金太郎とオニ太郎、ふたりの修業の日々
さて、相撲勝負の後に仲良くなったオニ太郎と金太郎。
それからしばらくの間、ふたりで切磋琢磨して暮らしたのじゃった。
「ホレ!はよ、ついて来い!」と金太郎。
「おっしゃ!今、行くぞ!」とオニ太郎。
ふたりして山ん中をかけ回る。そうして、獣やら魚やら山菜やらを採って回る。
夜は、鍋をつつきながら酒盛りじゃ。
あるいは、滝に打たれてみたり、相撲を取ってみたり、取っ組み合いをやってみたり、いろいろじゃ。
とにかく、ふたりは強うなるためには、なんでもやった。
おかげで、メキメキ実力は上がってゆく。
「オニ太郎、お前強うなったな!」と、金太郎。
「おぬしこそな!金太郎!」と、オニ太郎。
こうして半年ほどの時間が過ぎ、ついにオニ太郎は旅を再開することにした。
「ほんまに行くんか?」と、金太郎にたずねられ。
「おうよ!世の中には、まだまだ強いもんがおるはずじゃ!わしゃぁ、そういう奴におうてみたい!」と、オニ太郎は答える。
「そうか、それじゃあ、ここでお別れじゃ!達者で暮らせよ!オニ太郎!」
「おぬしもな、金太郎!」
「また会うこともあるじゃろう」
「おう!それじゃあ、さらばじゃ!」
そう言うて、オニ太郎は、金太郎の住む足柄山を後にした。
*
それから、しばらく歩いておると、オニ太郎はこんな場面に遭遇した。
柿の木の上に1匹のサルが座っておって、そりゃぁうまそうに柿を喰うておる。よう熟れて、ほんまにうまそうな柿じゃ。
柿の木の下には、これまた1匹のカニがおって、うらめしそうに上を眺めておる。
「サルどん!サルどん!約束が違うじゃないか!この木はオイラが育てた木ぞ!オイラのおにぎりと、お前さんの柿の種と交換し、せっせと水をやり、大切に育てた柿の木ぞ!」と、柿の木の上に座っておるサルに向ってカニが叫んでおる。
「そうじゃったかな~?」と、サルは耳の穴をほじりながら、そしらぬフリじゃ。
「しかも、オイラが木に登れぬからというて、『わしが代わりに取ってきてやろう!』と言うてくれたじゃないか!それが、なんじゃ?柿を喰うのはお前さんばかりじゃないか」
「そうじゃったかのう~?」と、やはり、そしらぬ顔のサル。
「どうか、柿の実を投げてよこしてくれ!後生じゃけえ、オイラにも柿を喰わしてくれぇ!1つや2つでええから、投げてよこしてくれ!」と、カニが懇願する。
すると、サルはようやく枝の上に立ち上がり、こう答えた。
「そうか、そんなに柿が喰いたいか。それなら、これでも喰らうがいい!」
そうして、側に成っておった、まだ緑色の柿の実をもぎ取ると、思いっきりカニ目がけて投げつけた!
固い柿の実は、物凄いスピード、ナイスコントロールでカニに向って一直線!
バシ~~ン!!
と、音がしたかと思うたら、柿の実はオニ太郎の手の中に物の見事におさまっとった。
「何をするんじゃ!?殺す気か?」と、オニ太郎が叫ぶ。
「なんじゃ、お前は?邪魔するな!殺す気だったとして、何が悪い?」と、サルは全く悪びれる様子もない。
「酷いじゃないか、サルどん!」と、カニも憤っておる。
そこで、オニ太郎、怒髪天をついた!
短距離走のランナーのごとくスタートの構えを取ると、そのまま一気に走り出した。
そうして、グングン加速してゆく!
ついに、柿の木ところまでかけ寄ると、そのままドシ~ン!と木に体当たりをかました!
グラグラグラっと、大地震の時のように柿の木はゆれ、あわてたサルは木の下へと真っ逆さま!
さらに、よう熟れた柿の実が次から次へと落ちてくる。
地面へと落下し、強く腰を打ちつけたサルは、ほうほうの体でその場から逃げ出した。腰をさすりさすり、びっこを引きながら、サルはオニ太郎のもとから離れてゆく。
そうして、遠くの丘まで距離を取ると、こう叫んだ。
「お、覚えておれ~!」
そのままサルは丘の向こうへと消えていったのじゃった。




