた一匹がこちらに向けて棍棒を振り下ろしてきている。その攻撃を躱し、棍棒の繰り出す風を横顔で受けながら一気に懐に入り込み右腕を根元から切り上げる。切り上げたまま一気に体重をかけ体を真っ二つに切るとそのまま次ぎの豚の魔物に向かって走る。
斬っては魔物のリーダーとの距離を詰めては居るが、如何せん豚の魔物の数が多すぎる。5分くらい斬り合った頃には間合いを詰めるだけで1歩も前に進めないほどに回りを囲まれている。
1体斬れば別のオークがその穴を埋める。指揮をしている豚が的確に指示を出しているようである。
指揮をしている豚の魔物を見るとみるからにあくどい笑顔をしてこちらを見ている。
すると
「ブヒブヒー!!!」
と叫ぶと豚の魔物達は一斉に武器をあげこちらに振り下ろそうとする。近くの魔物の方へ斬りかかり道を空けようとすると、真横から棍棒が繰り出され見事に直撃してしまう。
横のなぎ払いの棍棒で豚の魔物も何体か吹き飛ぶが、そんなことは気にしないと言うばかりに殴りかかってくる
体制を整えるために呼吸をしようとするが肺が圧迫され呼吸ができず、立て直す事は叶わず、口からはコホーと空気の抜ける虚しい音がするだけである
そのまま殴られ続けるが、体が強靱な為か、棍棒か素手なのか体に痣ができるが、そこまでの損傷にはなっていないが、顎を強打した為に頭が揺れ、そこにさらに頭への衝撃により竹中は意識を失ってしまう。
「やれやれ仕方ないな」
と竹中がつぶやいたと思うと豚の魔物の集団の中から消えている
豚の魔物は竹中が急に消えたことに動揺しているが、指揮をしていた豚には竹中が高速で動いていたのが見えたのかブヒブヒと騒いでいる。
すると囲んでいた豚の魔物がこちらにむきなおすとこちらへと向かってくる
これだけ騒いでいるのにリーダーらしき豚は全く動こうとしていない。手下の豚の魔物だけで十分だということなのだろう。
豚の魔物が竹中に向かって走り始めると、竹中は刀を腰の鞘に戻すと抜刀の構えで止まる。
刀からはなにやら蜃気楼が発生する前のように空気が揺れている。
豚の魔物が竹中の近くに接近するが竹中はまるで気にもとめず静止したままである。
豚の魔物が攻撃を仕掛ける
攻撃が当たる間際
カッと目を見開くと神速の速さで刀を抜く
すると豚の魔物はまるで時間が止まったかのように動かなくなる
竹中は指示を出していた豚の方に向かいゆっくりと歩き出す
指揮をしていた豚は
「ブヒ!ブヒ!ブヒ!ブヒー!」
と叫んでいるが竹中はゆっくりと豚へと近づく
すると後ろの方から
どさどさと何か大量の物が落ちる音が響き渡る
豚はいったい何が起きたか判らずその場で唖然としている
「そんなに簡単に隙を見せると僕はつい殺りたくなっちゃ・・・」
そうつぶやく前には豚に向かい一気に距離を詰める
それに気づいた豚は棍棒を構えるが
「そんな棒きれじゃ防げないよ」
と飛び上がり棍棒ごと一刀両断にする
カキィィイイイイン
と金属と金属がぶつかる音がする
一瞬いったいなにが起きたか判らなかったが、このままではまずいと体勢を立て直そうとするが、空中であるために力が入らない。それだけで無く刀が黒く濁った魔力が纏った棍棒の木の部分に挟まってるいるのか動く気配すら無い
豚の方を見ると不敵な笑みを浮かべている。
豚の片手には錆びた剣が握られており、おもいっきり振り上げる
竹中は既の所で刀から手を離し、離した少しの反動を利用してぎりぎりで剣を躱す
地面に着地すると豚は剣を背面へ投げると棍棒に着いている刀を引き抜き手にしている。
刀からは黒い煙の様なものがあふれ出ており、美しかった刀身は黒く鈍い光を放っている。
豚はニヤリと笑うと距離があるにもかかわらず、刀をこちらへ向けて振り抜いてきた。
刀からは衝撃波が出ているようで、黒い霧のような物がこちらへ向かっている。途中にあった家は見事に斬られ、何かそこを通過した痕跡残っているだけで、現状のままになっている。あの家は何か軽い振動を加えるだけで簡単に上下に分かれる事は容易に想像できる。そんな切れ味の最高衝撃波が来ているが、竹中は重心をさげなにやら不気味に笑いながら
「豚の分際で俺から枷を奪っただけで優位になったと思ってるのかな?思い上がるなよ」
と零しながら魔力を足に凝縮させると豚の真後に現れる。
豚は目の前から消えたのに驚き慌てふためきながら竹中を探しているようだ。
竹中は拳に魔力を纏わせると
「死にさらせぇえ!矮小な豚がなめるんじゃねぇ、豚なら豚らしくブヒブヒないてろやぁああ」
とおもいっきり豚に向け振り下ろす
豚は鳴く間もなく何かとてつもなく大きな力で潰されたかの様に地面に押しつぶされている。
「次はお前だ」
と竹中は豚のリーダーへと顔を向ける
改行が少しおかしい気がするけど気にしない