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0-(A)夢の果て

本編は次話から

――――そしてまた、繰り返された……






(冷たい……。どこだ、ここは……)

 何もみえず、何も聞こえず、無機質で冷たいその場所で体が浮かんでいる事だけは分かった。

 手を伸ばしてみるも何もつかめない。


(あれ……?)

 と、ふと自分の手を見る。

(これ、何だっけ……)

 その時の彼は、今自分が伸ばしたものが「手」と言う物であることが分からなかった。ただ、自分の体に伸ばせるものがくっついていた。それだけのものでしかなかった。


 気づけば自分の下半身のほうにも何かが二つ引っ付いている。それらをばたつかせる事で、その場所でうまくバランスを取ることも出来るようになった。彼はまだ、それを「足」だと認識する事が出来ない。


 ためしに、感じるままに暗闇の中を泳いでみる。前に前に進んでいけども、底の知れない暗闇。今泳いでいる方向が上に向かっているとも限らない。本当はもっと、もっと深い水の底へと沈んでいっているのかもしれない。もしくはずっと同じ高さを泳いでいるのかもしれない。

 何も考えられない彼はそれでも、感じるままに泳ぎ続ける。


(どこに……)

 ぼんやりとする意識の中、彼は向こうのほうに闇よりも暗い影を見つけた。


(……?)

 気になった彼はその影の方へまっすぐ泳ぐ。その影だけは向かうだけどんどん近づいている事が分かる。


(何だろ、あれ……)

 泳ぎながらその影をじっと、まっすぐ見つめて眉を潜める。

手を伸ばせば届く。

影が間近に迫った時、不思議な浮遊感に見舞われた。「えっ?」と思ったときには、金縛りにあったように、体が動かなくなっていた。


「ッ――――!?」

『また会えた……』

 と、突然聞こえる、少女の声。

「え……?」

 声色からして微笑んでいるのだろうか。だが、姿が見えない。


「君は……誰なんだ?」

『大丈夫。私は、あなたをずっと見ていた。今までも。そして、これからも』

「……?」

『今度こそ、幸せな夢を――――』

 少女の声は最後に彼の名前を呟き、それから何も言わなくなった。何が言いたかったのか、結局の所理解できない。


「あの声……」

 何故か、聞こえた少女の声が懐かしい。よく聞いた事があるようで、無いような。はっきりと誰の声だったか、思い出せない。

その時突然、ぼんやりと暗かった視界が白く染まり、周囲全体がまばゆい光を発し始めた。目もあけていられないほどの明るさに、彼は固く目をつぶって、顔をそむけた。瞬間、彼の意識が絶ち切られた。

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