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肥大化するオニの軍団

 近隣の諸国にケンカを売りまくっとった“オニの町”じゃったが、オニ太郎にとって、この状況は望むとこじゃった。

 なにしろ、力を求めて研鑽けんさんを続ける日々。「強いもんはおらんか?」と、探し求める人生。なのに、あまりにも強すぎるオニ太郎に、誰も向ってこんようになっとった。

 そんな人生に退屈を感じておったオニ太郎。そこに刺激がもたらされたのじゃ。


 オニ太郎の弟子たちも、似たようなもんじゃった。せっかく身につけた能力も生かす場所がねぇんじゃ、つまらん。戦いに身を投じる人生は、それだけで楽しいもんじゃ。

「オラ!もっとかかってこんかい!」

「わしらは、こんなもんじゃ満足できんぞ!」

「お前らがかかってこんなら、こっちから攻め込んじゃるわ!」

 と、いつも血気盛けっきさかんに暴れ回っておった。


 商人たちにとっても、これは好都合じゃった。

 ここんとこ大きな戦乱もなく、平和な時代が続いとったが、オニの町に攻め込むため、武器やら防具やらがよう売れるようになった。携帯用の食料なんかも用意せにゃならん。

 戦争いうんは、えらくもうかるもんなんじゃ。少なくとも、一部の人間にとっては喜ばしいことじゃった。

 さらに、そうやってたんまりとかせいだ商人の屋敷にオニ太郎の一味が攻め込み、また別の商人が儲かるという、わけのわからん図式が成り立つようになっとった。


         *


 そんなこんなで数年の時が過ぎてゆく…

 オニ太郎の指揮する一団は、凶悪な武装集団として名をせ、肥大化し、個々の能力は並の武士や兵士ではとても勝てんくらいに凶暴化しておった。

 その噂を聞きつけて、日本中から多くの犯罪者たちが集まってきて、さらにその腕をみがくのじゃ。

 オニ太郎は、そのような者らをこころよう受け入れ、戦闘能力を上げるための環境を最大限に整えた。


「お前ら、腹は減っとらんか?飯だけは腹いっぱい喰えよ。“腹が減ってはいくさはできん”いうからのう」

 そう言うては、食料だけは欠かさんように、くらいっぱいにかてをため込ませた。

「なに?新しい武器を試してみたいとな?ええぞ、ええぞ!その向上心たるや、見上げたもんじゃ!好きな武器を使えや」

 そう言うては、商人に刀や弓を買わせ、鍛冶屋かじやに新しい武器を作らせた。

 おかげで、オニ太郎のもとにゃあ、武力にたけたもんだけじゃのうて、商売の上手なもんやら鍛冶の得意なもんやら、いろいろと集まってくるようになっとった。


 そんなある日のコトじゃ。

 この頃になると、オニ太郎につきまとっておった盗人ぬすっと平太へいたも、参謀さんぼうのような役割をになうようになっとって、いろいろと組織のために助言するようになっとった。

 その平太が、こんな風に言うてくる。

「オニ太郎様。オニ太郎様。ここは四方を敵に囲まれとって、守るには不利な地形にございます。いっそ拠点を移してみてはいかがでしょう?」

 平太には全幅の信頼を置いておったオニ太郎のことじゃ。すぐに、その意見に賛同した。

「おお、ええぞ。ええぞ。好きにせい。して、どこに移動する?」

「ハッ!周りを海に囲まれた島がよかろうかと思います。それも、嵐の日にもあまり荒れる心配のない瀬戸内せとうちがよかろうかと」

「なるほど、それはよい考えじゃ」


 こうして、オニ太郎のひきいる一団は、瀬戸内のある島へと引っ越し、そこを拠点として活動を開始したのじゃった。

 後に、その島はこう呼ばれるようになる。

 “鬼ヶ島(おにがしま)”と。

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