表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/28

龍宮城に別れを告げる

 ある日、オニ太郎はこう言った。

「龍王様、わしゃぁ、地上に戻りたいんじゃが。もっともっと世界を見て回りたいんじゃ。そんで、わしより強いもんと戦いてぇんじゃ」

 それを聞いて、龍王様はハ~ッと1つ大きなため息をついてからゆっくりと答えた。

「いつかそう言うと思うておった。ついに、その日が来てしもうたか…」

 龍王様は、悲しそうにそのお顔を左右に振ると、こう続けた。

「オニ太郎よ、お前のコトはまるで息子のように大事にしたつもりじゃ。いずれは、わしの後をいでくれれば…と、そんな風にさえ考えたものじゃ。どうじゃ、その気はないか?」

 オニ太郎は、それに対してハッキリとこう断言した。

「わしゃあ、もっと強うなりたいんじゃ。もっともっと強いもんと戦って、自分の腕をみがいてみたいんじゃ!」

 その言葉を聞いて、龍王様はあきらめた。

「そうか。やはり、そうか。どうやら、決心は固そうじゃ。よっし!よいじゃろう。では、カメの奴に地上まで送らせよう」

「ハッ!ありがとうございます。このご恩は一生忘れませぬ」

 オニ太郎が珍しく礼を言った。

「そうじゃ、地上に戻るにあたって、何か武器を取らせよう。好きな物を持ってゆくがよい」

 龍王様にそう言われて、オニ太郎はパッと目についたもんを手に取った。それは、大きな貝のからでできた棍棒じゃった。

「これがええ」

「そんな物でいいのか?他にも、伝説の斧やら、切れ味のよい名刀やらいろいろあるぞ」

「はい。こんなもんがええんです」

 そう答えたオニ太郎の手に、大きな貝殻でできた棍棒はピッタリと握られとった。大きさの割には軽く、丈夫じゃった。まるで、最初からそこにあったかのように、実にシックリときた。

 それから龍王様は、思い出したようにこうつけ加えた。

「そうじゃ。もし、地上で我が娘乙姫(おとひめ)に出会うようなことがあれば、こう伝えてくれ。『父は、いつでもお前のコトを思うておる。つらくなったら、いつでも帰ってくるがよい』と。浦島うらしまという若者についていったはずじゃ。いや、今はもう若者ではないか。年老いた老人の姿をしておるじゃろう」

「わかり申した。必ずお伝えしましょう」

 そう答えると、オニ太郎は意気揚々(いきようよう)と龍宮城を出ていった。広い世界へと出て、まだ見ぬ強敵と戦うために。期待に胸をふくらませワクワクとしておった。

 そうして、来た時とおんなじように大きなカメの背中に乗せられて、海の上へと運ばれていったのじゃ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ