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スピリットヘブン  作者: 嵩宮 シド
Infinite Hope(1st Season)Ⅱ
51/70

おまけ‐プレゼント

「円、誕生日プレゼントあげるっ」

 という、沙希からの二日遅れのハッピーバースデイ。

 円は沙希に呼ばれてラボラトリーに来ていた。

「誕生日プレゼント?」

 一体いつスカイベースから降りる機会があったのだろうか。それとも、持ってくるように頼んでいたのか。


「とりあえず、エネルギー消費して」

「は?」

「エネルギー放出だけなら出来るんでしょ?」

「まぁ、出来るけどさ……」

 イメージとしては車のギアをニュートラルにしてアクセルを踏み続けるだけ。その感覚に似ている。本当にただガソリン(エネルギー)が消費されるだけ。やろうとも思えない。

「何で?」

「いいからほらっ」

「…………」

 断らない理由は必要ないが、断る理由も無いのでとりあえず言われた通り、エネルギーだけを放出する。


 数分、銀色の光が部屋を満たし、しばらくしてからエネルギーの限界を示す光の波紋が円の体を走り始める。

「こんな感じでいいの?」

「うんっ」

 瞬間、

「うわっ!?」

 使い切りサイズのスプレー缶の口を向けられ、思いっきり吹きかけられた。

 あまりにも不意だったので抵抗も出来ず、手でガードすることも出来なかった。

「な、なにを――!?

 ……?」

 問いただそうとしたときに気付いた。

 エネルギーが補充されていると。


「まさかそれって?」

「ん? Ver.3」

「…………」

「今まで注射とか銃だったけど、これでもう痛くないよね?」

 確かに痛くない。注射はまだしも、エネルギー補充のために撃たれるのはごめんだった。ある意味改良と言ってもいいだろう。

(早すぎだ)

 短期間でどれだけ開発できるのだろうか。沙希は本当に天才少女なのだと思い知ってしまう。


「じゃ、さっきのもう一回やって」

「はい?」

 またエネルギーを放出しろというのか。

 怪訝になりつつもまた先ほどと同じようにエネルギーを放出し、エネルギー限界になる。

「はい、これ」

「…………」

 渡されたのはタブレットケース。

 まさかと思い、そのタブレットケースを開けて振り、ケースの中身を手の平に乗せる。

 出てきた三粒ほどのタブレット。


 これを食べればいいのかと、目くばせをすると沙希は「うんうん」とうなずく。

 それを口に含んで一噛み――

 一回噛んでこれ以上咀嚼できないとして飲み込んだ。

「不味い……」

 苦い薬を苦くないようにした結果味が悪くなった物と、同じ感じがする。

 そして自分の体を見ると光の波紋も消えていた。

 エネルギーが補充されたらしい。

「これもしかして?」

「Ver.4よ。味は……うん、いつかおいしくするから」

 溜め息を吐く。


「まさか僕を実験動物に?」

「んん……否定しないけど、ほら、これ」

 と、沙希が指し示す方を見る。

 そこにあるのは大きな段ボール箱。

「まさか……」

「あれがプレゼント」

 もう二つとも量産していた。

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