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蔵破りの日々

 「オニの道場」に通う弟子たちは、金持ちの商人のくらを襲った。

 思った通り、商人の蔵にはたんまりと金やら食いもんやらが積み込まれておった。

 もちろん、警備の兵は何人もおったが、そんなもんたいした力はありゃせんかった。蔵を襲ったオニ太郎の弟子たちに、ひとひねりにされてしもうた。

 そりゃあ、オニ太郎にきたえられた者どもじゃから、力も強いし、技にもたけておる。アッという間に、見張りについておった兵士どもをねじ伏せると、蔵の扉をこじ開けた。


「ほぉれ!思った通りじゃ!」

「食いもんも金もわんさかある!」

「さぁ!運び出せ!元々、貧乏人から巻き上げたもんじゃ!わしらがもらって悪いことはありゃせん!」

 そう言うて、次から次へと蔵の中身を運び出し、最後には蔵はスッカラカンになってしもうた。

「やめてくれ!後生ごしょうじゃから、やめてくれ!そいつを全部持っていかれたら、わしゃ破産じゃ!」

 商人のそんな声にも耳を貸さず、何から何までぜ~んぶ持ち去ってしもうた。


 それから、オニ太郎の弟子たちは、ぶんどった戦利品を町のもんらにわけ与えた。

 今朝けさ喰うめしにも困っとった町のもんらは、それはそれは大喜びじゃ。

 これにはオニ太郎も強いコトは言えんかった。確かに、やっとるコトは犯罪じゃ。間違がっとるコトしとる。じゃが、それもこれも、みな人々のためじゃ。どうして、それを批難できようか。

「まあ、しゃーないか。こんな時代じゃ。困っとる人がおるのに、『自分だけ助かろう、楽をしよう』と考えるもんの方が悪い。そうも言える」

 そんな風に考え、最後にはオニ太郎が先頭に立って蔵破りに協力した。

 これで、100人(りき)じゃ!弟子たちは大喜び!さらに勢いを増して、次から次へと大金持ちの蔵を襲った。町のもんらも協力した。


「ホ~レ!悪い奴はおらんか!蔵に金を隠しとる奴はおらんか!喰いもんを隠し持っとる奴はおらんか!」

「ホレ、あっちの家じゃ!」

「今度は、こっちの屋敷じゃ!」

 そう言って集団で練り歩き、蔵破りを成功させていった。


         *


 オニ太郎の配下のもんは、ぞくぞくと増えてゆき、大所帯おおじょたいとなっていった。

 最初に開いた道場では手ぜまになって、新しいアジトを次から次へと増やしてゆく。ついには、この町そのものが1つのドデカイ組織となり、巨大な犯罪者集団の町としてしもうた。


 もちろん、当の本人らは、悪いコトをしとるなんて気はコレッポッチもありゃせんかった。

 むしろ、それとは全く逆!「世のため!人のため!正義のため!」と、ええコトをしとる気でおったんじゃ。

 オニ太郎自身も、それは同じじゃった。

「金持ちどもにはちと悪いか…」と思いつつも、それ以上に大勢の人々を救えとった。そこに喜びさえ感じとった。“正義の味方”とまではいわんまでも、悪いコトをしとるという気はほとんどなかったんじゃ。


 こうして、この町は“オニの町”と呼ばれ、おかみにもたてつくようになってゆく。

 年貢なんか全くおさめんようになるし、「自分の身は自分で守りゃあええ」と、勝手に武装し始める。必要とありゃあ、金持ちの商人やら殿様やらの屋敷も襲う。

 そんなじゃったから、近隣の諸国からは、うとまれる存在となっていったんじゃ。

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