9話 勇者の条件とは?
集落に向かう途中臭いは死体の焼ける臭いよりも血生臭い臭いの方が強くなってくる
そして時折聞こえる豚の鳴き声
「異世界で豚といえばオークか・・・」
そう、異世界における豚の化け物と言えば一般的にはオークを思い浮かぶほどポピューラーかつ、序盤における強敵だったりなかったりするモンスターである。
他の小説だとか漫画では主人公が簡単に倒したりしているが、俺はどうなのかと考えてしまう。
確かに体は神により強化されているし、ここまで走ってくるときにある程度は体の能力は把握している。
だが、実際に命のやり取りとなると今までの人生でも一度もない経験である。
俺の中ではいきなりどの程度の強さかもわからない敵を相手にどこまで出来るかという不安しかないが、ここで逃げたら、俺は一生魔王どころか弱いモンスターにすら立ち向かう事が出来なくなってしまう気がしてしかたがない。
そんな事を考えているとあっという間に集落についてしまう。
集落からは生臭い臭いが立ち込めてくるし、周りの家は力任せに壊されたであろう跡が残っている。
建物の程は残しているものも多くあるが、壁の一部が完全に壊れていたり、今にも崩れ落ちそうな屋根など、リフォームだとかをするよりも建直した方が早い家ばかりである
そして地面には蹄の様な跡が見て取れる
本当は逃げ出したいという気持ちを抑え俺は集落の中に入っていく
集落に入るとさらに悲惨な状況である。
家と家の間には瓦礫が散乱しており人を引きずったであろう血の跡や、赤や緑に染まった石などが散乱していた。
壁にはまるで水風船を壁に投げつけたかの様に血痕が広がっており。その下には胸当てと思われる防具や槍だったであろう木の棒と槍先が落ちている。
家の中を覗くと、家具や食器などが散乱しており抵抗した跡なのか食べ物なのかわからない緑色や赤色をした液体が飛び散っていたりする。
周りを見るが、どう見ても人が蹂躙されているとしか思えない光景が広がっていた
「ブヒ、ブブヒ、ブヒー!」
「「「「ブヒー!!」」」」
豚の鳴き声が聞が遠くから聞こえて来る。
まるで何かを命令してそれの返事をしている様に聞こえる鳴き声である。
俺は恐る恐る鳴き声のした方に様子を見るために移動する。
集落は瓦礫が散乱しており、少しでも気を抜くと瓦礫を踏み壊し音を立ててしまいそうで、よりいっそう気をつけて進む。
進んでいる途中、あることに気づく。
人を引きずったであろう血痕が一定の方向に、村の中に向かっているのである。
それはどう見ても人を一箇所に集めている。
まるで何か儀式などをする為に集めている様である。
家の影に隠れながら引きずられている方へ進んでいく
進むにつれ臭いはきつくなり、オークどもの鳴き声もより大きく聞こえてくる。
そして集落の中心であると思われる広場にはオークが人や自分たちの仲間であっただろう死体を積み重ね、死体を囲う様に立っている。
オークは思ったより背は低い様で、家と比べると少し小さい程度である。
防具は付けておらず、腰布を付けているくらいだ。
よく観察すると、2〜3匹周りと違う格好のオークもいるが、一匹だけ他の奴らと比べ大きな個体がいる。装備している武器は他のオークはただ木を削ったであろう棍棒や、人から奪ったであろう槍を持っているが、その一匹だけは明らかに鍛冶で鍛えたであろう大きめの両手剣を片手で持っている。
そしてなぜかつぶらな瞳が完全にあのいかついオークを台無しにしているきがするのは気のせいだろうか・・・・・
こいつがリーダーだろうと当たりをつけていると、
リーダーの横にいるオークが他のオーク達に
「ブヒ ブヒブヒ! ブヒブヒブヒ ブヒブヒー!」
と何か叫ぶとと
周りのオークの一部が死体の山に向かって蹄を向ける
「「「「「ブヒ!」」」」」
と叫ぶと蹄から炎が噴き出し死体を焼きはじめる
少し離れている俺の所にまで死体を焼いた焦げ、血が焼ける臭いが混じった臭いが漂い始める。
耐えきれなくなった俺は近くにあったツボを手繰り寄せるとその中に勢いよく胃の中身をぶちまけようとするが、ここまで何も食べていなかったせいか、もしくはこちらにくるときに全て置いてきたのかはわからないが、ただ胃液を吐き出す。
臭いがするたびに胃液を吐き出すが、すばらくすると臭いに慣れたせいかそこまで気持ち悪くないが、酸味がかった臭いを嗅ぐとどうしても吐きそうになる。
気持ちが落ち着いた所で外の様子を見てみると、広場に集められた死体に群がるオークの群れがあるだけであった。
ただ、リーダーと思わしきオークのみが群がるオークを見て不安そうな目を向ける光景が見て取れる。
しかし、あの豚はいったい何を考えてあんな目をしているのだろうか?
もしかして、人を食べるとリーダーみたいな考える魔物になるのだろうか
物陰で思案していると広場の方から
「がたり」
という何かをどけたような音が響く
音は俺の近くでは無いが、そんなに遠くでは無い
俺は音のした方に振り向き、音がした付近を観察すると、瓦礫がもぞもぞと動いている。
オーク達も気になったのか動いている所を様子見している。
すると一匹のオークが動いている瓦礫の所へと歩き出す
動いている瓦礫の一部が崩れるとそこには人間の頭と思わしきくすんだ金色の髪が出てきた
それを見た瞬間俺は何故か走り出していた
普段であればこの状況では絶対にそんなことをしなかったであろう。
しかし、俺はあの人間が大量に焼かれる光景を見てあの人間が生きたまま焼かれる姿を想像したため、足が自然と向いたのであった。
せめて俺の目の前で人が死ぬのは見たくないという自分のエゴなのか、勇者であるための最低限の資質がそうさせたのかは判らないが、俺はあの人間を救いたいと強く願いながら、オークと人間の間に向かい走るのであった。
小ネタ
書いているときに色々調べたのですが、
オークという架空の生き物は諸説あります
英語で海の化け物をオークと表記したり、ローマ神話に出てくる死の国の神の別名であったり。とある本では手先が器用で正確が悪いというドワーフがモデルであったりだとか諸説ります
オークは指輪物語を書いたトールキンで有名になった感じですね
トールキンは豚だという表現はしていませんが、作中の人物によって「豚小屋に住む」だとか、「豚野郎」という軽蔑する発言から現在の豚みたいなオークがはやり出したのではないかと推測できます。
なろうの小説のとある作品ではオークは神の使いの設定のものがあるみたいですね。