全世界マラソン大会
お題をいただいて書いた短編です。
お題~ケンタウロス、たすき、電柱~
「なんてこった」
今日の国内マラソン大会には様々な人種が出場するとは以前にも聞いていた。確かにこの大会は有名だし、募集範囲も広い。どの地域からも我こそはと息巻いている者が出場するだろうとは予想していた。
だが、これはどういうことだろうか。今スタート地点に肩を並べている相手が人間ではない。簡単に言うとケンタウロスが鼻息荒く佇んでいる。しかもちゃっかりと『絶対優勝』と書かれたたすきを掛けている。あながち優勝しそうだからシャレにならない。四本の足で走るのだから当然速いだろう。俺が数メートル先の電柱に到達する頃には、奴はその何倍か先の電柱に到達するだろう。これは電柱が倒れてケンタウロスに直撃しない限りは勝てそうもない。 どうしよう。
「あの」
「えっ、あ、はい」
ケンタウロスが話掛けてきた。一体どんな啖呵を切られるのだろうか。
「お互いに無理なく頑張りましょうね」
ケンタウロスは爽やかな紳士だった。