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[第九話]トランプの花

「たけー!僕、“ゲーム”がしてみたいよー!」


まるおの何気ない一言で、俺たちは2人でゲームをすることになった。


最初は、ゲーム機で、俺の好きなゲーム(スカッシュブラザーズという格闘ゲーム)をやろうとしたが、どうやらまるおには操作が難しいようだ。


なので、もう少し簡単なゲームからという話になり、今日はトランプの“ババ抜き”を遊ぶことにした。


ババ抜きを2人でやるということは、自分がババを持っていなければ相手が持っている、ということが丸わかりになる。


しかし、相手が持っているどのカードがババかは分からないので、どのカードを引けばいいか、相手の表情や言葉などで判別するという駆け引きが発生する。


現在は、ババはまるおの手元にある。

まるおのカードは、残り2枚。


俺は片方のカードを掴み、まるおの表情を見ながら問いかける。


「こっちがババ?」


「え?違うよ?」


俺はもう片方のカードを掴み、同じ質問をする。


「それなら、こっちがババ?」


「ちちちちちちがちがちがちが、違うよ!!」


まるおは目を大きく開き、口を変な方向に曲げ、体を小刻みに揺らしている。


...こいつの嘘が分かりやすすぎて、ゲームとして成立しないんだよなあ...


俺は簡単にババを判別して、まるおから安全な方のカードを1枚抜いた。


「えーん、たけ!!また負けちゃったよー!」


「だから、もっとうまい嘘つけって何度も言ってるだろ」


「嘘なんて、僕、苦手だよ...」


まるおは茎を少し丸めてうなだれている。


10戦10敗。このポジティブ能天気野郎も、さすがに負けが続いて落ち込んでいるようだ。


「ゲームに勝つには嘘が必要だろ。お前は顔でも話し方でもバレバレなんだよ」


呆れた俺は試しに、ババのカードと普通のカード、それぞれ1枚ずつ手に持って、まるおに「引いてみろ」と言った。


まるおは俺と同じように、片方のカードを1枚ずつ茎で触り「こっちがババ?」と聞いてきたが、俺はどちらのカードを触れても表情1つ変えなかった。


「すごいよ!たけ!どっちがババか分からなかった!ババを触ってるときに、たけの鼻が少しだけヒクヒク動いてるくらいだったね!」


俺は急に鼻あたりが恥ずかしくなってそっと手で隠した。


「う、うるせえ!こ、細かいことはいいんだよ!お前は顔全体で答えを教えているようなもんだから、ゲームにならないんだよ!

まずは、どのカードを触られても表情を変えないようにしろ」


「で、でも〜...難しいよ...」


「それなら逆に、ずっと表情を作っておくのはどうだ?」


「表情を作っておく?」


「最初から真顔だと、ほんの少しでも表情が動くとバレるだろ?それなら最初からずっと笑っていたり、怒っていたり、別の表情をしていれば、多少動いてもまだ分からないだろ」


「な、なるほど!」


俺のアドバイスを聞いて、まるおは表情を作るために、顔面全体に力を入れた。


「こんな顔でどうー!!??」


まるおは顔に力を入れすぎて、シワだらけになってしまっている。まるで梅干しのようだ。

これは人間で言うと「変顔」の部類だが、おそらく本人は至って真面目にこの顔をしている。

俺は今にも笑いそうな気持ちをなんとか堪えた。


俺とまるおは、再びババ抜きをすることになった。

最初は俺の元にババが回ってきた。


まるおの手元にババが無くて安心したのだろう。

まるおは先ほどの梅干し顔ではなく、自然と顔が緩んでおり、いつも通りの顔に戻っていた。


そして、ゲームも終盤になり、俺の手元のカードは残り2枚。運悪く、この終盤まで俺の手元にババが残ってしまった。

まるおがババを引かなければ、初のまるおの勝利となる。


俺は焦らず冷静に、ふぅ、と深呼吸をついて、表情に動揺が映らないように気合を入れた。


すると、なぜか「引く側」のまるおも、顔にぐっと力を入れて、またあの梅干し顔に戻っている。


「お、おい。なんで...引く側のお前が顔に力いれてるんだよ!」


「えー?」


「お前は引く側だから表情変えなくていいんだよ!ぷっ!だははは!!」


俺はまるおの梅干し顔(変顔)に笑いを抑えられず、腹を抱えて笑ったせいで、カードを1枚床に落としてしまった。


まるおはそのカードを即座に確認した。


「あ!今、落ちたのがババだから、手元に残ってる方がババじゃないカードだ!」


まるおは俺の手元から一枚抜き取り、初めての勝利を果たした。


「あー、今のはカードが落ちたから無し!もう一回!」

俺はこいつの梅干し顔に笑って負けたのがなんだか悔しくなって、もう一度ババ抜きを始めた。


(今回は、初動で俺にババはなし...ということは、まるおが持っているか)


そう思い、まるおのほうを確認すると、まるおはもうすでに梅干し顔になっていて、俺はまた笑いながらカードを落とした。


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