episode 2 -悲しい過去-
あれからどのくらい時間がたったのだろう、気がつくと僕はベンチの上で寝ていた。しばらく星を眺めていたがそれに飽きたのか、ベンチから起き上がり辺りを見渡していた。
暗闇の真空間、点々と光煌く星たち、草むらから綺麗な虫の鳴く音、前にも見たことのある光景だ。
「平和でのどかな宇宙だな、きっとまだラグナロクが起きる前なのだろう」
そういえば時を止めたんだよな。でも今は動いている。動いているってことは動かした者がいるってこと。一体それは誰なのだろう、何者なんだろう、わからない…けど動いてることは確かだ。それともこれは夢なのか、いやそれはない、自分の頬をつねったりしたけど痛みを感じるだけだ。
自分がこれは夢かと自覚ができるはずがない、もしかして明晰夢か?それならもうそろ目が覚める頃なのだが、こんなこと考えてる場合じゃないとにかく自分の家に戻ろう。
自分の家に明かりが点いている。
「おかしいな…誰もいないはずなのに」
家は家族を失って以来妹と一緒に光の国スフィリア帝国に引越して今は廃墟になっているはず。自分は今でもたまにここへ来て家族との思い出の品の整理や片付けなどをしている。
玄関の門を開けた。この家、いや土地が広いせいか、門から玄関まで15m
もある。豪邸というわけでもないが中世の建物の造りをしており、周りの民家よりは綺麗だ。しかし、レンガ造りの割りに屋根に風見鶏をつけていてダサい気がする。
元々この家は父さんの友人からいただいたものである。なぜ家をくれたのかと言うとこの家が手に入る前まではとても貧相な生活をしていたからだ。
それを見た父さんの友人は、彼が可愛そうだ、このままでは飢え死になってしまう、それにわたしは病弱で余命も残りあとわずかだ。その面倒をみてくれたのが父さん、毎日朝早くから夜遅くまで友人をみていてくれたのだ。
それで友人は彼に家をプレゼントしたのだ。彼が嬉しそうになっているのを見て私は泣いてしまった。この幸せをずっと見ていたいと。
しかし彼の余命は残りわずか、これから幸せになってくる友人とは会えなくなる。最後に僕からお礼の手紙、お別れの手紙を書こう。
翌日彼はペンを握ったまま息を引き取った。私は泣いた。ひたすら泣いた。余命わずかなのは知っていたが、いなくなると寂しい。ああ私はこれからどうすればいいのだ、幸せを手に入れたが、大切な友人が無くなって私はどうすれば…
彼のベットの横にあるテーブルに手紙が置いてあった。
親展と書かれてある。中を見てみると丁寧な文字でこう書いてあった。
この手紙を読んでいるということは私はもう既に君のそばにはもういないだろう。私は病弱でとても臆病なたちの人間だった。ちょっとした風邪でも入院になったりで大変だった。ある日のことだった。私は少し心臓が痛くてね病院にいったんだ。そしたらガンだとわかったんだ。私はもう助からない、いつのまにか家族までに見放されていたんだ。ガンの治療は高いからね、そんなある日一人の男が尋ねてきたんだ。私に会いたいとね。それが君だと知ってとても嬉しかったよ。もう死ぬ運命なのに、見舞いに来たんだってね、思わず笑ってしまったよ。余命もない私に見舞いだなんて、でもね君が来てくれたおかげであの家を引き渡すことができた。元は甥っ子にあげようとしたんだが、あいつらは生意気でね、私に向かって早く死んでくれねえかな、そうすれば家を、あの豪邸を手にすることがでるのに、とそんなことを言っていた。そんなやつらに家は渡したくない、だから君にプレゼントしたのだ。そうすれば問題ないって思ってね。でもあいつらはもしかしたら私の家に来るかもしない、でも大丈夫私がいつまでも君を天国から見守っているから。いままでありがとう
愛する友より
僕は涙がでた。声もでなかった。ただひたすら泣いた。
気がつくと僕はいつのまにか寝ていた。まだベットの上には遺体が残っている。これから処理をするのだという。それと消灯時間だから帰りなさいと看護婦に言われたので帰ることにした。
時計を見るともう9時をまわっていた。
家に着つくと妻が食べ終え食器を丁度洗っていた。
「あら、遅いじゃない」
「さっきまで病院にいってたんだ」
妻に僕の友人が最後に書いた手紙を見せた。妻は泣いた。僕は妻をそっと抱きしめた。
「はあ…今日は色々とあったな」
僕の友人が亡くなってから結構な時間が立った。そういえば甥っ子がいるとか言ってたな 明日甥っ子の家に行ってみよう、今日は寒いし疲れたから風呂に入って寝よう。
朝になると妻はリビングのほうでコーヒーを飲んでいた。11歳になる息子と9歳になる娘は学校に行ってしまった。今日は平日だが仕事は休み。
僕は朝のコーヒーを飲むため、キッチンへと移動した。その直後に玄関のインターフォンが鳴り響いた。
「警察です。とにかく話は署でいいますので玄関を開けろ」
警察?どういうことだ、僕は何もやっていないぞ。おかしいなと思い玄関の覗き穴から外の様子を見た。
若い警察が2人、中年の警察が1人いた。僕は恐る恐るドアを開けた。次の瞬間金属バットのようなもので後頭部を殴られた。
-キース視点-
今日は学校、二時間で授業が終わるから楽だ。学校に通ってきて3年は経つけど、毎回クラス替えをするから慣れない。別にコミュ症とかそういうわけじゃないが人が多いとなんか緊張する。それに今日は自己紹介をし掃除をやって終わりなのだが、妹をまたなければならない。妹の授業も僕と同じだが、クラスの手伝いがあるらしく、またなければならない。
10時半になった。しかし遅い。少しイライラしながらそういった。午後はゆっくり家で寝ていたいのに。
この学校は魔法学園というところで、魔法の練習や基礎、習得方法、属性による弱点などいろいろとある。なかでも魔法大会といった行事もある。好きな魔法をひとつ選んで障害物を壊すというゲームだ。もちろん強力のあるものじゃないと壊せない。狙撃魔法や攻撃力上昇魔法・命中率上昇魔法などの補助魔法を使うことは禁じられている。反則で即退場となる。それ以外のことはしてもよい。
で、僕の属性は水なのでほとんどが補助魔法で強力な魔法があまりないためこの大会には出たことはない。属性は変えることも出来るが、やり方が大変なため属性変換をしている人を見たことがない。
「なに考えとんの~」
いきなり頬つねられた。そう、こいつが僕の妹イブだ。夏なのに長袖長ズボンをはいている。暑くないのだろうか
「そんな格好してると、熱中症になるぞ。」
スフィリア市の今日の気温は35度、猛暑だ。
「大丈夫、暑くないよ」
とかいいながらタオルで流れてくる汗を拭いている。やっぱ暑いんじゃないのか、冷たい飲み物をかってくればよかったな。まあそれよりかえるとするか
急に胸騒ぎがしてきた。なんだか嫌な予感がする。狙われている気がする。もしかしてアサシン(暗殺者)かなにかか?僕はいつ敵がきてもいいように隠密スキルの準備をした。ドクッと心臓の高鳴る音がする。本当に狙われているのかもしれない。手に汗を握る。しかし僕の予感はこれだけではおわらなかった。
家に着くと玄関の扉が開いていた。周りにお巡りさんが4人、医者が1人、刑事が3人いた。
「あ、あの…一体何があったんですか」
「近所の人から通報があったんだよ、隣の家から血の臭いがするってね、もしかして君のご両親かい?」
「う、嘘だろ…」
僕はその場に倒れた。