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オニ太郎、山で修業する

 さて、山に迷ったオニ太郎。無事にじさまのもとへと帰ってくることができたのじゃが、自分をだました村の子らにさっそく復讐に出かけたのじゃった。

「よくもわしをだまくらかしてくれたのう。この礼はたっぷりしちゃるけえのう!」

 村の子供らをボコボコにしてやろうと、意気込んで進んでゆく。オニ太郎は体つきだけではなく、その心も鬼としておった。

 ところが、調子のよい村の子らは、ここでもうまくオニ太郎をだましおった。

「すまん、すまん。わしらも山で道に迷っただけじゃ。お前さんとはぐれて、一生懸命に探したのじゃが、どうにも見つからん。仕方がないので、わしらだけで先に山に降りてきたと、こういうわけじゃ」

「そうじゃ、そうじゃ。じゃけえ、堪忍かんにんしてつかあさい」

 そう言われては、人のよいオニ太郎のことじゃ。その言葉を信じるしかない。

 素直に子供らを許してやった。

 さらに、オニ太郎はおのれの力のなさを反省した。

「よう考えたら、わしの方も悪かった。畑仕事ばかりで山のコトをよう知らんかった。こんなコトじゃあいかん。わしも、もっと山にくわしゅうならんと」

 そう考えて、山で修業することに決めた。


 修業といっても、ただ山の中を歩き回るだけじゃ。元々、かんのよいオニ太郎のことじゃ。ちょっと山を歩き回るだけでも、すぐに土地勘とちかんを身につけた。どこをどう進めば、村に降りてゆけるのか?うまい木の実や果物のなっている場所、泳ぐのにちょうどよい滝の側の冷たい川、どこでもすぐにゆけるようになった。


 じさまの方も、反省した。

「これまで、わしゃあオニ太郎を働かせてばかりじゃった。考えてみれば、オニ太郎もまだ子供。遊びたいざかりじゃったろうに。これからは、もうちょいと自由にさせてやらにゃあいかんなぁ」

 そうして、畑仕事だけではなく、野山で遊ぶことを許してくれたのじゃった。


 これに喜んだのは、村の子供たちの方じゃ。

「よっしゃ!これで、自由に遊べるぞ!」

「ほうじゃ、ほうじゃ。オニ太郎の奴も野山をかけずり回って遊んでおる。わしらが遊び回っていけん理由はない!」

 こうして、子供たちは、以前に比べて親にゴチャゴチャ言われることものうなった。

 おまけに、オニ太郎が味方になってくれたのじゃ。村の子供たちは、オニ太郎を先頭に毎日のように山に入って遊びまくった。これぞ、まさに“オニに金棒”じゃ。

 おかげで、村の子はみ~んな、山に詳しゅうなった。誰も彼もが山道を覚え、誰も山で迷うことはのうなった。もちろん、夜は別じゃ。夜の山は別物。昼間とは一転して、魔物となってしまう。

 そんな夜道でも、オニ太郎は平気じゃった。まるで、昼間とおんなじように、山の中をかけ回り、決して道に迷うようなことはなかった。

 目はけもののように爛々(らんらん)と輝き、耳は地獄のオニのごとくよう聞こえた。鼻はどんな獲物えものも決して逃さずクンクンとげるのであった。


 そんなオニ太郎を見て、村の衆は、またうわさした。

「やはり、アレはオニの子じゃ!」

「ほうじゃ、ほうじゃ!近寄らん方がええ」

「けんど、子供らは仲良く一緒に遊んでおる。見た目は悪いが、案外ええ奴なのかもしれん」

「ほうよのう。オニの子じゃといって、あまり敬遠せん方がええ。むしろ、神様の子のように村のもんみんなで大切に育てた方がええかもしれん。そうすりゃ、きっと、さいわいをもたらしてくれるじゃろう」

 こんな風に、話すのじゃった。


 おかげで、オニ太郎も以前に比べて幸せになった。

 村のもんがみんなようしてくれる。

「腹は減っておらんか?」

「困っとるコトはないか?」と、まるで親戚縁者しんせきえんじゃのごとく気にかけてくれるのじゃった。

 そのたびに、オニ太郎はこう答える。

「大丈夫じゃ、大丈夫じゃ。腹が減ったら、山に入って何かとってくる。困っとるコトがあったら、自分で何とかする。大丈夫じゃ。大丈夫じゃ」

 これがオニ太郎の性格じゃった。なるべく人に頼りとうない。できるだけ自分の力でなんとかする。どうしても人の手を借りにゃあいかんのは、本当に困った時だけじゃった。それも、大抵は自分のコトではなく、じさまが困った時じゃった。

 じさまが風邪かぜをひいたとか、じさまが木から落ちてケガをしたとか、そういう時だけオニ太郎は村のもんに助けを求めて走り回るのじゃった。


 こうして、オニ太郎は、スクスクと成長してゆく。

 相変わらず見た目はあまりようなく、むしろ、大人になるにつれますます醜悪しゅうあくになっていくのじゃったが、村のもんはみんなよう知っとった。

「ありゃあ、性根しょうねの座ったええ奴じゃ」

心根こころねの美しい、ええ青年じゃ」と。

 そんなじゃから、村の衆からの評判もよく、力仕事なんぞをよう頼まれた。

 そんな時、オニ太郎はいやな顔1つせず、ここよく仕事を引き受けるのじゃった。

 おかげで、その評判はますます上がっていくばかりじゃった。

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