[第二話]復活の花
「ふぉ、ふぉ、ふぉ、困ってるようじゃの」
突如、背後から、男の声がして振り返る。
すると、そこには白いヒゲを生やした小さなおじいさんが、真っ白な服、そして真っ白で雲のような乗り物に乗って、ふわふわと浮かんでいる。
毛量の素晴らしいヒゲを蓄えているのに、なぜかその頭皮には一本の髪も許さず、電球のようにピカピカと輝いている...
「な、なんだよ...だ、誰だよお前は!!」
アニメや漫画の世界に登場するフィクションのような存在に俺は腰を抜かした。
な、何が起きてるんだ!?これは現実のことなのか?
さっき俺が転んで尻を打ちつけた時に、その振動が脳にまで響いて頭もおかしくなったか!?
俺の動揺をよそに、目の前の小さいおじさんは話し始めた。
「わしは雲の妖精じゃよ。空から人間を眺めて観察するのがわしの趣味なんじゃが、君は先ほどから随分暗い顔をしておるじゃろ。
わしには分かるぞい。
君は、その花を踏み潰してしまって、気に病んでいるのじゃろ」
「は?別に、俺はそんなこと...」
「ふぉふぉふぉ、何も言わなくてよい。とにかくわしに任せておけ。
はにゃぴらぽんぽんけっこうはげてる〜」
突然、妖精おやじは訳のわからない呪文を唱え始めた。
あたりが白い煙に包まれ、何も見えなくなる。
そして、呪文を唱える声が聞こなると同時に、煙が少しずつ薄くなり、煙が晴れていく。
「はあ、一体なんだったんだ...」
「はじめまして、君はどんな花が好き?」
声のした方を振り返ると、そこには先ほど踏み潰した花が、折れていたはずの茎をぴんっと伸ばして、にこにこした顔でこっちを見ている。
「・・・・・・はぁああああ!!??」
花びらの生え際の中心の真ん中に顔がある[人面犬]ならぬ、まるで[人面花]がニコニコとこちらを見ている...
そして、後ろからは「ふぉふぉふぉ」と言いながらニタニタしているヒゲおやじもいる。
この状況、両手に花どころか、両手に化け物...
「一体どうなっているんだ...」
「ふぉふぉふぉ、あまりに君が暗い顔をして可哀想だったからのお、わしがこの花に命を再度吹き込んでやったのじゃ」
「はあ!?」
「その花は、花びらが5枚あるじゃろう。その花びらに命...というよりは、“寿命を吹き込んだ”と言えばわかりやすいかのぉ?
花びらは1ヶ月経つと1枚散る。つまり、5ヶ月の命じゃな。ふぉふぉふぉ、だいぶ長く楽しめるじゃろ?」
「5ヶ月!?そんな長い間、こいつが地球に存在して大丈夫なのか!?」
俺が花を指差すと、その指先に、何かが触れた。
どうやら花が自らの茎を伸ばして、俺の指をつんつん、と触ってきているようだ。
「ねーねー、君はどうして地面の中にいないのー?僕が埋めてあげようか?」
花は茎を大きく伸ばし、突然俺の頭を上から思いっきり叩き始めた。
「いって、おい、てめえ!!何すんだ!!」
「よいしょ!よいしょ!もうちょっと待っててね、今、僕が地面に埋めてあげるから!!君のどこが根っこなのかよくわからないけど、このまま全部外に出てたら危ないよ!僕が上から叩いて地面の中に入れてあげるね!!」
「お、おいやめろ!これがもし人間同士の会話だとしたら、こいつ刑務所行きだろ!!」
俺の頭を叩いてくる茎を、手で払って振り解いた。
それでも何度も何度も茎を伸ばしてくるもんだから、俺も何度も強く叩き落とした。
「ふぉふぉふぉ、あまり乱暴に扱ってはいかんぞ。特に、万が一花びらをちぎってしまったら、寿命が縮まるから気をつけるんじゃぞ」
「ねーねー、叩かないで〜。僕が地面にうめてあげるよー!」
「おい、だから触んな化け物!」
「ふぉふぉふぉ、、、って、誰が“ハゲ”者じゃ!!」
ひげの妖精がそのツルピカの頭皮を光らせて俺の方を睨んでくる。
「誰もお前に言ってねーよ!!」
「せっかく良心で助けてやったのに、なんて無礼なやつめ!わしはもう帰る!!いいか、よく覚えておけ!その花は5ヶ月の命だからの!人の言葉をある程度ワシの魔法で覚えさせたが、知らないことの方がおそらく多いじゃろう。そしてわしはハゲじゃない!!覚えておくのじゃ!」
そういうと、ヒゲの妖精は、雲のような乗り物を動かして、そのまま空へすぅ、と消えていってしまった。
「お、おい待てよ!!俺を置いていくな!!!」
「ねーねー、ところで君って、どこが根っこなのー?」
俺は、この花と、取り残されてしまった...




