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村に帰ったオニ太郎

 サヤに別れを告げ、生きてゆく希望を失ったオニ太郎。

「そうじゃ、じさまじゃ。じさまに会いに戻ろう!」

 そう決めて、自分の育った村へと向っていった。


 けんど、じさまは死んでおった。

 息子のようにかわいがっておったオニ太郎と、その嫁のサヤを失ったショックで、あの後すぐにポックリ逝ってしもうたのじゃった。

「おお、じさま。じさまよ。なんで、死んでしもうたんじゃ…」

 オニ太郎は、ひとり残されて、そうなげき悲しむ。


 そこに、村のもんらがやって来る。そうして、以前にも増していっそうたくましゅうなったオニ太郎を見て驚いた。全身が刀傷かななきず矢傷やきずのあとだらけになっておって、見るも恐ろしい姿じゃ。

 そんなオニ太郎に向って、村のもんらは追い打ちをかけるように言うた。

「オニ太郎。ひさしぶりに帰ってきたところ悪いけんど、お前がおると殿様に目をつけられるんじゃ。お前は、ここに住んじゃあいかん。どこか遠くへ行って暮らしてくれんか」

 そう言われてしもうたら、どうしようもねぇ。見た目は恐ろしいし、敵に対しては容赦ようしゃねぇオニ太郎じゃったが、根はやさしい男じゃ。

「そうじゃな。わしにいろいろとよくしてくれ、目をかけてくれ、育ててくれた皆に迷惑をかけるわけにはいかん。わしゃあ、ここを出ていくわ」

 そう言い残して、幼い頃から育った村を後にしてしもうた。


         *


 どこへゆくともなく、あてどもないまま、オニ太郎は歩き続けた。

 とりあえず、食うのにだけは困らんかった。腹が減りゃあ、森に入って獣でもって食やぁええ。川で魚をらえることもできた。

 困ったのは、生きる目標を失ってしもうたことじゃった。

「じさまもおらん。サヤもおらん。わしゃあ、これからどうやって生きていきゃぁええんじゃ?」

 オニ太郎は、毎日のようにそう自問自答した。

 けんど、答は出んかった。

 仕方のう身体からだきたえた。他にやることもねぇオニ太郎は、ひたすらに、ただひたすらに力を求め続けた。おかげで、以前よりもさらにパワーはつき、スピードは増し、戦闘能力は向上していったのじゃ。


 そんなオニ太郎に、世の武者むしゃ猛者もうじゃどもが突っかかってくる。

 なにしろ飛び抜けてガタイのよいオニ太郎じゃ。力ある者たちは、ひときわ目立つオニ太郎の姿を目にすると戦いを挑みたくなってしまうのじゃった。

 そのような強者つわものどもを、オニ太郎はバッタバッタとなぎ倒してゆく。

 いつしか、オニ太郎の方もそのような行為に魅力を感じるようになっておった。力とは甘いみつのようなもの。手に入れれば手に入れるほど、喰らえば喰らうほど、余計に欲しくなってしまうもんなんじゃ。

「ええぞ!ええぞ!わしゃあ、こんなに強かったんか!もっと!もっとじゃ!もっと強いもんはおらんのか?もっとわしをふるい立たせてくれるもんはおらんのか?」

 勝っても、勝ってもきりがねぇ。次から次へと突っかかってくる者どもを、片っ端からねじ伏せてゆく。武器などいらんかった。おのれの力のみで、いくらでも勝ててしまう。いくらでも強くなれた。

 オニ太郎には、天が与えた才があった。いいや、それを与えてくれたのは天ではなく地じゃったかもしれん。いずれにせよ、オニ太郎は戦いに向いておった。誰に教わるわけでもねぇ。元々備わっておった野性が、そうさせるんじゃ。

「右じゃ!右に避けるんじゃ!次は左!今度は、しゃがみこめ!そのまま下から思いきりこぶしを叩き込むんじゃ!」

 心の底からそんな風に声が聞こえてくるようじゃった。それを頭で考えるのではなく、感覚でやってのけるのじゃ。考える前に勝手に体が動く。そう表現してもええじゃろう。

 そうして、オニ太郎は戦うたびに経験を積み、さらにその強さを増していったのじゃった。

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