おまけ‐プレゼント
「円、誕生日プレゼントあげるっ」
という、沙希からの二日遅れのハッピーバースデイ。
円は沙希に呼ばれてラボラトリーに来ていた。
「誕生日プレゼント?」
一体いつスカイベースから降りる機会があったのだろうか。それとも、持ってくるように頼んでいたのか。
「とりあえず、エネルギー消費して」
「は?」
「エネルギー放出だけなら出来るんでしょ?」
「まぁ、出来るけどさ……」
イメージとしては車のギアをニュートラルにしてアクセルを踏み続けるだけ。その感覚に似ている。本当にただガソリンが消費されるだけ。やろうとも思えない。
「何で?」
「いいからほらっ」
「…………」
断らない理由は必要ないが、断る理由も無いのでとりあえず言われた通り、エネルギーだけを放出する。
数分、銀色の光が部屋を満たし、しばらくしてからエネルギーの限界を示す光の波紋が円の体を走り始める。
「こんな感じでいいの?」
「うんっ」
瞬間、
「うわっ!?」
使い切りサイズのスプレー缶の口を向けられ、思いっきり吹きかけられた。
あまりにも不意だったので抵抗も出来ず、手でガードすることも出来なかった。
「な、なにを――!?
……?」
問いただそうとしたときに気付いた。
エネルギーが補充されていると。
「まさかそれって?」
「ん? Ver.3」
「…………」
「今まで注射とか銃だったけど、これでもう痛くないよね?」
確かに痛くない。注射はまだしも、エネルギー補充のために撃たれるのはごめんだった。ある意味改良と言ってもいいだろう。
(早すぎだ)
短期間でどれだけ開発できるのだろうか。沙希は本当に天才少女なのだと思い知ってしまう。
「じゃ、さっきのもう一回やって」
「はい?」
またエネルギーを放出しろというのか。
怪訝になりつつもまた先ほどと同じようにエネルギーを放出し、エネルギー限界になる。
「はい、これ」
「…………」
渡されたのはタブレットケース。
まさかと思い、そのタブレットケースを開けて振り、ケースの中身を手の平に乗せる。
出てきた三粒ほどのタブレット。
これを食べればいいのかと、目くばせをすると沙希は「うんうん」とうなずく。
それを口に含んで一噛み――
一回噛んでこれ以上咀嚼できないとして飲み込んだ。
「不味い……」
苦い薬を苦くないようにした結果味が悪くなった物と、同じ感じがする。
そして自分の体を見ると光の波紋も消えていた。
エネルギーが補充されたらしい。
「これもしかして?」
「Ver.4よ。味は……うん、いつかおいしくするから」
溜め息を吐く。
「まさか僕を実験動物に?」
「んん……否定しないけど、ほら、これ」
と、沙希が指し示す方を見る。
そこにあるのは大きな段ボール箱。
「まさか……」
「あれがプレゼント」
もう二つとも量産していた。




